2025.03.29 09:32第19章06 図書館の後、夕飯時。 暫し後。 鉱石大図鑑を見ていた四人が受付カウンターに移動すると、複写冊子が出来上がった所だった。 司書が受付カウンターの上に、かなりの厚さの冊子を出す。「出来ました。先程の冊子と合わせて複写代が16000ケテラと冊子製本代500ケテラで、合計16500ケテラです」 周防は一瞬、エッという顔をしてから気まずそうに「結構かかりましたね……」と呟く。 カナンは「...
2025.03.27 09:48第19章05 図書館にて やがてコクマの街の上空に到達した二隻は、図書館の屋上駐機場に横並びに着陸する。 アンバーと黒船のタラップが下りて、黒船からはA4サイズの封筒を持った駿河に続いてレトラとカルロスが、アンバーからは護と、ショルダーバッグを肩から下げたターさんが出て来る。護は駿河を見て「あれ、船長まで来たの?」と少し怪訝そうに言う。「うん、まぁ一応、周防先生を預かった代表として...
2025.03.26 15:21第19章04 駿河と剣菱の想い 午後3時半近く。 小さな紙袋を抱えたジェッソと、大きめの紙袋を抱えた穣が、パンを食べながら採掘船停泊所への道を歩いている。「やっぱ色々見聞すると視野が広がるわな。街に行ってよかった」 穣が言うと、ジェッソは右手に持った薄紫の丸いパンを食べて「うん。最初は、そんな遊んでるヒマあるかと思ったりしたが、やりたい事はやってみるもんだな。強制的に街に行く事を決めたカ...
2025.03.23 09:51第19章03 ターさんと駿河 ターさんは駿河を店の奥のアクセサリー注文カウンターへ連れて行く。 選んだ瓶を店員に渡し、駿河にカウンター前の丸椅子に座るよう促して、自分はその横に立って言う。「手首周りを測るから、手を出して」 駿河が指示通りにすると、年配の男性店員が駿河の手首を見て「お。いい中和石の腕輪着けてますね」と驚く。 駿河は「あっ」と気づいて「そうだオブシディアンと中和石にすれば...
2025.03.21 09:24第19章02 それぞれの買い物 再び商店街。 本屋の入り口の前に、昴、夏樹、良太、総司、リキテクスの五人が立っている。「ここだここだ。よし、入ろう」 昴はガラス張りの入り口ドアを引いて開けて店内へ入り、他の四人も後に続く。 中に入ると二階までが吹き抜けになっていて、一階から二階部分が見えるようになっている。入り口脇の壁には二階の奥にカフェがあるという案内とメニュー表が書かれたタペストリー...
2025.03.21 08:54第19章01 食べ盛り組と、道具屋の二人 一方、飲食チームのカルロス側に集ったのは全部で9人。 アンバーからは食べ盛りのマゼンタ、オーキッド、オリオンと、買い物よりもノンビリしたい悠斗と剣菱が、黒船からはカルロスにくっ付いて来た上総と、何か食べたい大和とオーカーが参加。男だけの集まりで、買い物チームに比べてゆったりと周囲を見ながら飲食店が並ぶ通りを歩いている。 先頭を歩くカルロスが言う。「今の時間...
2025.03.17 09:47第18章05 宝石屋 買い物チームの護側に集ったのは総勢22人。 ターさんと護の他に、アンバーからはネイビー、剣宮、バイオレットの操縦士三人と、機関部の良太とシナモンの二人、調理師のアキと、マリアと透と健が参加し、黒船からは駿河をはじめ、総司、静流、アメジストの操縦士三人とリキテクス、シトロネラの機関部二人、調理師のジュリアにレンブラント、昴、夏樹、メリッサが参加。 それなりの...
2025.03.15 09:16第18章04 さぁ街へ行こう 午前9時半少し前。 黒船の総司と静流の二人部屋では、総司が一人、制服から私服へ着替えをしている。静流は居ない。 (……街歩きか。有翼種の街を見たからって何がどうなるもんでも無いし、あんまり気乗りしないな。もし自由参加ならば船でノンビリ出来るのに、全員強制参加だから仕方がない……。まぁ皆に合わせるのが船乗りの処世術、忍耐と妥協には慣れた) そんな事を思いなが...
2025.03.15 09:00第18章03 朝の仕事と朝ごはん 翌朝6時半過ぎ。 アンバーの甲板ハッチが開いて半袖Tシャツと短パン姿のマゼンタが甲板上に出て来ると、「いい天気だ!」と言いつつ伸びをする。そこへ背後からゴツゴツ妖精がポンとジャンプしてマゼンタの目の前に現れる。「おっ、来たな妖精!」 続いて四角いのと三角の妖精も背後からマゼンタを飛び越えるようにして現れる。「え、お前ら一体どこから来た?」 周囲をキョロキョ...
