第16章 03

3隻は暫し雲海の中を飛ぶ。探知4人は探知しっぱなし。

上総「なんか雲海のエネルギーが…。」

ドゥリー「あ。後ろの船の視界を見易くしとかないと」と言い飛んで後方に向かって雲海切りをする。

ドゥリー「コレ、柱がある所は2人で雲海切りしてもきっついなー。」と言うと、マリアと上総に「後で手伝って。私か、この人に同調して」とカルロスを指差す。

上総「同調と言っても」

ドゥリー、自分の黒石剣を指差し「黒石剣にエネルギーを入れるってイメージするといいかな。雲海を切るイメージでもいいけど。」

上総&マリア「はぁ」

ドゥリー、インカムに「この辺で速度緩めて!」

ネイビー『はい!』

そこへカルナギが「次はあの黒い船に載せるから、移動しないと…あ。」と言って穣をみると「アンタ、バリアラーなんだよな」

穣「うん」

カルナギ「連れてくわ」と言い背後から穣を抱えると、若い有翼種の採掘師の男の子に「タク!台木の木箱を頼む!」

タク「はい!」と言い台木を入れた木箱を吊り下げて飛ぶ

カルナギ「じゃあ黒船に移動!」

ドゥリー、有翼種の女性採掘師に「フィル!マリアさん連れてって。同調の練習するから」と言いつつ上総を抱えて飛ぶ。

フィルはマリアを、有翼種トゥインタはカルロスを、ターさんは護を連れて黒船に移動。

カルナギ、穣と共に黒船の甲板に降りつつ「今からコッチにデカイのを採って載せる!」

ドゥリー、耳に着けたインカムを指差しつつ、ジェッソに「黒船の通信機を貸してー」

ジェッソ、自分の耳からインカムを外して「どうぞ」とドゥリーに渡す。

ドゥリーはアンバーのインカムに「今から黒船を前に出すから、アンバーは黒船の後ろについて飛んでね」と伝える。

ネイビー『はい!』

ドゥリー「んじゃ通信機を取り換える」といいアンバーのを外す。

穣「アンバーのは俺に」

ドゥリー、アンバーのインカムを穣に返して黒船のインカムを付けると「ドゥリーでっす!黒船の人、宜しく!」

総司『総司です、宜しく』

そこへカルロスが「なんかすっごい雲海が濃くなった…。」

ドゥリー、ちょっと飛んで、後方の二隻の視界確保の為の雲海切りをする。

マリア「私もう探知出来ません」

ドゥリー「んじゃちょっと休んでて。」

ターさん「まぁここ、大死然の手前だしね」

カルロス「…大死然ってどんだけ濃い所なんだ」

ターさん「それはいつかのお楽しみ!」

上総「すみません、俺も探知出来ないので休みます。」

するとカルロス、上総に「ダメだ。お前は気合で探知!」

上総「なんで?貴方の後継機だから?」

カルロス「うん」

上総「じゃあ俺も黒船から逃げちゃお」

カルロス「え。」と言うと「お前そんなに黒船が辛かったのか」

上総「辛くないけどアンタの後継機だし!」

そこへドゥリーが「なにその後継機って。」

カルロス&上総「え。」

カルロス「弟子というか後輩と言うか」

上総「跡継ぎというか」

カルロス「ああ、跡継ぎかもな」

上総「かもなってアンタ散々俺に黒船の探知をしろって!」

カルロス「ああー言いました。…上総お前ちょっと恐いぞ」

上総「何がですか!」

ドゥリー「さてさて」と言うとインカムに「ここで停止、ゆっくり止まって」

総司『了解』

アンバーとブルートパーズも黒船の後方、やや上方近くに並んで停まる。

そこへ上総が「でもカルロスさん優しくなりましたよね。」

カルロス思わず「はぁ?」

そこへ護が「昔のカルさんってどんなだったんだろ」

穣「昔のお前よりガッチガチで超絶真面目」

ジェッソ「冷徹な、まさに人型探知機」

カルロス「…はぁ。」

ドゥリー、カルロス達に「探知の皆、出番だよ、柱の周りの雲海を切るよ!」と言い上総とマリアに「そこの二人は黒石剣に集中してね!」

上総&マリア「はい!」と言って黒石剣に力を注ぐ

ドゥリー「じゃあ雲海切り行きまっすー!3、2、1、ゼロ」カルロスとドゥリーは雲海を切る。

一瞬、部分的に雲海が切れて柱が見えるが一瞬でまた雲海に戻る。

カルロスたち「?!」

ドゥリー「切れなかったぁ」

カルナギ「あの柱、相当濃いのを纏ってんな」

ターさん「しかもデッカイしね」

ドゥリー「思ってたよりデカかった」

カルロス「探知した時より大きいぞ…?」

ドゥリー「雲海が濃すぎて正確に探知出来ないんだよ」

カルロス「そんな」

ドゥリー「雲海のエネルギーをナメちゃいけないなぁ。ここは大死然境界の手前だぞぅ」

カルロス「…大死然境界…」

カルナギ「あれは一本採りだな。切らずに一本丸ごと採る。」と言うと、一同に「最大の台木を真ん中に置いとこう」と言いつつ木箱から台木を出して並べはじめると、ジェッソ達に「本当はこの固定ベルトで柱に台木を固定するんだが、もしかしたら巻けないかもな。」

ジェッソ「その場合は直接甲板に留める。」

カルナギ「うん」と言い「活かし切りの後、あの柱を船側に倒すから、バリアとか怪力の人は柱受けの準備を宜しく!」

穣やジェッソたち「了解」

ドゥリー「とにかくもう一回だー、思いっきり思いっきり、切る!」と言い「サポートの人も思いっきりイメージで一緒に切る!じゃあ、行っくぞー」と言うと「3、2、1、ゼロ!」

