第9章 02
一方、アンバーでは。
カルロス「やれやれ全く。何だか知らんが色々喋ってしまった。」
護「そんな照れなくても」
カルロス「ウルサイ」
護「良かったやん、黒船と話できて」
穣「アンタ色々と悩んで来たんだなー。今初めて知ったわ」
カルロス「私だって悩みはある!」
穣「知っとるわい。昔、凄いイライラしてたしな」
護「イライラしてたの?」
穣「不機嫌の権化っすよこの人」とカルロスを指差し「んで俺も、満の事でイライラしてたから、同じ船室にイライラが2人で大変な事に」
そこへ剣菱が「しかしアンタ…、護のとこに逃げて、ほんっとに良かったな…。」しみじみと言う。
カルロス、ちと唖然として「…は、はぁ」
穣「護、ドンブラコして良かったな」
護「違うよ、ターさんが助けてくれて良かったんだよ」
穣「そっか」
カルロス「…それより船の免許の事ですが。」と言うと剣菱に「免許とるのにどの位かかるんですか。」
剣菱「ん?…第三種だと航空船舶学校の短期集中コースで3週間から1ヶ月かな。あ、第三種ってのは定員8名までの小型個人船免許の事だが、ただ人工種は第三種免許を取れない事になってる。」
カルロス「何とかして取ります。」
護「…ちなみにネイビーさんが持ってる免許ってどんなの」
ネイビー「私のは第二種2級航空船舶免許って奴で、これ人間だと船長免許も同時に取得可能なのよ。人工種は一等操縦士、つまり副長までだけど。」
護「ほぉ」
ネイビー「採掘船操縦士を目指すなら、航空船舶大学に2年間入らないとね!」
剣菱、カルロスに「お急ぎでなければ採掘船でバイトしながら教習所に通って3ヶ月位で小型船免許を取る事も出来るが。」
カルロス「バイトと言いますと」
剣菱「1週間のうち、黒船かウチに3日位乗って、残りの日は教習所とか。」
護「いいんですか船長!」
剣菱「勿論。そうするとウチの船もイェソド行けるし、アンタらも稼げる」
護「カルさん!」
カルロス「うーん。でもな…」と考えて「私は3週間みっちり頑張る方がいい。」
護「あらま。じゃあそうしよう。」
カルロス「ってお前はいいのか?」
護「ええよ一緒に航空船舶学校に入ろう」
ネイビー「マルクトに大規模な学校あるからそこがいいかも。」
カルロス「ところでそろそろ管理が来るぞ」
護「よし、じゃあ管理に船を持たせて下さいとお願いしよう!」
穣「そういや。お前らのタグリングって」
護「あ。そういえば、あったなコレ!」とタグリングを触って
カルロス「すっかり忘れていた。」
護「もうコレ、ただの首輪だよね」
穣「…」ちと唖然として「あっ、そう」と苦笑
護、穣に「ちなみに実はイェソドにもう一人、人工種がいてさ。」
カルロス「あ。待て護。それはまだ言わないでおこう。」
穣「んん?人工種がもう一人?」
護「いやいや。何でもない。」
ネイビー「気になるんですけど。」
カルロス「まぁこれは皆がイェソドに行った時のお楽しみという事で。」
そこへ警告音が鳴って『管理区域外警告』の表示が出ると同時に緊急電話のコールが鳴る。
剣菱、受話器を取って「はいアンバー剣菱です。ああー申し訳ありません、実は有翼種に妨害されて通信が出来なかったのです。…はい、有翼種です!実在したんですよ!驚きました!」
ネイビー「わざとらしい…」と苦笑
剣菱「行方不明になった2人はその有翼種に保護されておりまして。先ほど実際に彼らと会い、今、2人を連れて戻って来ました。はい、ここにおります。元気でピンピンしております。…は? …はぁ、了解しました。」と言い受話器を置くと「管理が2人に会いにくる。霧が晴れるまで停船して待ってろって。」
カルロス「じゃあこっちから行きます。」
剣菱&穣「え」
カルロス「行くぞ護」
護「ほいさ!」
剣菱「ちょ、ちょい待った。荒っぽい事はアカン」
カルロス「大丈夫です。」と言いブリッジの入口へ歩いていく
穣「俺も行く。何をやらかすんだ」
護「雲海切り。」
穣「はぁ?」
護とカルロスは甲板のハッチを開けて船の上に出る。辺り一面、霧で真っ白
穣「何も見えねぇー!」
カルロスはアンバーの船体後方へ歩いていくと立ち止まり、「後ろに黒船がいる。まずはこっちから。」と言いホルダーから黒石剣を抜くと、その切っ先を後方に向ける。護も白石斧を後方に向けて構える。
