2025.04.28 09:32最終話 旅立ち 二週間後。 ジャスパー採掘船本部に程近い場所にある、月極の立体駐機場ビルの一画に、黒船やアンバーの半分程の大きさの白い船、カルセドニーが停まっている。元は一般的な貨物船だが、内部に船室やキッチンを作ったり、採掘船として必要な装備を入れたり、色々とカスタマイズして採掘船本部にイェソド鉱石を採る船として登録したので正規の『採掘船』となっている。 黒船のブリッジ...
2025.04.26 09:23第22章04 始動 次の日。 採掘船本部事務所の受付で、まだ副長の制服のままの総司とネイビーが辞令書と関連書類を受け取っている。 和やかな雰囲気で、二人は周囲に集った数人の本部の人々と軽く談笑すると、傍に置いた小さなキャリーバッグを引きつつ事務所から出る。 駐機場に向かって通路を歩きながら、ネイビーが言う。「なんかサクッと辞令書もらって終わったけど、副長はともかく船長任命の辞...
2025.04.24 09:37第22章03 帰還 ジャスパー採掘船本部には、屋外駐機場と、格納庫を兼ねる立体駐機場、という二つの駐機場がある。 この立体駐機場の建物は、全体では四階建ての建物だが駐機場部分は三階に分かれていて、各階に二隻で採掘船が合計六隻収容できるという、それだけでもかなり大きな建物なのだが駐機場だけでなく本部事務所や会議室等があるフロアもあり、しかも隣の鉱石集積所の建物と一部繋がっている...
2025.04.22 09:28第22章02 新時代の子供達 ジャスパーの周防紫剣人工種製造所、通称SSFの大きな建物の屋上は駐機場になっているが、普段は子供達の遊び場にもなっている。駐機場なので人工種管理や来客の船等がよく来る為、それには絶対触らない、傷つけない壊さない、というのが遊ぶ条件であり、それが守れない子は屋上に出る事が出来ない。 屋上の左の隅には下へ続く階段と給水設備等が入った『塔屋』と呼ばれる所があるが...
2025.04.20 09:39第22章(最終章)01 さよなら、駿河船長 黒船のブリッジ入り口付近には、何時にも増して野次馬メンバーが集っている。 本来は待機時間であるアメジストと静流に続き、メリッサ、昴、夏樹、レンブラント、オーカーに大和まで来て入り口付近が混雑したのでジェッソやカルロスはブリッジ内の操縦席の右側に並んで立ち、アメジストと静流もブリッジの中に入って船長席左側の壁際に立つ。 操縦席の総司が計器を見ながら「なんか船...
2025.04.18 09:29第21章05 誕生 皆が黒船のタラップを上がって採掘準備室に入ると、既に駿河と総司、そして黒船の船内に残っていたメンバー全員が待機していた。 駿河は皆を見て「ええと、まず周防先生、イスどうぞ」と自分の右手前に並べた六つの折り畳み丸椅子を指差す。それから「剣菱さんも、椅子を」と言い「残りの椅子は早い者勝ちで座りたい人がどうぞ。本当は小さいコンテナがあれば皆の椅子代わりに出来るん...
2025.04.16 09:26第21章04 決断 甲板のハッチの縁に腰掛けているメリッサは、近くのジェッソ達の会話を聞きつつ胸に抱いた丸い妖精を撫でている。妖精は気持ち良さげにメリッサの腕の中でウトウト居眠り。「……幸せそうな顔しちゃって……」 妖精の顔を見ながらメリッサは妖精の頭をポンポンと優しく叩く。 それにしてもこの妖精は触り心地が良い。まるでぬいぐるみのようにフワフワしている。かと思うと長い耳と丸...
2025.04.14 10:41第21章03 紺碧の空 やがて二隻は死然雲海に入り、先頭を飛ぶ黒船のブリッジの船窓も白一色になって視界が消える。 総司が思わず「うわ、濃いなぁ」と呟き、隣に立つ上総に「探知、大丈夫か?」と聞く。「んー……」 目を閉じ眉間に皺を寄せ、身体の周囲を若干青く光らせながら唸る上総。 駿河も上総を気遣うように「探知しにくいのか?」と尋ねると、上総は大きな溜息をついて「ここからダアトの遺跡を...
