第7章 02
翌日…
採掘船本部の駐機場に停まっているアンバーの船内。
採掘準備室に、剣菱をはじめメンバー達が全員集まって、穣の話を聞いている。
剣菱「ほぉぉぉ…なんか目が丸くなるような話だが」
マゼンタ「丸くなってる」
マリア「管理が捜索をやめたのはそういう事だったのね…。」
穣「って事で、あのカルロスも突っ込んで行ったんですから、我々も突撃しましょう!」
マゼンタ「え。」
悠斗「なんで…。」
穣「だってこのままじゃスッキリしねぇし。」
透「有翼種の所まで、どの位の距離があるんだろう。」
マリア「カルロスさんが歩いて行けると判断した位の距離じゃない?」
悠斗「でも有翼種の所に行く途中で野垂れ死んでたりして」
穣「とにかく行ってみないとわかんねぇー」
アキ「何がどうでも行きたいわけね…」
透「…広い世界で採掘したいから?」
穣「そう!俺ずっとそう思ってた!だから外地にはみ出した!もっと広い世界にでたーい!管理のご機嫌伺いながらチマチマ採掘するのはもう嫌じゃー」
透「気持ちは分かるけど…。」
穣「ええやんカルロスと護に事情聴取に行くって事で管理に大義名分も立つし。」
悠斗「立てた瞬間へし折られそう…」
穣「とにかく船長!」
剣菱「んん?ん…。」と言って「管理にメッチャ怒られるから、行きたくない。」
穣「ええ!?」
アキ「行かないの?」
ネイビー「船長!」
剣菱「だって俺の首が危ないべ。」
穣「首は俺が差し出しますので!」
剣菱「航空管理の管理波が無いから遭難するかも」
マリア「私、頑張ります!」
オーキッド「でもちょっと怖い…」
剣菱「な!怖いわな」
バイオレット「怖いことは怖いけど…行ってみたい気もする。」
剣菱「うん。強がっちゃアカン。怖いときは、恐々行くんだ。」
穣「え。行く?」
剣菱「そう!怖いけど行く。ぶっちゃけ俺はスンゴイ恐いー!」
良太「ですよねぇ」
剣菱「怖いけどな、今のままってのも嫌なんだ。…だから挑戦してみるか!」と言い一同を見て「どうしても嫌だって奴には有休取らせてあげるから無理すんな。」
悠斗「なんですと有休ですと」
マゼンタ「それはちょっと心が揺れる」
良太「ところであのー。」と言い「その死然雲海ってのを突破する為に、鉱石弾を撃つんだよね。」
剣菱「なぁ機関長、あれ、撃てるのか」
良太「というより、撃ってみたい。」
剣菱「なるほど。」と言い「すると船を一旦メンテに入れなきゃイカンなぁ。」
良太「撃つ為のイェソド鉱石も大量に要ります。」
穣「それは採る!」
ネイビー「…そもそも撃ち方わかんないんですけど…。どこ操作したら撃てるのそれ。」
剣菱「…。うーん…。」
暫しの沈黙
剣菱「…まぁ、護はドンブラコと流されて行ったし、カルロスさんは黒船を捨ててまで行っちまった…」と言い「我々も何かしよう!」
透たち「はい!」
剣菱「じゃあまず、整備に鉱石弾の事を聞いてみよう。」と言い階段室の方へ歩いていく
暫し後、船長室付近にメンバー達が集っている
剣菱、受話器を置いて「うーん鉱石弾のメンテに少なくとも3週間以上かぁ…。」
良太「まぁそうですよね、かなり大掛かりな作業になるから。」
剣菱「どうしたもんかー。」と言い「そんな長期間、休めんし…。」
良太「しかも鉱石弾のメンテってのが管理にバレたら、そんなのいいから採掘に戻れと言われそうだ。」
剣菱「んー…。」
暫し皆で悩む。
そこへ穣が「…アンバーが行方不明になると多分、黒船が出動しますよね。」
剣菱「多分な。」
穣「黒船が来てくれたら、この間みたいに探知で連結してかなり遠くまでいけるんだけどな。」
マリア「あ!そっか!黒船が管理の船と繋がっててくれたら」
透、穣に「そういや黒船の上総君に周防先生の話、伝えたの?」
穣「うん。メールしといた。でも特に音沙汰が無い。」
そこへ剣宮が「あのー。」と言い「管理が護さん達の捜索を諦めたのは、有翼種と接触したくないからですよね。なら黒船と一緒に向こうまで行っちゃえば、管理は付いて来ないかも。」
マゼンタ「でも、黒船が途中で引き返したら?」