バッと雲海が切れて巨大な鉱石柱が現れる。すかさずカルナギがピーッと笛を吹くと同時に一気に有翼種たちが活かし切りをするが、その間にも霧がかってくる

ドゥリー、カルロスに「ヤバイと思ったら雲海切りしていいから!」と言って霧を黒石剣で薙ぎ払いつつ活かし切りをする。カルロスも軽く雲海切りをする

カルナギ「護!船から落ちろ!下を切れ!」

護「えぇ俺もこれ切るの」

カルナギ「太くて切る人手がちょっと足りねぇ!下行け」

護「じゃあ、落ちまーす」と言いバッとブリッジ方面に飛んでそのまま船から落ちる。


その頃の黒船ブリッジ

駿河焦って「マジで落ちた!この高さだぞ、大丈夫なのか?!」

総司「…浮き石はあるけど」と言いインカムに「ドゥリーさん!」

するとスピーカーから『大丈夫だよー、彼は練習したから』

駿河と総司、同時に「ビックリした…。」

スピーカー『今からあの柱を丸ごと載せるから、船のバランス気を付けてー』

総司、インカムに「はい」

駿河「あれを丸ごと載せるって」

総司、不敵な笑みを浮かべて「ふ…操船し甲斐があります!」

駿河、ボソッと呟く「いいな操船したかったな」

総司「え」

駿河「いや何でもない」


甲板では。

穣「しっかし護もよく落ちるわな、この高さから」

カルロス、笑って「私も練習したぞ、この高さから!」と言い「浮き石があるとはいえ、最初は結構恐い!」

ターさん「顔がひきつってたもんねぇ!絶叫してたし!」

穣「それ見たかった…。」

カルナギ、ピーッと笛を吹くと「切るぞ!上はフィルに頼む!」

フィル「ほーい」

カルナギ「あとは下だー!」と一斉に下に急降下しつつドゥリーは下に向かって雲海切りする

その間に甲板の方もやや曇って来る。カルロスも雲海切りをする。アンバー側にも視界確保の為の雲海切り。

下ではターさんと護が鉱石柱の根元の三カ所にガンガンと斧で切り込みを入れ始める。

その間もドゥリーは雲海切り。そして三カ所に切り込みが入る。黒船側の切り込みが一番大きい。

カルナギ「ター!上、行け!倒すぞ」

ターさん「はい!」と言って上に上がると黒船の甲板に行き「そろそろ倒すよー!」

そこへピッピッ、ピーッと笛の音が響く

カルナギがガンガンと鉱石柱の根元を切断、グラッと柱が船側に傾くがそれを護やフィルたちが抑える。

ジェッソ「風使いは柱と船の安定!バリア野郎は」

穣「バリア職人と呼んでくれや!任せときー!」と言って柱を抑えるバリアを張る

ターさん「カルさん、柱や人に当たらんように、翼のとこから雲海切り!」

カルロス「なんか切ってばっかりなんだが!」と言うと周囲を見回し、甲板から右翼の上に飛び降りて移動するとそこから前方に向かって大きく雲海切りをする

ターさん「それが黒石剣持ちの仕事だもん」

穣「よっ!雲海切り職人!」

カルロス「ウルサイぞバリア屋!」

柱は徐々に甲板に倒される。柱の幅は甲板の左右に少し余裕を残す程度、長さは船体よりやや長い。


ブリッジでは

駿河「だ、大丈夫、なんだろか。柱、載るかな」

総司「オブシディアンは強い子だから行ける」

駿河「しかし、揺れないな。…上手い。流石」

総司「ふ!…ってかなり真剣勝負してますが!」

