第21章04 決断
甲板のハッチの縁に腰掛けているメリッサは、近くのジェッソ達の会話を聞きつつ胸に抱いた丸い妖精を撫でている。妖精は気持ち良さげにメリッサの腕の中でウトウト居眠り。
「……幸せそうな顔しちゃって……」
妖精の顔を見ながらメリッサは妖精の頭をポンポンと優しく叩く。
それにしてもこの妖精は触り心地が良い。まるでぬいぐるみのようにフワフワしている。かと思うと長い耳と丸いしっぽと短い足は、プリッとして滑らかで……。
「ほんっと、かーわいい」
妖精をギュッと抱き締めて、ヨシヨシと撫でていると、カルロスの「……何をしてるんだ……」という声。
ふと見ると黒石剣を持ったカルロスがこっちに近付いて来る。
「この妖精、フワフワしててほんっと気持ちいい」
「ウム」と頷いたカルロスは、メリッサの正面のハッチの縁に座り、黒石剣を甲板に置いて言う。
「どこぞにはゴツゴツしてて触り心地が硬い奴もいるのにな。あいつのキックは痛い」
メリッサがアハハと笑うと妖精が寝ぼけ眼で頭にハテナマークを浮かべる。
「あ、起きちゃった」
「しかしその妖精、どこまで黒船に無賃乗船していくつもりなんだ」
「そうねぇ」メリッサは妖精の顔を見つめて「キミのお家はどこにあるのかなー」
妖精は無言のままメリッサとカルロスに何かを訴えかける。
二人は同時に驚いた顔で「……森?」と言い、メリッサが「森が、お家なの……」と呟く。
その時、周囲に少しずつ薄雲が出始め、やや霧掛かってくる。
「あら。また曇って来た」
メリッサは妖精を抱いたまま立ち上がり、カルロスも甲板に置いた黒石剣を手に取って「そろそろダアトが近いしな。雲海切りの出番かな?」と言いつつ立ち上がったその瞬間。
妖精がメリッサの腕からポンと飛び出て皆の周囲をポンポンと跳ね回る。
ジェッソが「どうした、妖精君」と言うと、妖精は立ち止まり、皆に向かって耳でバイバイをする。
「ここで降りるのか」とカルロス。
ジェッソは「しかし大丈夫なのか? 飛び降りて」と妖精の前に屈む。
妖精はポコポコと跳ねてジェッソに何かを伝える。
「そうか、お家だもんな。大丈夫だな」
微笑むジェッソ。
ニコニコと嬉し気に微笑んだ妖精は、トコトコと歩いて船の縁に立つと、耳を振ってバイバイしてから黒船からポーンと飛び降り、一同は手を振って「またね」とそれを見送る。その間にも周囲の霧は増え、青空は白く変わり、二隻は、ついに真っ白に染まった雲海の中を突き進む。
カルロスがジェッソの傍に来て言う。
「監督、あと10分程進んだら雲海切りするので、10分経ったら速度を緩めて欲しいとブリッジに連絡お願いします」
「了解です。……しかし貴方に監督って呼ばれるのは、まだ違和感あるなぁ」
「……それはどういう……?」
怪訝な顔のカルロスに「何でもありませんよ」と笑ったジェッソはインカムでブリッジに連絡する。
雲海の中を飛んでいた二隻は徐々に速度を落とす。
黒船の甲板のブリッジ手前に立つカルロスは、黒石剣を構えると、意識を集中して前方に盛大な雲海切りをブチかまし、青い光と共にバッと雲海が拓け、薄曇りの空の下にダアトの遺跡が姿を現す。
「さすが雲海切り職人!」
ジェッソや周囲のメンバー達がパチパチと拍手する。
恥ずかしそうな顔のカルロスは「……この間、ドゥリーさんに指導してもらったお蔭で結構切れるようには、なった」と言い、前方のダアトを見ながら叫ぶ。
「これがダアトか、やっと実物を見たぞ!」
ダアトに入った二隻は御剣研の屋上に船首を向かい合わせて着陸し、船底のタラップを下ろす。
各船から出て来たメンバー達は、船体の間で合流し、それから屋上の柵の方へ移動する。
「わーお、写真で見たとこだ! リアル遺跡!」
マゼンタが真っ先に柵の近くへ駆け寄りつつ叫ぶと、続いて隣に来た悠斗が「んでも遺跡って感じしないよなぁ」と言い、背後に来たオリオンも「うん、古くないし……何となく不気味」と不安気な顔をする。