2025.03.11 15:08第18章02 カルロスは語る 22時近く、再びケセドの街の採掘船停泊所。 黒船の船内食堂には、カルロスと調理師のジュリアだけがいる。 シャワー上がりでTシャツにジーパン姿のカルロスは、入り口近くのテーブルの右側に四角い椅子を四つ並べて、入り口側に足を向けて仰向けに寝転がり、身体の上にバスタオルを掛けて、寝たまま小型船の教本を読んでいる。その左隣のテーブルには、まだ制服のままのジュリアが...
2025.03.09 18:51第18章01 82年ぶりの団欒 20時近く、イェソド山の中腹にあるコクマの街。 一階に店舗を構えるカナンの家の二階のリビングでは、夕食を終えたカナンと周防が木製の丸テーブルを挟んで向かい合ってソファに座り、食後のお茶をしている。そこへセフィリアが小さなクッキーを入れた小さな籠を持ってきてテーブルの上に置く。「どうぞ」 周防は籠の中のクッキーを見て「おや?」と言い、丸い妖精の形をした小さな...
2025.03.09 18:31第17章06 結果発表 30分後。 黒船とアンバーは船首を揃えて採掘船停泊所に着陸している。ブルートパーズはその対面に着陸していて、二隻とブルートパーズの間には、各船のメンバーが集って雑談しながら待機中。 カルナギと剣菱と駿河の三人の船長は、一同から少し離れた所に集い、話をしている。「はいこれ、明細書」 カルナギは剣菱と駿河にそれぞれA4サイズの明細書を渡し、自分は最後の1枚と、...
2025.03.05 10:11第17章05 積み荷降ろし 40分後。 アンバーは黒船より先に石置き場上空のブルートパーズの元へ戻る。 剣菱はブリッジの窓から石置き場の様子を見て「さっきは凄い混んでたが、だいぶ空いたな」と呟く。 何やら興味深げに探知しているマリアは「ここ、地下にも鉱石柱がある」と言い「……あ、そうか大きい柱は上に置いて、小さいのは地下なのね」と納得。「ほぉ地下もあるのか」 剣菱が言うと同時に前方の...
2025.03.03 09:47第17章04 痛みと共に 18時近く。 三隻はケセドの街の石置き場上空で待機している。付近には何隻か船が居て、三隻同様、上空待機中。 日が落ちて辺りは薄暗くなったが石置き場は照明に照らされて結構明るく、下で、船から積み荷を降ろす採掘師や石屋の動きが上空からでもよく見える。 黒船の甲板の船首付近にはジェッソとレンブラントが並んで立ち、その横には床に座ったオーカーが居て石置き場の様子を...
2025.03.01 10:15第17章03 解放の始まり 黒船とアンバーはブルートパーズと合流し、三隻は晴れた空をブルートパーズを先頭に街へ向かって飛び始める。 ケテル鉱石柱が三本載っているアンバーの甲板では、柱のすぐ傍に座り込んだマゼンタとオーキッドが数匹の妖精と戯れ中。オーキッドは三角形の妖精を抱き抱えてしげしげと観察すると「おにぎりみたいな形してる」と言い、その頭を撫でながら「んでも可愛いなぁ。変な顔してる...
2025.02.27 10:06第17章02 石茶石採掘 黒船とアンバーは林の手前の若干乾いた大地に着陸し、船底の採掘口が開いてタラップが下りると同時にコンテナや道具を持った採掘メンバーが続々と駆け降りて来る。真っ先に走り出たカルロスは、黒石剣を背負い、手にスコップを持って林に向かって走りながら「まずはあの柱の根元だー!」と叫ぶ。 その後を追うジェッソは「ちょっ……、後続のメンバーがまだ」とカルロスを引き留めよう...
2025.02.27 08:43第17章01 石茶石の現場へ ドゥリーと探知人工種三人は黒石剣の練習を終え、ドゥリーは甲板ハッチ近くの人工種座談会に加わり、上総とマリア、カルロスの三人はお茶を飲みに黒船の船内へ。食堂に向かって通路を歩きつつマリアが「わーい黒船の船内だぁー!」と楽し気に言うと、上総がボソッと「そんな騒ぐ程の事かなぁ」と言う。マリアは上総を見て「えー、キミもアンバーに来たらテンション上がるよ、他の船って...
2025.02.23 17:11第16章06 大物を採る 甲板の上の穣が笑いながら言う。「さっきあいつ、ブリッジの上跳んでったぞ。中の人ビックリするやん……しかし護もよく落ちるわな、この高さから!」 するとカルロスが胸を張って「私も練習したぞ、この高さから! 浮き石があるとはいえ、最初は結構恐い!」 すかさずターさんがニヤリと笑う。「顔が引き攣ってたもんねぇ、絶叫してたし!」 穣が「なぬ?」上総が「エッ!」と驚い...
2025.02.21 10:17第16章05 大死然境界の手前で 雲海の中を飛ぶアンバー、黒船、ブルートパーズの三隻。先頭を飛ぶアンバーの甲板ではマリア、カルロス、上総、ドゥリーの四人が真剣に探知を続けている。周囲には彼らを見守るカルナギや有翼種メンバーと、穣やアンバーメンバー達、そして数匹の妖精達がコロコロ転がっている。 護が周囲を見回して呟く。「なんか雲海が濃くなって来た。周り真っ白、視界悪い」 穣も「だな」と言い、...
