第19章 01

一方その頃。カルロス達のグループは飲食店が並ぶ通りを歩いている。

悠斗、周囲を見て「小洒落た店ばっかだなぁ。」

上総、道の先に目ざとく店を見つけて「あ、スイーツの店を発見」

マゼンタ「なんだなんだ!アイスかなケーキかな」

カルロス「アイスだ。」

マゼンタ「行く」

上総「行く!」一同はアイス屋へ

剣菱「スイーツと言えば透だ。あいつこっちに来れば良かったのに」

オリオン「アクセも大事なんでしょ。」

剣菱「そういや護はアクセ屋なんか行くような奴じゃ無かったが」

カルロス「今は行きますよ、あいつ。以前、連れていかれた。」

剣菱「護がアンタをアクセ屋へ?」

カルロス「しかも強制的にブレスレット作らされた」

悠斗「な、なんと…」

剣菱「…あいつ本当に変わったな…。」

マゼンタ「アイス屋行こうよ!」

オーキッド「アイスー!」

カルロス「わかったわかった」

オーカー「子供かお前らは」とか言いつつ皆で店に入る。そこは喫茶スペースもあるオシャレなジェラート店。

マゼンタ達はアイスのショーケースの中を見つつ「色々ある!」と目をキラキラさせる。

マゼンタ、店員に「オススメどれですか!」

店員「野菜のシリーズがお勧めです。何か試食してみます?」

マゼンタ「はい!カボチャ!!」

上総「俺、人参のアイス食べてみたい」

オーカー「俺トマトにしよう」


剣菱と悠斗とカルロス以外のメンバーは、コーンに盛ったアイスを手に持って、食べながら店から出て来る。

マゼンタ、カボチャとトマトのダブル盛りジェラートを食べつつ「健康的なアイスだ」

大和はチョコのジェラートを食べつつ「食べ歩きだー!」

カルロス「そういや有翼種は飛びながら食べるのは禁止らしい」

大和「そうなの?」

カルロス「食べながら移動する時は、地上を歩けと。」

悠斗「上からアイスとか落とされたら困るしな」

大和「あ、なんか出店がある」と街角の小さな露店を指差す

カルロス「妖精クッキーだ。」

大和「ナニソレ」

カルロス「行けば分かる。」

一同、その店の前へ。見れば一口サイズの小さな妖精の形のクッキーが売られている。

マゼンタ「マジで妖精クッキー!」

カルロス「お前ら食べるんだろ。買ってやる。」

オーキッド「やった」

マゼンタ「サンキューです!」

悠斗、その様子を見て「なんか、親子みたいだなぁ」

すると剣菱が「せめてお兄さんにしようや」

悠斗「ああー。いいお兄さんだ。」

カルロス「…。」財布から小銭を出しつつ店の人に「ごちゃまぜ袋を二つください。」

店員はクッキーを入れた紙袋を二つカルロスに渡し、「飛びながら食べないでね…」と言って「あらまぁ」と驚き「人工種さんだった」

マゼンタ、剣菱を指差し「人間も居ますよ!」

店員「あらまぁ人間と人工種が一緒に散歩?」

カルロス「そんなもんです」