ショルダーバッグを肩に掛けた周防もジェッソ達と共に「ここがダアトか……」と周囲を見ながら柵に向かって歩く。すると上総と共に周防の背後にいたカルロスが、突然「んん? おかしいな」と言い、その場に屈んで屋上の床に手を当て、探知を掛ける。
「この建物、窓も入り口も無いぞ」
「え」
上総も屈んで床に手を当て探知を掛けて
「ホントだ! 外から見ると有るのに、探知すると無い!」
それを聞いた穣が「ほぇ?」と怪訝な声を発し、一緒に歩いていたマリアが「え、やっぱり?」と声を上げてカルロス達の所に来ると、「この建物、なんか変ですよね!」と言い自分も床に手を当てる。
その声を聞き、何事かと三人の元へ集まる一同。
上総が真剣な顔で「真ん中あたりで弾かれませんか」と言うと、カルロスが「うん」と頷いて顔を上げ、皆に向かって「誰か書くもの……紙とペン持ってないか?」
周防が「ある」と言い肩に掛けたショルダーバックからノートとペンを取り出すと、上総がちょっと驚いたように「何でノートなんて持ってんの?」と言い、周防は少しムッとした顔で「今は何でもデジタルな時代だが、手で書くって大事なんだぞ。特にこういう未知の調査では、タブレット等と一緒にノートもあるといいんだ」と言いつつノートの最後のページを開いてボールペンと共にカルロスに渡す。
上総は少し膨れっ面で「デジタルとかより俺、メモ帳なら持ってるから、そういう意味で何でノート? って言ったのに……」と周防を見る。
「そうなのか」
「うん、でもチョビッと、わざわざノート持ち歩くってアナログだなーとは思った」
「だろう?」
二人が会話している間にカルロスは探知しながらノートに図を描き始める。途中まで描いた所で手を止め、眉間に皺を寄せて「うーん……」と唸ると描いた図を一同に見せつつ説明を始める。
「この建物、地上3階、地下は恐らく……5階位の建物で、2階の連絡通路で隣の建物と繋がってるような感じがするけど何か壁があるような……。隔壁かなぁ? 隣は特に何もないだだっ広い建物で、何の為の建物なのかサッパリわからん。ともかく2階は、間取り的にどっかのSSFみたいな感じが……」その言葉に上総が「そう!」と相槌を打ち「SSFっぽい感じの作りですよね。でもこの真ん中がわからない」
「真ん中なぁ……」
カルロスは悩み顔で「SSFに当て嵌めるとメンテナンスルームがある場所のような気がするが、図に描くとこうなる」と言いつつ探知エネルギーを強め、若干青く光りつつ2階の間取り図を描く。
「何とか頑張って探知してるけど、合ってるかどうかは保証しない」
「!」
カルロスにしては非常に珍しいセリフに、周囲の皆が意外な顔になる。
描き終えた図を周防に見せつつ、カルロスは「2階の真ん中らへんはSSFを参考にした推測だからな」と言うと、周防はカルロスの持つペンを指差して「それ二色ボールペンだから、推測の所は赤色で囲んどいてくれ。しかしお前、図を描くの上手いな」と言う。
「仕事で鍛えられたんだよ。探知した採掘場所の説明するのに図を描いてたもんで」
カルロスは赤の点線で推測部分を囲むと
「ここを探知しようとすると弾かれる」
横から穣が「弾かれるっていうと?」と問い、カルロスは悩みつつ
「何というか……、殆ど探知出来ない。誰かに探知妨害されるのと同じ感じ」
マリアが「まるで鏡の中を探知したような」と言った途端、上総とカルロスが「そう!」とマリアを指差す。
「まさにそれだ。上手い事を言う」
カルロスに褒められたマリアは少し嬉し気な顔をしながら
「3階は小部屋が沢山あって、アパートとか宿泊施設のような……」
「描くのも簡単なんだよな3階は」
カルロスは3階の間取り図を描くと、「だが1階は……」と再度探知エネルギーを上げる。目を閉じて探知に集中するが、「歪む。上手く探知できない」と溜息。
