第14章 02
一方、アンバーのブリッジでは。
ネイビー「…管理さん静かねー。黒船の方には連絡してんのかな」
剣菱「許可証を出した手前、ウチには強く出られんだろ。黒船にはゴタゴタ言うと思うが。しかしブルーは何しに来たんだ。我々を止めるつもりなのかな。」
そこへ緊急電話が鳴る。
剣菱「おっと。やっと来たか管理」と言い受話器を取って「はい。あ、カルロスさん…。え。」と言うと穣を見て「ブルーの満さんが黒船に電話しまくって困ると」
すると穣が「了解した!」と言うと「船長、電話借りまっさぁ!」
剣菱「やりなさい!」と言うなり受話器を取って穣に渡すと、ブルーの電話番号を押しながら「思う存分やりなさい!」
ブルー・ブリッジ
武藤、受話器をとって「はい。あれ。穣さん…?」と言うと「採掘監督、アンバーの穣さんからお電話です」と言い満に受話器を渡す。
満「…何だ、貴様か。先ほど黒船のカルロスに、この案件は貴様が発端だと言われたぞ。よりによってあの周防のカルロスにだ!」と同時に
アンバー・ブリッジ
穣「うるせぇ!ってかテメェ何で黒船に電話すんだよ電話するならアンバーだろが」
ブルー・ブリッジ
満「貴様、我ら十六夜五人兄弟が何の為に作られたか忘れたとは言わせんぞ。製造師の十六夜先生はもう高齢なのだから心配をかけちゃいかん。大体次男のお前がしっかりしていないから」
アンバー・ブリッジ
穣「ってか長男のテメェがいつまでも製造師ってウゼェんだよ!あのクソ製造師も周防先生を見習いやがれ」
ブルー・ブリッジ
満「製造師に向かって汚い言葉を発するとは何事だ!貴様は本当に話にならん!とにかく管理の皆様の為にも周防先生だけは何としても黒船から奪還する!」
アンバー・ブリッジ
穣「ちょい待っ!…あっ!畜生切りやがった」と言って受話器を置くと「…あいつ黒船に突撃する気だな!」
剣菱「え。」
護「…マジで?」
穣「こうなったら俺達もガチでやるしかねぇ!ネイビーさん、ブルーの上に着けてくれ!」と言うと「スマン船長、ちょっと護と透と3人だけで行って来るぁ!」
剣菱「やって来なさい!…これでもうあの満さんのお電話が来なくて済む」
護(す、凄い事になった…。)
ブルーはゆっくりと船体を黒船の上に近づける。
黒船のブリッジでは
総司「な、なんかブルーが上に、…これはもしや」
ジェッソ、ニヤリと笑って「来る気かなっ?」と言い拳をパンと叩く
駿河「…武藤…お前に損害賠償請求はしたくないぞ…。」と呟く
と、そこへ緊急電話が鳴る。
駿河、受話器を取り「はい。…え?」と言い「副長、船を停めてくれ。アンバーが来るって」
総司「おお?」
ジェッソ「アンバーとブルーのケンカが始まるのか」
昴「ケンカだケンカだ」
カルロス「野次馬に行こう」
総司「いいなぁ俺も行きたい。ジェッソさん!インカムのスイッチ入れといてー」
ジェッソ「OK。中継する」
周防「…楽しそうだね」にこにこ
黒船は速度を落とす。と同時に甲板ハッチが開いてメリッサと夏樹がハッチから上半身を出す。
上空にはブルーの船体底面。
メリッサ「そう簡単には来させないわよ」
ブルーの採掘口では、一同が下に飛び降りる準備をしている。
満、採掘口開閉レバーの前に立ち、インカムに「採掘口を開けます」と言うと、レバーを引く。
採掘口が開き始めて下に黒船の甲板が見え始める。…と同時に突然、船が若干グラッと揺れる。
満たち「!」
見ればメリッサと夏樹が下からブルーに突風を当てている。
ブルーの歩、「そんな風使いの常套手段はわかっているのですよ!」と言うと採掘口から黒船甲板に飛び降り様、メリッサ達に空気の塊を投げつける。
メリッサたち「!」
その間にツルハシを持った満やアッシュたちブルーメンバーが黒船甲板に着地する。
満、黒船メンバー達に「黒船の皆様、静粛に!」と怒鳴ると「あなた方が抵抗すると駿河船長にご迷惑がかかる事になります!大人しく我々を船内に入れて頂きたい!」
夏樹「…ってどっちが迷惑かけてると」
黒船の上にブルーの船体、更にそのブルーの上にアンバーが到着する。
メリッサ、満に「無理に中に入ろうとするなら、そっちの船長に損害賠償請求するけどいいわね?」
満「規約違反を犯して勝手に逃亡しようとする船を止めるのは当然の事、管理の皆様の為にも」と言いかけた所で
突然、メリッサや満からやや離れた船首側の方から「ちょっと待ったぁぁぁ!」という叫び声。
声のした方を見ると右翼の付け根の辺りから穣と透と護がジャンプして現れ甲板に着地する。
満「お前達!」