店員「じゃあオマケに一袋あげちゃおう。どうぞ!」と紙袋を差し出す。

カルロス「え。いいんですか?」

店員「和解の印って事で」

オーキッド「やったぁ」

マゼンタ「ありがとー!」

店員「ようこそイェソドへ!楽しんでねー」

マゼンタ達「はぁーい!!」

カルロス「ありがとうございます。」と言い紙袋を受け取ると、剣菱に「どうぞ。」と袋を一つ渡す

剣菱「おお、ありがとう」

カルロス「…アイス食ってる連中の分は私が持っててやる」と言い、紙袋を開けて「取って」と上総達の前に差し出す。上総やマゼンタ、手を突っ込んでクッキーを取る。

上総、丸い妖精の形のクッキーを見て「カワイイ!」

オーカーも「カワイイ」

大和「ゴツゴツ妖精が来た」

カルロス「これ妖精ごとに味が違うからな」

剣菱、クッキーを見て「これは食べるのが可哀想になるほどカワイイクッキーだな」

悠斗、1つ食べると「しかも美味い。」と言い剣菱が持つ袋から妖精クッキーを3つ取り出すと、一気に口の中へ。

剣菱「三匹一緒に食うなや、可哀想やん」

悠斗、モグモグと食べながら「だって小さいから口に入るんですよ。」



所変わって、ジェッソと穣。レイモンドの道具屋にて。

レイモンドはケテル石で出来た普通の大きさのスコップをジェッソに渡して「これはどう?」

ジェッソ、スコップを持つと「これは持ちやすい。さっきのと同じなのに持った感じが違う。」

レイモンド、横の壁に立てかけたスコップを手に取り「形は同じだけど石が違うんだ。」

穣「へぇ…。」

レイモンド、ジェッソに「貴方に斧を持たせたら太い鉱石柱を一気に切れそうだけど」

ジェッソ「私はスコップがいいのです。かなり大きなスコップが」

レイモンド「どの位の?」

ジェッソ、腕を広げて「この位の幅があるといい」

レイモンド「そんなに?」と驚いて「そんな大きなスコップは作った事がないなぁ。でも石を持ってきたら作るよ」

ジェッソ「つまり自分で採って来ると」

レイモンド「大体の人は自分で採って持ってくるけどね。別に石屋で買ってきてもいいよ。要は自分に合う石に出会えばいいんだ」

穣「出会う?」

レイモンド「うん。石と共鳴するというか。惹き合う」

穣「もしその石がスゴイ高かったらどうするの」

レイモンド「どうしても欲しいなら頑張って買うだろうし、諦めるなら別の出会いがあるし。」

穣「なるほ。じゃあ行こうか、石屋巡りに」

ジェッソ「うん。」と言い「あ、スコップを作るにはどの位の大きさの石が必要なんですか」

レイモンド「作りたいスコップの大きさより、やや大きく…書いた方がいいな。」と言いペンを取る。

ジェッソ「ちなみに、費用はどの位かかりますか」

レイモンド「あー…。大きなスコップ…。持ってきた石の大きさによるなぁ。普通のスコップだと基本3000ケテラで作るけど。じゃあ普通のスコップの何倍の大きさかって事で考えて、大体1万5000かな?とりあえずは」