上総が「カルロスさんもですか」と驚く。
「うん。地下になると全くダメ。こんな建物、初めて……でもないぞ、思い出した!」
周防が口を挟む。
「もしかして、MF(マルクトファクトリー)の地下かな……?」
カルロスは探知を続けながら「そう! 子供の頃、MFの地下を探知しようとして出来なかった、アレだ」と言い、ふと目を開けて「いや待てよ、もう大人なのに何で? ……アレは子供で未熟だったから出来なかったんであって……」と不思議そうに周防を見る。
周防は少し驚きつつ、考えながら呟く。
「んー……、人工種の探知を阻む方法、というか、仕掛けが……あるんですよ。ここはまだそれが生きてるんだな……」
上総が「それってSSFにもあります?」と尋ねる。
「あるよ」
「え。……どこに?」
周防は思わず口に手を当て『しまった』という表情をしてしまう。
カルロスが「何だと? もしかして私も気づいていない?」と鋭く反応する。
苦い表情になった周防は困ったように
「……だってほら、知らんものは探知出来んし、そもそも、ありますかと聞いてる時点でアウトだろ!」
カルロスと上総は険しい顔でバッ、とお互いを見る。
「上総!」「カルロスさん!」
カルロスは上総に向かって腕を曲げて右手を出して「いつかSSFの探知だ」
上総もカルロスの右手をパンッと掴んで「やりましょう!」
何かを誤魔化すようにゴホンと咳払いした周防は、カルロスが描いた図を見つつ呟く。
「……この建物の構造、何となくMFと似てるな」
穣が「しかし窓も入り口も無いというのは、どういう……?」と尋ねると、周防は「まぁ、外から見えているのはフェイクで、本物があると思う。でもそれは探知出来ないようになってるんだよ、多分」と言い、マリアが「本当に、そんな事が出来るんですか?」と目を丸くする。
「うん。……あまり皆に言わないで欲しいんだが、出来る。とはいえ、これは……かなり驚いた。この三人でも探知出来ないのか……」
周防は暫し考えてから
「あくまで推測だが、人工有翼種は自然生殖が出来た、という事は、ここはそう長くは使われなかったのかもしれない。そしてその後、有翼種と人間は争いを始めただろう。このダアトが中立を守った人工有翼種の街だとすると……この施設、またはこの中の情報か何かを守るために、入り口を封鎖したのかもしれない。つまり、ずっと封鎖した状態で、長年維持管理してきたと」
カルロスが「なるほど、それで探知も出来ないようになっていると。一理はある」と頷く。
穣も「確かに、それは考えられる」と言い
「しかしここに住んでいた人工有翼種は一体どうなったんだろう?」
周防は「さぁなぁ……それはイェソドの有翼種達も分からないらしい」と言い、穣は「ふむぅ」と思案気に溜息をつく。
カルロスが周防に尋ねる。
「どうする、どっかに穴でも開けてこの中に入るか?」
「……中を調べたいのは山々だが、完全に封じてあるものを無理矢理開けるのは、なぁ……」
周防はちょっと考えて
「これは紫剣さんと一緒に……いや、人間、有翼種、人工種の皆で開けて、調査するべきだ」
その言葉に皆が「おお」と声を発し、穣も「なるほど」、カルロスも「そうだな」と頷く。
「まずはこの状況を有翼種にも伝えよう」
「うん」
カルロスは頷いてペンとノートを周防に返す。
周防は「凄腕の探知三人でも探知出来ないというのは、それ自体が凄い発見だよ。ダアトに寄って良かった」と言い、皆に向かって「ありがとう」と微笑む。
「じゃあ船に戻るか」とカルロスが言った途端、メリッサが「ちょっと待って!」と声を上げ、自分を指差して「風使いの出番よ!」続けて隣の夏樹が「俺達が下に降りてパパッと街の写真を取って来る!」そして透に「行こう、透君! スマホ持ってる?」と聞く。
「持ってる持ってる、行きます!」