剣菱「するとウチの船は外地で孤立しちまうがぁー…」と頭をかいて、ため息ついて「まぁでも船一隻行方不明になって捜索中止って事はないだろうよ。だから必ず管理は来る。つまり帰る方向の目印がウロウロしててくれるって事だよな!」
マリア「はい!」
剣菱「あと黒船がどこまで付いて来るかは…もう黒船さんにお祈りするしかないって事で」
悠斗「オブシディアン様…」
剣菱「そもそも管理の奴ら、護とカルロスさんが生きてるのに何で探しに行かない!『管理』の癖に!」
マゼンタ「そうだよこんな首輪つけといてさ!」
透「職務放棄だ!」
剣菱「だから、ウチの船が頑張って行くんだよ!」
一同、ウンと頷く
剣菱、マリアに「マリアさん、あんたが頼みだ」
マリア「はい!お任せ下さい!」と嬉しそうに言う
剣菱「よし!じゃあ…いつ行く?」
一同「…。」
穣「あ、黒船の出航日と合わせた方がいい。あっちが休みの時に俺達が出ると、来てもらえない。」
剣菱「そうだな。よし、そうしよう。」
一方、イェソドでは。
死然雲海の中の浮島にて雲海切りの練習をしているカルロス。その近くで妖精と一緒にケテル石を採っている護。
カルロス、黒石剣を振って雲海を切る。霧が晴れて周囲の景色が見える。
ターさん「上手い!そうそうそんな感じ!」
カルロスちと疲れ気味で「やっと何とか雲海は切れるようになってきたが…。探知の方がな…。」と言いつつ探知をかけて「ああもぅ…売れる石がわっからーん!」と叫ぶ
そこへ護が来て「ターさん、木箱が一杯になっちまった。」
ターさん「じゃあ街に売りに行こうか。」
カルロス「私の探知より、護の勘の方が売れる石を探せるという…。」
ターさん「まぁそれはねぇ…。」と言い「貴方ちょっと、人型探知機っぽいんだよね。」
カルロス「はい?」
ターさん「何というか、広範囲で凄く正確なんだけど、んー…、もうちょっと繊細にならないと。」
カルロス、護を指差し「するとコイツは繊細だと?石茶の美味しさもワカラン癖に」
護「石茶は…まぁお茶だよね!」
ターさん、カルロスに「そう貴方、石茶の美味しさが分かるって事は繊細なんだよ。だから売れる石は…、うーん。」
カルロス「仕方ない、また街で売れてる石を見て勉強してこよう。」
ターさん「うん。色んな店で色んな石を見るといいよ。」
護「まぁ美的センスを磨こうって事かな!」
カルロス「ウルサイ」と護を睨む
ターさん「じゃあ木箱に乗ってー!」と言い、2人が乗った木箱を吊り上げつつ「しかし木箱すぐ一杯になるなぁ…。最近、街に売りに行ってばっかのような気が」
護「スマン。俺達が船を買うまで頑張って!」
ターさん「うん。まぁでも君達が来て楽しくなったよ」
護「あの家に一人で暮らすって寂しいだろ?」
ターさん「いや、基本あんまり家にいないし、たまに仕事仲間も来るし、妖精もいるから寂しくはないけど…。」と言い「…まぁ…いいや。」
護「なに?」
ターさん「その、…実は」と言い、言い難そうに「俺、彼女がいるんで。」
護「ほぉ」
ターさん「…連れて来れないんだな。」
護「あああああ!」
ターさん「いやいいんだよ、君達と一緒に暮らすの楽しいし!最近、頻繁に街に行くし、その時に会ってるし」
カルロス「護。ちなみにお前はいるのか」
護「ほぇ?アンタこそどうなん?」
カルロス&護「……。」
護「とにかく船持ってターさんの家からとっとと出ないと。」
カルロス「うむ。できればデカイ船が欲しい…。」
暫し後、ケセドの街にて。
石屋から出て来るターさんと護とカルロス
護、ちょっとクッタリ気味に「何か今日は評価が厳しかった…。」
ターさん笑って「ハードル上げたのさ。期待してる証拠だ。」
護「俺達の採った石は散々だったけど、ターさんの石はいつも通りの高値取引。」
カルロス「…ターさんの採る石と我々の採る石の違いがイマイチワカラン」
ターさん「さて。じゃあ…どうしようか」
護「俺とコイツは街で買い物してくるからターさんご自由に!」