2025.04.12 09:45第21章02 総司の想い「船がどんどん重くなる。凄いな」 黒船の船長席で、計器を見ながら駿河が呟く。 そこへピピーとコール音が鳴り、ブリッジのスピーカーから『ブリッジ! そろそろ貨物室満タンになるから甲板積みいきまーす』とジェッソの声。同時にやや遠くから『アンバーも甲板積みいきまーーす!』という穣の声が聞こえてジェッソが『ウルサイぞハチマキ男!』と返す。『黒船には負けねー!』 駿河...
2025.04.10 09:50第21章01 帰路へ 翌朝。 採掘船の制服姿のカルロスと護がテクテクとカナンの店に向かって歩いている。 二人は店の入り口に着くと、護がドアを開けつつ「おはようございまーす!」と挨拶。「おはよう!」 入り口近くのテーブル席に座っていた周防、ターさん、カナン、セフィリアが二人を見て挨拶を返す。 ターさんは椅子から立ち上がりつつ護に「何だかすっかりカナンさん達にお世話になっちゃったよ...
2025.04.08 10:11第20章05 提案「あれ?」 ふと駿河が疑問を呈する。「人工有翼種が自然生殖出来たなら、何であそこに御剣研が?」 そう言われて穣も「そうか、ダアトになぜ人工種を作る為の施設が」と言って周防を見る。 周防は複写冊子をパラパラとめくりながら「ある程度までは人工有翼種を作らなきゃならないからだな、人口増加の為に」「でも自然生殖も人工生殖もできるって……」 何か問いたげに言葉を止める...
2025.04.06 10:01第20章04 様々な考察 カナンとセフィリアはそれぞれ専用の大きなケトルで石茶を作り、出来たものを保温用の石茶ポットに注ぎ入れる。カナンは自分が淹れた二種類の石茶のポットをカウンターの上に置くと、セフィリアの近くにあるポットを指差しつつターさんに言う。「そっちのポットの石茶が出来たらター君が配ってくれ」「はい」 セフィリアは「こっちはコーヒーみたいな石茶よ。もうすぐ出来るから」と言...
2025.04.04 09:41第20章03 興味深い自己紹介「カナンさん、シトロネラって知ってる?」「えっ? ……あ、もしかして、よく虫除けに使われる精油の名前の事かな。どうして?」「私の名前、MF SU C170周防シトロネラなんです。人に虫除けの名前付けるって、あの製造師、酷いと思いません?」 シトロネラは周防をビシッと指差す。「まだ言ってるのかー」 呆れる周防。シトロネラは「だってメリッサなんて高級精油の名前な...
2025.04.02 09:35第20章02 お茶会の意味 店内には窓際に置かれたテーブル席が三つ。 入り口近くのテーブル席の窓際には総司、隣に周防が並んで座り、対面の窓際席にはリキテクス、その隣には駿河が居て、駿河の背後には真ん中のテーブル席の上総が、上総の隣の窓際席にはマゼンタ、マゼンタの対面の窓際席には透、その隣には穣が座っている。 穣の背後には奥のテーブル席の剣菱、その隣の窓際には夏樹、夏樹の対面にはジェッ...
2025.03.31 09:48第20章01 じゃんけん大会 20時前。 図書館の屋上駐機場に停まる二隻のタラップの下に、人が集い始める。何か気配を感じたのか妖精達も図書館脇の階段をポコポコ跳ね上がって二隻の元に集まって来る。 総司と共に黒船のタラップを降りかけた静流は、下を見て躊躇し立ち止まると「結構な人数が居るから、私は止めとこうかな……」 一瞬ガクッとした総司は立ち止まって振り向き、呆れ気味に静流を見る。「そー...