周防は慌てて「あっじゃあ私のスマホにも」と言いつつ上着のポケットからスマホを取り出しメリッサに渡すと「カメラだけだぞ、他のとこいじるなよ!」
「分かってるわよ、プライバシーは尊重するわよ!」
透も腰のポーチからスマホを出して「じゃあ、行こうか!」
夏樹も自分のスマホを手に持って「うん!」と返事。
「いってきまーす!」
メリッサの声と共に三人はバッとジャンプして柵を越え、建物の下へ。そのまま風を操ってジャンプしながら移動しつつ、分散して御剣研の建物の外観をスマホで撮り、それから三人で街の方に走る。
屋上からその様子を眺める一同。
マゼンタが「いいなぁカッコイイ」と呟く。
その頃、黒船のブリッジでは待機中の駿河と総司がブリッジのスピーカーから流れて来る皆の会話を聞いていた。
屋上に出た皆の会話は穣やジェッソが耳に着けているインカムを通して各船のブリッジに伝えられる。
『俺もあんな風にジャンプしたーい!』
『その有り余る元気でジャンプするんだマゼンタ君!』
『えぇー落ちるのはいいけど上がれないし!』
『私がワイヤーで引っ張り上げてやる』
『俺は積み荷か!』
駿河はちょっと笑いながらマゼンタと穣やジェッソの会話を楽し気に聞いているが、総司は操縦席で俯いたまま、酷く真剣な顔で悩んでいる。駿河が言う。
「ホント元気だなマゼンタ君。三人の風使いがどんなジャンプしてるのか、俺も見てみたいけど」
「……」
雑談を振られても、総司は答えない。
総司の頭にはずっと、さっき駿河に言われた言葉が響いていた。
『だからこそ皆の希望になるし、皆は応援するだろう』
『そして悩んだ上で出した決断に対して、誰も文句は言えないし、言わせない』
……凄いな。力強い、確証のある言葉だ。もしも俺が、断ったとしても、この人は俺を守ってくれるだろう……。
現に黒船がイェソドに来れたのは、駿河船長が守ってくれたからだ。そして恐らく今後も守ろうとし続ける……。
甘えていてはダメだ。自立しなければ。
俺は、……皆の希望になりたい。
そう言えば、どっかに『剣は天と地を繋ぐ一本の柱』っていう言葉があったな……。
正に今の自分にピッタリな言葉。
気づけばいつの間にか、自分の中に『柱』が出来ていた。
俺は剣姓ではないが、剣を地面に突き刺して立たねば。
あっちとこっちを繋ぐ為に……。
密かに、ふぅ……と細く長い息を吐き、総司は右手を握り締めて覚悟を決める。
駿河はマゼンタ達の元気な会話を時折クスッと笑いながら聞いていたが、やがて誰ともなく独り言を呟く。
「それより気になるのは御剣研の中だ。探知も出来ないなんて……ビックリだな」
「あの、……船長」
「ん?」
総司は大きく息を吸い、ゆっくりと言葉を発する。
「もう、これは……、ここで決めた方が、いい、かもしれない。管理が貴方をクビにするとかそんなの関係なく……、だって、そんなんじゃ俺は、自分が船長という責任を負った事を、管理のせいにしてしまう……」
「……」
駿河はブリッジのスピーカーの音を小さくし、黙って総司の次の言葉を待つ。
長く、深い溜息をついた総司は、やや掠れた声で「なんかもう青天の霹靂ですよ。人工種の俺が、黒船船長なんて、絶対有り得ないのに……」と言い、それから力強い声になって「でも、実は俺は、本当は……、船長になりたかった」と断言する。
「知ってる。何となく気づいてた」
「だから」という総司の声を駿河は遮り
「俺が船長になった最初の頃。貴方に『生ぬるい』と叱られた。……多分その時、貴方の中には『自分ならこうするのに』という想いがあったんだろうなと」
「……」
総司は申し訳無さそうに黙り、それから弁解するように「……まぁ、その」と言った途端、駿河が「いいよ全部言っちまえ。『コイツに船長が出来るなら、俺にも出来る』と思ったろ」と笑う。
「……うん。でも、俺は人工種だから……」
「俺は、人工種の船長の黒船が見たい」