ターさん「え。」と言い「そしたら…夕飯も別々でいいかな。8時頃にここで会おう。んで向こうの家に戻ると」
護「了解!行こうカルさん」と走り出す
カルロス、護を追いつつ「か、カルさん?!」
鉱石や石材の問屋や宝飾店等が軒を連ねる石屋街を歩いているカルロスと護。色々な店に入って様々な石を見る。
護は喜々として石を見ているが、カルロスは難しそうな顔して護の後を付いて歩く。
カルロス、護を見つつ(ほんとコイツ、石が好きだな…。それにしてもこんなに石があるとエネルギーが何が何やらで…。…お!)視線の先に、一軒の石茶カフェが目に入る。
カルロス、護の肩をつつくと「護、石茶カフェ行こう」
護「え、ちとまってこのアクセサリー屋入ってから」と目の前のアクセ屋に入って行く。
見ればそこは実にカワイイ感じの店。カルロス、(…よくこんな店に入れるよな!)と思いつつ渋々と入って行く。
すると護がカルロスに「カルさん!ブレスレット2本作ると1本無料だって!」
カルロス「はぁ?」
護「自分で石を選んでブレスレット作れる。安いから作ろう!」
カルロス「……。」(女の子かお前は!…男2人でこんな店…。)
護は石の入ったビンを手に取って見ながら「俺はやっぱアンバーだな!カルさんはオブシディアン?」
カルロス「作るとは言っていない…。」
護「俺が勝手に作る。アンタ要らないなら妖精の耳にでも着けちゃう。」
カルロス「…。」
護「俺、青が好きなんだよな。自分の髪の色だから。あ、これもいいな。…よし、これにしよう!」と言いつつ青い石の入ったビンを手に取ると「カルさんは」
カルロス「私のはいい」
護「こういう時にセンスを磨くんだよ!」
カルロス「は?」
護「自分が魅かれる石を直感で探す!多分アンタがいいなぁと思う石が売れる石なんだと思う」
カルロス(…一理あるような無いような。っていうか店員の子が笑ってるぞ、オイ!!)と思いつつ
カルロス「まぁわかった。…作るか…。」
護「じゃあその間にこれ作ってもらおう。」と言い、天然石のビーズが入ったビンを店員に渡して「これ、お願いします」
店員「はい。」
カルロス「…お前、何にしたんだ。」
護「アンバーとアクアマリン。直感で選んだ。」
カルロス「へぇ。」と言うと「じゃあ…まぁ、私は。」と言い棚に並んだ様々な石をじっと見てから「これとこれで。」と石の入ったビンを二本、店員に渡す。
護「オブシディアンと…カルセドニー?」
カルロス「何となく選んだらそうなった!」
暫し後、店から出てくる二人。
護、手首に着けたブレスレットを見つつ「1000ケテラで、いいのが出来たー」
カルロス、護の腕を掴んで引っ張るように歩きつつ「…とりあえず石茶カフェ行こう。しかしお前ああいう店よく行くのか?!」
護「以前は絶対行かなかったよ。でも末子の透がああいう店好きでさ、俺は」
カルロス「わかった。今の私のように渋々付いて行ってたんだな!」
護「うむ」という会話をしつつ石茶カフェに入る。空いている席に座る。
店内には数人の有翼種がいて、護たちをチラチラ見る。店員がやってきてメニューを置く。
護、それを見て(うわ!ここ1500ケテラの石茶がある。まさかカルさん…)とカルロスをチラリと見る。
カルロス、店員に「オススメの石茶はどれですか」
店員「今日のオススメはこちら」と言いメニューの一番上に大きく書かれた600ケテラの「元気石茶」を指差す。
カルロス「元気石のは家でよく飲んでるから変わったのが飲みたいな」
店員「今日の元気石はかなりエネルギーが高いですよ。でも変わったのが飲みたいなら…。」と言いカルロスを見て「貴方に合った石茶を調合しましょうか。」
カルロス「それ、是非お願いします。…でもあの。お値段は…。あまり高い石を使われると」
護(…よかった。)
店員「ではオススメと同じ600ケテラでお作りしますね」
護「じゃあ俺はオススメの元気石茶で。」
店員「はい。今お持ちします」と言い去っていく
カルロス、ため息ついて「採掘師なのに高い石茶が飲めないとは…。」
護「俺達、ここでは駆け出しだから」