2025.02.19 10:19第16章04 三隻合同採掘 2「完全に忘れられたのかと思った……」 ターさんによって甲板に引き上げられた護は悲し気な顔でションボリと呟く。 カルロスが大きく頷く。「うん、若干忘れられていた」 マゼンタも「うん、しっかり忘れてた!」と言い、穣は「まー人型探知機がいるから問題ない!」とニッコリ。 カルナギは「さてと。時間的に考えると……」と言って思案気にちょっと黙る。 そこへドゥリーがインカ...
2025.02.18 14:46第16章03 三隻合同採掘 1 上空に上がったブルートパーズとアンバーと黒船の三隻は、アンバーを先頭に背後に黒船、その上空にブルートパーズという体制で雲海に向かって飛び始める。 アンバーの甲板にはマリアや護、穣達アンバーズの他にマゼンタにくっついて来た妖精が数匹、更にターさんとカルナギも居て、カルナギは耳に着けたブルートパーズ用の通信機、言わば『イェソドで使われているインカム』で船や仲間...
2025.02.15 10:02第16章02 意識の変化 15分後。 黒船とアンバーの船体の前に、二隻の全員が集っている。一同は適当に前後二列になり、前列のカルロス、ジェッソ、昴、夏樹、護、マゼンタ、悠斗、オーキッド達は地面に座って他の人々はその後ろに立つ。皆の前にはカルナギとターさんが並んで立ち、その横には石の入った木箱が一箱。カルナギの背後にはブルートパーズの船のメンバー達がいて、その後方にはブルートパーズの...
2025.02.15 09:21第16章01 鉱石の妖精と ケセドの街に戻って来た黒船とアンバーは、先導船に従って街外れの採掘船停泊所へ向かう。 アンバーの前を飛ぶ黒船のブリッジでは、上総が興味深げに船窓から見える景色を眺めつつ「わぁ」とか「おぉ」と声を上げている。「高度下げたから街がよく見える! これがカルロスさんが暮らす街かぁ! なんか庶民的な街だー商店街あるー行ってみたいー!」 レトラが言う。「和解したのでも...
2025.02.15 09:21第15章05 大長老ダグラス 黒船とアンバーは、警備の有翼種達の指示で『大樹の森』と呼ばれる荘厳な建物の前の大きな広場に横並びに着陸すると、タラップを下ろす。各船の船内からゾロゾロと出て来るメンバー達。駿河と剣菱の船長二人は最後にタラップを降りると、『船の鍵』であるリモコンキーでタラップを上げて、船底の採掘口を閉じてロックする。 レトラは『大樹の森』の入り口前の階段下に立つと、自分の前...
2025.02.10 10:31第15章04 首都ケテルへ 船に戻った二隻の面々は発進準備を整えて、約束の時間が来るのを待つ。 アンバーにはターさん、黒船にはカナンと周防、レトラが一緒に乗船する。 やがてイェソド山の方から採掘船の半分程のサイズの警備船が3隻飛んで来ると、ターさんの家の上空に一旦停止し、それを合図にまず黒船が先に上空に上がり、警備船3隻の内の1隻が黒船の前に出て先導するようにイェソド山に向かって飛び...
2025.02.09 10:08第15章03 親族会議 ターさんの家の中で茶飲み話に花が咲いていた頃、家の前の庭では、アンバーのメンバー達が『妖精捕獲大作戦』を繰り広げていた。単にポンポン跳ねて逃げる妖精を捕まえるだけの遊びである。「アッ、ちくしょー逃げられた!」 オリオンの手をすり抜けてポーンと上に跳ねる丸い妖精。そこへサッとマリアの手が来るが、妖精はその手を素早くすり抜けてマリアの頭に一旦着地し、弾みをつけ...
2025.02.08 09:47第15章02 団欒(だんらん) ターさんの家の中に入った面々は、キッチンのすぐ前に置かれたダイニングテーブルの席に着く。テーブルの真ん中には、お菓子の入った大き目の四角い缶が置かれている。 テーブルの右側の椅子にはカナン、周防、ジェッソが並んで座り、ジェッソの隣には小さな折り畳みの丸椅子に腰掛けたメリッサが、その背後には昴と夏樹がそれぞれ丸椅子に腰掛ける。 テーブルの左側の椅子には駿河と...
2025.02.08 09:20第15章01 82年ぶりの再会 アンバーでは護とマリアに続いて穣や透、採掘メンバー達がタラップを駆け降り、カナンとターさんの元へ走る。 先頭の護は走りながら手を振って「ターさん、カナンさん!」「おかえりー」とターさんも手を振る。「やぁ、久しぶりだね」微笑むカナン。 二人の前に辿り着いた護は、追って来た穣やマゼンタ達に「この方がカナンさん!」と紹介する。 穣はカナンを見て少し驚き「ど、どう...