「でも貴方が居なくなると寂しい。船長と副長、この関係が楽しかった」
駿河は「楽しかったな!」と満面の笑みを浮かべ、力強い声で「頼もしい副長だった」
「……」
ちょっと黙った総司は、名残惜しそうに駿河に問う。
「……貴方は、黒船の船長に未練はないんですか?」
「だって今まで散々頑張ったし。……それに、黒船が本当に力を持つ為には人間の俺が船長じゃいけない」
「そう、黒船が人工種を代表する船であるなら、本当は……」
大きな溜息をついた総司は「ああもぅ!」と叫んで
「人は自分が信じた世界しか見る事が出来ない。自分には船長なんて絶対無理だと思っていたら、他者が何を言おうとネガティブな解釈をしてしまう……。俺は貴方に嫉妬した。貴方の事が憎かった。なのに、貴方は……」と悲痛な声を発する。
駿河は穏やかな声で
「だから、船長になって欲しいと願った。だって、ここは、人工種の船……」
「……そう、ここは……」
総司は目を閉じて胸に手を当て、心と呼吸を落ち着かせる。
やがて目を開けた総司は凛とした声で駿河に告げる。
「では船長、これから船長交代について、メンバー全員と話し合いを」
「了解」
駿河は少し、寂し気な笑みを湛えて言う。
「……ありがとう、総司君」
透と夏樹とメリッサが、御剣研の建物の下で何か相談をしている。
「んじゃこんな感じで?」
メリッサが確認し、夏樹が「うん」と頷く。
透が「よし、やってみよう。行くよ!」と言い、「3、2、1、GO!」の掛け声で三人同時にバッとジャンプ、地面に風を叩き付けて一気に御剣研の屋上上空まで飛び上がり、態勢を立て直して屋上の皆の前にストッと着地、「ただいま!」と三人同時にヒーローのようなポーズをキメる。それをポカーンとした顔で見ている一同。
「……何してるん……」
穣の呟きと同時に護やマゼンタ、悠斗達が「かぁっこいーい!」とパチパチ拍手し、ジェッソやカルロス達も苦笑しながら拍手する。
透と夏樹は満足気に「アドリブの割には決まったな!」とパンと右手でハイタッチし、メリッサは周防にスマホを返す。
「はい。結構撮ったよー」
スマホを受け取った周防は画像を確認しながら「おお」と声を上げる。
隣でメリッサも画像を見ながら「なんか無人の街って気持ち悪いわね」
「確かになぁ」
透も撮ってきた写真や動画を穣やカルロス達に見せる。
「何かさ、やたらキレイというか……荒れた感じが無い」
夏樹もジェッソや昴達に動画を見せつつ
「俺の撮った動画、動き速くてちょっと見づらい。透君の方が多分、いい動画撮ってる」
周防は「何でもいい、とりあえず撮ったもの全部くれ。後でSSF専用のストレージのアドレス教えるから後日そこにアップしてくれ、透君も」と言い、夏樹と透は「はい」と返事。
そこへ「おーい皆、どんな感じだー」と叫ぶ声がして、見ればアンバーのタラップから剣菱以下、船内にいた全員が降りて来る。
「あれ」
穣やマゼンタ達が驚き、ジェッソや黒船メンバーも怪訝な顔をする。
護が「どうしたんですか船長。機関長まで……」と尋ねると、剣菱は一同を見回して言う。
「皆、ちょっとこれから黒船で、大事な話し合いをしたいんだが、いいかな」
「黒船で?」
キョトンとするカルロス。ジェッソが真面目な顔で「何の話でしょうか」と尋ねる。
「さぁ何の話だか知らんけど、黒船の船長さんが全員に話したい事があると」
「船長が?」
カルロスやメリッサ、レンブラント達は訝し気に眉間に皺を寄せる。
ジェッソや穣は表情を変えずに「ほぉ」「へぇ」等と短く返事。
剣菱が「だから調査が一段落したら皆で黒船に」と言い掛けた所で周防が「もう調査は終わりました」と口を挟む。
「じゃあ黒船の中へ行こう」
一同は黒船へ移動を始める。
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