ジェッソ「了解しました。」

穣「…頑張って稼がないとなー。」

レイモンド、ふと「あ、そうか。」と言うと「…まぁ代金は後払いでもいいし。」

ジェッソ「今後また有翼種の皆さんと一緒に採掘すると思うので、資金が貯まったらその時に。」

穣「まずは石屋でどんな石がどの位の値段なのか見てきます。」

ジェッソ「でもお蔭でイェソドでの個人的な目標が出来ました。」と微笑む



その頃、本屋に行った昴たちは。

…本屋は二階まで吹き抜けの建物で、一階から二階が見えるようになっている。

総司、店内を見つつ「天井が高い…。吹き抜けはいいけど、二階の床に柵も何もないぞ。」

リキテクス「つまり落下防止っていう概念が無いんだな。」

有翼種達は、一階と二階を飛んで移動している。

総司「むしろ一階から二階に飛んで行ってるしな!」

店の中に何本か立っている太い石柱も本棚になっていて、ちょっとした足場がついている。

リキテクス「柱についてる足場も、本の落下防止であって人の落下防止じゃないな」

総司「うん。…ていうかこの本棚の柱の上の方の本、俺達はどうやって見れば…。」と言いつつ上を見上げて「せめて梯子を…(汗)」

リキテクス「店員さんに頼むしかないな。流石は飛べる人々の本屋だ…。」

と、そこへ良太が「お!これ船の雑誌だ」と言い傍らの本棚の雑誌を手に取る。

リキテクス「おー」と良太が持つ本を見る。

良太、パラパラとページをめくりつつ「…お、エンジンだ。この本、買おうかな」

昴は「…それより鉱石図鑑」と言い、リキテクス達から離れる。

すると夏樹が「あ、あそこじゃないか」と角の本棚を指差す。

昴、そこへ駆け寄り「あったあっ…た、けど…。」

そこには鉱石図鑑コーナーと言えるほど鉱石の本がズラリと並んでいる。

夏樹「こんなにあるのか!」

昴「イェソド侮れない。…どれ買えばいいのー」

夏樹「店員さんにオススメを聞いてみよう。」


近くの食料品店では、ジュリアとアキが野菜類を見ている。

ジュリア「野菜が沢山!有翼種って野菜好きなのかしら」

アキ、瓢箪のような野菜を手に取り「え!これカボチャなの」

ジュリア「面白い形のカボチャね!どんな味なのかな」

すると近くに居た有翼種の買い物客が「それ、甘くて美味しいわよ。スープに最適」

ジュリア「これ使い方や保存は普通のカボチャと同じですか?」

有翼種「ええ。切ったらワタを取って冷蔵庫がいいわね」

ジュリア「ありがとう」

アキ「よしこれ買って行こう。」

ジュリア「私も」と手に取る

アキとジュリアは店内を歩きつつ、あちこちを見て「…それにしても意外に色んな食材揃ってるのね。まぁ流石に海のお魚は無いけど。」

ジュリア「でも海苔やワカメみたいな乾燥させた海の幸はあるから、飛んで海にでも行ってるのかしら」

そこへアキが「あれ。見て!なんか石が売ってる」と棚に色々な石が置いてあるコーナーを指差す。

中和石や麦飯石などが置いてある。

アキ「スーパーで中和石売ってる!」

ジュリア「あら麦飯石」と言い卵サイズの丸い石を手に取ると「これ水に入れておくと、水が美味しくなるわよ。」

アキ「え!そうなの」

ジュリア「その水でご飯を炊くと、ふっくら美味しく炊きあがるし」

アキ「それ買って行く!」


少し離れた所の服飾店では。

ネイビー、スカートを手に取って見つつ「やっぱ有翼種って飛ぶから、中までオシャレにすんのね」

シナモン「中って?」

ネイビー、スカートの裏地を見せて「こういうトコよ。下から見てもオシャレっていう。」

シナモン「そっかー!」

シトロネラ「丸見えだもんねぇ。」

ネイビー「あたし好きだなーこういうカッコイイ系」と言い洒落たデザインのスカートを手に取ると「裏地すごいキレイなんだけど、でも飛ばない人には何の意味も無いっていう」