穣「久しぶりだなみぃぃつーーるーー!」と絶叫して走り込みながらバリア全開で満をブッ飛ばそうとするが同時に満も穣の方に走り込んで思い切りツルハシを穣のバリアに振り下ろす。双方同時に弾かれ若干後方に下がって止まる。
満「大人しくしろ!」
護「嫌です!」と言うと満めがけて白石斧をバンと振り雲海切りをぶちかますがそれは歩の突風で相殺されると同時に透が歩に対して突風をブチかますが歩の反撃で相殺、再び穣が「ぶっ飛べぇぇぇ!」と絶叫しつつ満に対して走り込みつつ思い切りバリアで弾こうとすると同時に満も穣の方に走り込んで思い切りツルハシを振り下ろす。双方同時に弾かれ後方に下がって止まる。
と同時にアッシュ達ブルーメンバーが「監督を助けろ!」と穣の方へ突撃しかけるが
満「全員動くな!」と叫ぶと同時に
穣「部外者は手ぇ出すな!」と叫ぶ
双方対峙の暫しの沈黙
野次馬の昴、黒船の甲板ハッチからちょっと顔を出しつつ「すげー…。十六夜兄弟大喧嘩」
同じくハッチ内の野次馬のジェッソ「…あいつらどうやってここに来た…」
満、穣に「穣…お前は本当に困った奴だ。昔から反抗的で」
穣「ったりめーだ、貴様がウゼェからだよ!製造師製造師って。」
満「人工種でも珍しい貴重なバリアラーだというのに、その能力を腐らせて」
穣「俺が自分の能力をどうしようが俺の勝手だろうが!」
満「貴様は我ら五人兄弟が何の為に作られたか」
穣「知ってるぁ!どっかの周防があのバカを作ったからだろ!」とハッチから顔を出して見物中の野次馬カルロスを指差す。
カルロス「バカって!」
ジェッソ「まぁまぁまぁ」
満「貴様もバカだ穣!お前が素直に協力すれば我ら五人兄弟は一丸となってあのカルロスに」
穣「何で五人がかりであの野郎と戦わなきゃならねぇんだよ!意味分かんねぇし」
カルロス「全くだ」
満「とにかく我々は十六夜先生の」
穣「だからそれがウゼェェェェェェ!」絶叫
満、ため息ついて護を見ると「…護。お前は昔ブルーに居た頃、あんなに素直な良い子だったのに…。やはり穣の元にやるべきではなかった。」
穣「俺は関係ねぇ!」
満「しかも、よりによってアレと一緒に…」と言いカルロスを指差し「護、カルロスの言う事を絶対に聞いちゃイカン!アンバーは穣のせいでおかしくなったが、黒船はカルロスのせいでおかしくなり始めている!」
カルロス「そうだったのか」
メリッサ「そうみたいよ」
満「護、お前が事故で居なくなったからだ。お前が消え、穣がアンバーの採掘監督になってから全てが狂いだした!」
穣「何でだ!」
満「貴様がしっかりしないからカルロスが護の所に行き、護に妙な事を吹き込み、そして黒船まで!…黒船は人工種を代表する船、管理の皆様の指示に従わない事などあり得ないのに。聞けば奴はよりによって、霧島研に勝手なワガママを言いに行ったという!…護、あいつは危険だ。関わっちゃイカン!」
カルロス辟易して「…私はどんだけ悪い人なんだ。」
満「穣、貴様がマトモであれば、我ら五人でカルロスを抑える事が出来る。…これ以上反抗すると、管理の皆様も黙ってはいないぞ。いい加減にしておけ!」と怒鳴る。
穣「何を今更」と辟易したように言う
満、護に「護!お前は穣やカルロスのようになっちゃイカン!今ここでお前をブルーに連れ帰る!」
護、クッタリして「満さんもイェソドに来ればいいんだよ。」
満「なに」
護「俺もう管理とか製造師とかどうだっていいし。」と言うと白石斧を立てて「これ、有翼種の採掘道具でケテル白石斧っていうんだけど、これ俺が自分で採った石で作った斧なの。満さんもこういうの、作りたくないですか?」
満「…。」
護「俺は石が好きなんで、採りたい石を自由に採れるってだけでも楽しいけど、有翼種と一緒に採掘するとメッチャ楽しい。有翼種は飛べるからさ、彼らと一緒に仕事するには落下しながら空中で斧を振るとかしなきゃならないんだ。大変だけど物凄く楽しい。…満さんも一緒にどうですか?」
満「…護。物事には道理というものがある。自分勝手な事は」
護「正直俺は、イェソドに居た時もう二度とジャスパーに戻らないって思ってたよ。だって昔の俺は死んでるように生きてたから。昔の俺って人形だった。生きてなかった。イェソド行って初めて自分が生きてるって感じた。」と言い「満さんが知ってる護ってのは、川に落ちた時にもう死んじゃったよ」と言い、ハハハと笑う
穣「…確かにな。今の護は昔の護とは全く違う。」
護「だからさ。」と言い、満を見据えて「満さんも一度死んだらいいんだよ!」と白石斧の先端を満に向ける。
満「…ま。…まも、る…。」
穣や透も驚く「…。」
穣(…あの護が…)
透(長兄に反抗してる!)