穣「何をやらかすん…?」
カルロス「行くぞ護!3、2、1、ゼロ!」で同時にバッと雲海切りする。周囲が拓けて遠方の黒船の船体が見える。
穣たち「!!」
穣「ど、ど、どーゆーこと!」
黒船では。
総司「…なんか突然、霧が晴れた…。」
上総「…今の、な、何だったんだろう…?」
アンバーの甲板では。
護たちが船体前方へ移動しつつ「今のが雲海切り。有翼種の採掘ではこれがカルさんの役目。」
穣たち「ええ?!」
マゼンタ「それってどんな採掘?」
カルロス、ニヤニヤ笑って「さーて管理の船が来たぞ。ガッツリ雲海切りしてやろう。」と黒石剣を構える
護「おっしゃー!」
カルロス「3、2、1、ゼロ!」で同時にバッと雲海切りする。周囲が拓けて管理の船が見える。
護、管理の船に「来た来た。やっほー!」と手を振る。
カルロス、黒石剣をホルダーに仕舞うと、穣にホルダーごと黒石剣を渡して「これ、預かっててくれ。管理に取られると取り返すのが面倒だ。…護も」
護「分かった。」といい白石斧を透に渡して「頼む。」
透「うん。任せろ」
穣「確かに預かった。」
管理の船はアンバーの上に来てゆっくり甲板に近づき、下部を開けてアンバーの甲板にタラップを降ろす。管理官の男が出て来て「ロストした人工種だな。MF SU MA1023とALF IZ ALAd454」
カルロス&護「はい」
管理官「事情聴取とタグリングのメンテをするのでこちらへ。」と管理の船の船内へと手招きする。
カルロス「誰が我々のメンテをするんです?」
管理官「これからお前達をSSFに連れて行く。」
カルロス「てことは周防か…なんてこった」と嫌そうに言う。
護、管理に「あのー、俺、ALF出身なんですが」
管理官「十六夜先生に連絡した所、都合が悪いのでALF以外の所でメンテして欲しいと。」
護・穣・透「えええ?!」
マゼンタ「せっかく息子が戻って来たのに…。」
透「護、気にするな!」
護「別にいいよ。俺も会いたくなかったし!」
穣・透「ほぇ?!」
穣(…以前は製造師の為にって言いまくってた奴が…)と目を丸くする
すると横にいた別の管理官が「ちなみに十六夜先生が、『管理の方に大変なご迷惑をかけて申し訳ない』と謝っておられた。」
護「はぁ。」
透「ってか基本的にコレ付けられてる事自体が傍迷惑なんですけど。」とタグリングを指差す。
穣「だよなぁ!」
管理官「行くぞ、中へ入れ」と2人を促す。
護「よし行こう。SSFでカルさんの製造師に会うの、楽しみだなー!」
カルロス「…。」嫌そうな顔で「何でだ…。」
護「じゃあ行って来る!」
穣「行って来いー!」
手を振りながら管理の船の中に入って行くカルロスと護。それを見送る穣たち。
透、見送りつつ「…護、まるで別人だよね。人ってあんなに変われるんだな…。」
穣「そもそもカルロスと護が一緒に居るのが不思議でタマラン。何がどうなったんだ、一体!」
透「イェソド行きたいなぁ」
穣「どんな所なんだろうな。マジ行きてぇ…。」
管理の船の中では。
さっきの管理官二人と共に、狭い船室にいる護とカルロス。事情聴取を受けている。
管理、小型端末を見つつ「…動物を追いかけて川に落ちたというのは本当?」
護「はい。とにかく原因は自分のミスです。他のメンバーは関係ありません。」
するとカルロスが「ったく採掘監督の癖に」
護「しょうがないやん!」
管理「…で、それから?」
護「流されてどこかの川岸に辿り着き、歩き疲れて倒れた所を有翼種に助けて頂きました。」
カルロス「その前に妖精だろ!」
護「あ、そうか。」
管理「妖精?」
護「はい。丸くて長い耳のカワイイ奴とか。」
カルロス「私の場合はゴツゴツしたかわいくない妖精でした。」
護「え、あれカワイイよ!」
カルロス「そうか?あいつ人に頭突きするわキックするわ」
護「あの足でキックとかカワイイやん!」
管理官、はぁーと溜息をついて「君達、真面目に答えてくれるかな。」
護&カルロス「真面目です!」
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