カルロス「…向こうに残して来た貯金が気になる。アレがあれば高い石茶も船も買えるのに」
護「向こうで船買って持ってくるか」
カルロス「お前、操縦できるのか」
護「いや。誰か操縦士スカウトするとかさ」
カルロス「すると人工種3人かー。ターさん困るから家が必須だな」
護「またはそこそこデカイ船を買って船で暮らすとか」
カルロス「まぁとにかく船にしろ何にしろ向こうに戻ると管理がな」
護「なー。またコレに締め付けられる」とタグリングを指差す
カルロス「ここで頑張るしかない。しかしここの採掘の探知は…。難しい…。」と言って腕組みして足を組む。
と、そこへゴツゴツした妖精がカルロスの膝にポンと乗る。
カルロス、ふとさっき作ったブレスレットを自分の手首から外すと妖精の耳に着ける。
護「かわいくなった。」
妖精「???」そして耳からブレスレットを外そうとする。
カルロス「…要らんかー。」とブレスレットを外す。そこへ店員がやってきて「お待たせしました」と石茶のカップを2人の前に置き「ごゆっくり。」
カルロス、石茶をゆっくりと口に含むと「美味い…」と幸せそうな顔をする「これ本当に美味いな。何だか安らぐ。これはいい。」
護も石茶を口に含んで「うん。美味しい」と言いつつ内心、(これで600ケテラは高いなぁ)
カルロス、護に「ちょっとそっち飲ませろ」
護「ほい」とカルロスとカップを交換する。カルロス、護の石茶を口に含むと「ん。これはまたちょっとクールな。」と驚き「確かに家で飲む元気石茶とは違う。」
護、カルロスの石茶を飲んで「うん、…同じだ。」
カルロス「お前、違いがワカランのか」
護「どっちも美味しいよ」
カルロス「それ返せ」と言いカップを交換して自分の石茶を飲むと「やっぱりこっちがいい。」とニコニコ
そんなカルロスを見て、ふと、護が「…なぁ、カルさん。」
カルロス「カルさんじゃない。カルロスだ」
護「アンタ、石茶用の石なら、売れるものを探知できそうな気が。」
するとカルロス、ハッ!と驚いて「…そうか!なるほど!美味い石を自分で採ればいいのか!」
護(…う、美味い石?…ていうか売れる石…。まぁいいや!)
そして8時すぎ。
待ち合わせ場所の石屋の前にて。ターさんが待ってる所にカルロスと護がやってくる。
護「ターさんお待たせ!」
カルロス「飯屋でコイツがサラダをお代わりしすぎてちと遅くなったスマン」
護「だってサラダ食べ放題だもんよ。アンタは石茶飲みまくりやん!」
カルロス「だってお茶各種、飲み放題だもんよ」
ターさん「ねぇ君達、ちと事件が起きたよ」
護&カルロス「?」
ターさん「さっき役場の人が俺の所に来てさ、人工種に会いたいという人がいるから明日、君達をコクマの街に連れてけと言われて。」
護&カルロス「!」
護「…何の用事だろう?」
ターさん「さぁねぇ。ちなみにコクマの街って俺、行った事がないんだ。」
護「あら。」
ターさん「かなり山の上の方の街でさ。…ともかく今日は君達、宿に泊まって。部屋とっといたから。」
カルロス「じゃあ石茶を飲もう」
護「ってアンタ。飲み過ぎやん!」と言い「ターさんは実家でごゆっくり!」
ターさん「ん?うん」とちと照れたように言うと「はい、これ君達の新しい身分証明書」と言いカルロスと護に身分証明書を渡すと「これでコクマの街にも入れる。今までのは明日、コクマの役所に出せって。」
護「おお…。」と証明書を見てから「宿は、この間の所?」
ターさん「うん同じ所。じゃあ明日の朝8時にまたここで」
カルロス「こんな事なら本屋で石茶の本を買ってくれば良かった」
護「あれ高いやん!」
カルロス「護。…買っちゃダメか」
護「アカンよ。今日の宿代も増えちゃったし」
ターさん「…図書館で借りるって手があったけどもう閉まったな」
カルロス「くぅ。…仕方がない今日はもう寝てやる。」とテクテク歩いていく
ターさん「…随分、石茶にハマっちゃったねぇ…。」
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