護「俺はね。二度と自分を殺さないって誓ったんだ。名前の通り、まず自分自身を護る。自分勝手だと言われようが何だろうが、俺は自分自身を生きる!」と言い、その斧の先端を三男の歩に向けると「アンタも生きてんだか死んでんだか分かんねぇよな!長兄の顔色伺ってばっかの腰巾着でさ!俺も昔、そうだったけどさぁ!アンタも一回、死んだらいいよ!」
歩「……。」
透と穣、そんな護を唖然として見つめる。
穣(…すげぇ…。)
透(護が、あの護が、こんなに…!)
満、ちょっと焦って「護、お、お前。」
護「まぁここで俺達を止めないと、長兄が管理と十六夜先生に責められるもんな!」
満「護!お前!…昔はそんなじゃ無かった」
護「だから昔の俺は死んだって」
満「昔はもっと優しかっただろう、何でそんな」
護「優しいって、それ単に都合がいい奴なだけじゃん!ていうか、その、人の優しさに付け込んで人を利用する奴って最低だと思うんですけど!」
満「私はお前たちの事を思って」
護「余計な世話じゃー!ってかアンタ自分の事しか考えてないやん!自分の観念、信念を人に押し付けてばっかでさ!人は皆、違うって事がワカランのかー!」
満「護…」ショック
穣(おおお…あの満がショック受けてる。そりゃそうだよなー…)
満「ま、護、お前」
穣、溜息ついて満を指差し、「ホントにコイツは十六夜先生にソックリだよな」
満「私は長兄として」
穣「それ要らねぇよもう。」
護「とにかくここから去って頂けますか!邪魔なんです。」
満「…しかし、…お前達、本当にそれでいいのか。このまま管理に反抗し続ければどんな事になるか。」
護「何で管理の為に自分の心を捻じ曲げなきゃならないんですか」
満「皆、そうやって我慢して生きている」
護「それは貴方がそれを選択して生きているだけの事です。俺はもうそんな生き方は選ばない。」
満「…行くのはいいが、帰ってきた時に、どんな制裁を受けるか」
護「人が心からやりたい事をして、幸せを感じて、なぜそれを責められなきゃならないの?そんな世界ならば見限る」
満「お前は…。」と言い「なぜそんなに強くなった」
護「え。」
満「これが恐くないのか」とタグリングを指差す
護「てか、こんなの付ける管理に絶望しませんか。」
満「…。」
護「例え恐怖があったとしても、それでも俺は自分を生きたい。」
満「お前は…。」と言い、暫し黙ると「本当に一度、死んだんだな…。」
護「まぁそうかもねぇ。」
満「昔のお前はもういないのか…。」と若干寂しそうな顔をして深いため息をつく。
穣、満の表情を見て(…満のこんな顔、生まれて初めて見た…。)
満「…仕方がない。一旦引き上げよう…。」と言い黒船上空のブルーの採掘口にいるメンバーに向かって「タラップ降ろせ!」
ブルーの採掘口から黒船甲板にゆっくりとタラップが下がる。満たちはそれに飛び乗るようにしてブルー船内へ戻って行く。
最後まで甲板に残っていた歩、護に向かって「…別人のようだ。ちょっと羨ましい」と言うとバッとタラップを駆け上がって船内へ戻る。と同時にタラップが上がる。
ブルーは採掘口を閉じつつ上昇する。ちなみにアンバーはブルーと黒船の前方に停まっている。
護、溜息ついて「ふひー…。やれやれ…。」
透「しかし護…。」と言って「ホントに変わったな…。」
護「うんまぁ。でもやっぱり長兄は怖いわい!」
そこへジェッソが「ところで君達どうやってここに来た」
穣「ブルーの上に船を着けてだな。そっからブルーの翼に降りて、黒船の翼に降りて、さらに怪力の悠斗に翼から甲板に押し上げてもらった。」
護「あ。踏み台になってくれた悠斗を回収しないとー!」と言って右翼の付け根の方に走っていく
右翼の付け根では悠斗が胴体に寄りかかって待機中。
穣「ブルーが去ったらアンバーに帰るんで、黒船をちょっと前進させてくれ」と言っている間にブルーは前進しつつ進路を変えて大きく左折するように曲がって行く。
ジェッソ、インカムに「ブリッジ。十六夜兄弟がお帰りなので、アンバーの下に移動してくれ。」
そこへ昴が「兄弟喧嘩、凄い面白かった」
穣「…それは何より!」
暫し後、アンバーの下に黒船が来る。穣たちはアンバーの採掘口から降ろされたワイヤーを使ってアンバー船内へ上がり、戻る。
黒船とアンバーは、アンバーを先頭に再び前進を始める。
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