メリッサ「チラ見させたら?ちょっと裾をまくってみるとか」

シトロネラ「それ誤解されそうじゃん」

メリッサ「誤解から始まる付き合いってのもあったり?…大体、恋愛なんて誤解オンパレードだし」

シナモン「えぇー!」

シトロネラ「…愛恋なんて誤解ばっかよ。夢なんか見ちゃダメ」

シナモン「そんなぁ」

シトロネラ「シナモンちゃん、まだ恋愛に夢を見るお年頃だから」

ネイビー「私もまだ夢見てるわよ。よし、私、誤解から始まる付き合い狙おう!これいくら…あ。高かった…。」値札見てガックリ

メリッサ「残念!」


さらに雑貨屋の中のインテリアコーナーでは。

バイオレットとアメジストが家具を見ている。

アメジスト、小さな可愛いソファに座って「こういうソファ欲しいなー。」

バイオレットもソファに座ると「いいよねー。こんなテーブルでゆっくりお茶してさ」

アメジスト、ため息ついて「広いアパート引っ越したいなぁ。今、寮だから」

バイオレット「あの寮の部屋、狭いよねー。私、去年アパートに引っ越したもん」

アメジスト「いいなぁ。でも私、今年、黒船に入ったばっかだから、引っ越しとかする余裕ないし。それに引っ越しの手続きって凄い面倒みたいだし。」

バイオレット「そう!すっごい面倒だよー!物件探すところからもうホントに面倒!あれ絶対、霧島研が締めてるんだよ。簡単に引っ越しさせないように!」

アメジスト「だから落ち着いてからにしよ。今こんな状態だし、今後どうなるかわかんないし」

バイオレット「何ならイェソドに住んじゃえ」

アメジスト「え。」

バイオレット「今後、イェソドに住めるようになるかもよ?」

アメジスト「…あー。それはあるかもー。…でもそうしたら、どうやって黒船に通勤するんだろう私。」

バイオレット「……それはー…、あれだ、小型船持って黒船まで通うとか!」

アメジスト「でもアレよね、ほんとにさ。今後イェソドに住むっていう選択肢も出来るかもだよね。」

バイオレット「うん」

アメジスト「…自分が住みたい所に住めるっていいよねー…。」

バイオレット「うん!だからあの頭ガチガチな霧島研、なんとかしよ!」

アメジスト「ねー!」


その雑貨屋の中の家電製品のコーナーでは剣宮と健が掃除機を見ている。

剣宮「これ掃除機かー。ゴミどうやって…あ、ここ外すのか」と言いゴミパックを外すと「掃除機の仕様ってどこも同じようなモンだな」

健「何だこのエネルギー調整器って。」と展示品の細長い棒のようなものを手に取る。

剣宮、パンフレットを手に取り「イェソドエネルギーが貴方の翼のエネルギーを…」と読んで健に「それスイッチ入れないで!」

健「うん大丈夫」

剣宮「なんか翼を癒す奴みたいだ」

健「へぇ。」

剣宮「家電製品から無防備にイェソドエネルギーが出るとは…。やっぱイェソドって人間にとってはオッカナイ世界だ…。」


そして隣のアクセサリーショップでは

護、駿河に「…まさか駿河船長が一緒に来るとは思わなかった。」

駿河「何となく行きたいと思いました。」

透「護がアクセ屋ってのも驚きだけどね」

マリア「宝石屋にも入っちゃうし!」

ターさん「うん。アレは俺も驚いたよ」

護「え。ターさんも驚いたの?」

ターさん「だって一番高い老舗の名店に入って行くしさ。」と言い「とりあえず何作る?この店、イヤリングとかペンダントも作れるよ」

マリア「私、イヤリングとブレスレット作る」

透「俺もそうしよう。」

護「え。透、イヤリング作るの?」

透「うん。護も作ろうよ!」

護「い、イヤリングかぁ…。」と言い「船長はどうします?」

駿河「ブレスレットだけ作ります。」

マリア「イヤリングは?」

駿河「それはちょっと。」

護「じゃあ石を選ぼう。」

透、棚にズラリと並んだ天然石ビーズの入った瓶を見て「こんなに沢山種類がある店、初めてだ。」

マリア「どれにしようかなー」とビーズの入った瓶を眺める。そして「あ!イェソド鉱石があるー!」

護「そうなんだよ。でもちょっとヤバイかも」

マリア「ヤバイかなぁ…。イヤリングとかダメ?」

駿河「…管理に見つかると大変な事になるよ」

マリア「ですよね…。やめます。」

駿河「あのー、オブシディアンどこかな」と棚を探す

ターさん「どんなオブシディアンがいいの」

駿河「どんな…というと」

護、棚から瓶を取り出しつつ「例えばこれは見る角度によって金色に輝くオブシディアンで、こっちは虹色に輝く。赤みがかったものや、斑点があるのもあるし」

駿河「へぇ…。」と言い「オブシディアンの船長してるのに全く知りませんでした…。」と言い、「とりあえず真っ黒な奴にします。」

護「オブシディアンだけにするの?」

駿河「そのつもりだったけど…。何か混ぜた方がいいの?」

護「いや、一種類でもいいけど。」

透「ビーズの大きさはどの位にします?」

駿河「え。そうか色んな大きさの玉があるのか」

透「大きさによって値段違うので注意ですよ。」

駿河「なるほど。…うーん…。じゃあ小さい玉で色んなオブシディアンを混ぜよう。」と言い、種類の違うオブシディアンの小さなビーズが入った瓶をいくつか手に取る「決まった。」

ターさん「じゃあこっちへ」と店の奥へ駿河を連れて行く。

護、マリアと透にコソッと「あの人、オブシディアンのブレスレット作る為に一緒に来たんだな。」

透「だねぇ」

マリア「ねぇ剣菱船長に、アンバーのブレスレット作ってあげようか」

透「いいね!」

護「んじゃ俺が作る。」