駿河、計器を見つつ「重さは…意外に大丈夫だな…見た目よりは軽かった」

そこへスピーカーから『柱を乗っけたけど、重量オーバーしてない?』

総司、インカムに「なんか柱が前にはみ出してるけど、全部乗ったの?」

スピーカー『乗ったよ。位置とか重さに問題無ければ固定するけど』

総司「じゃあ大丈夫だ。固定してくれ」

スピーカー『了解ー』

駿河「はみ出してるけど載せ方が上手いから船が安定してる。」

総司「うん。あまり速度は出せないが」と言って「しかし船から突き出すレベルの柱を採るって。もう運んでるモノの格が違うっていうか。有翼種の採掘って凄いな」

駿河「凄いねぇ。」


甲板では

トゥインタに抱えられて護が帰ってくる。

護「ただいまー!」と言いつつ着地して「いやー、船に載ったねぇ、柱」

穣「載せた載せた。しかしデカイな。笑っちまう位に」

ジェッソ「こんな柱を採れるなんて満足です!」

カルロス「私は雲海切りしてばっかりだが!」

するとカルナギが「これから石茶石が採れる所に行く。そしたらアンタの好きな探知祭りだ」

カルロス「お」

ドゥリー、インカムに「じゃあゆっくり回頭!2時の方向へ!」



暫し雲海を飛ぶ3隻

黒船の甲板のハッチ付近では鉱石柱の傍で一同が雑談中。

ジェッソ、護の白石斧を見つつ「その斧いいねぇ…。」と言い「でもイェソド鉱石の採掘で斧はあまり使わないからなぁ」

護「ケテル石でスコップも作れるよ」

ジェッソ「いいな、それでイェソド鉱石を採ってみたい」と言うと「私は崩した鉱石をスコップでガンと採るのが好きなんだ。大きなスコップに青い輝きを放つ鉱石が山盛りという…あの美しさがな」

穣「…美しさ…?」と首をかしげる。

ジェッソ「ケテルは何だか繊細で」

昴「うんうん。俺の能力、爆破だから。切るよりバンッてやりたい。」

メリッサ、柱を見つつ「ねぇ、もし人工種だけだったら、この柱どうやって採ると思う?」と護たちに聞く。

穣「そうそうそれ、俺も考えてた。俺達の方でも、ごくたまにイェソド鉱石の柱あるじゃん?」

メリッサ「あるある。前に一本採った事あるよ。」

ジェッソ「今、アンバーに載ってるケテル鉱石柱くらいの奴を採って乗っけた。最初から船を柱に接触させて船体で抑えながら怪力が引っ張り上げつつ載せるという感じで」

昴「船体に傷がつくーってティム船長が文句言ってた」

穣「アンバーの時はバラして積んだよ。爆破で切って、俺がバリアで抑えつつ地面に落として」

ジェッソ「バリアがいるとそれが出来るな。」

穣「だって一本丸ごと採ってもどうせ後で破砕されるじゃん?」

メリッサ「そうなのよ!ねぇ聞いて、あの時、丸ごと一本採ってったのに本部で砕けって言われたのよ!」

穣「そりゃまぁ…イェソド鉱石は石材じゃないし」

メリッサ「でも珍しいじゃない?一本くらい観賞用として飾っといてもー!」

昴「どこに飾るん…」

夏樹「霧島研とか」

昴「柱のイェソドエネルギーで四条所長くたばる」

メリッサ「ケテルで調印式した時の建物凄かったよね。柱いっぱい飾ってた。キレイだったぁ…」

穣「ともかく問題は、巨大なイェソド鉱石の柱を見つけた時に人工種だけでどうやって採るか!という…」

メリッサ「採った柱はどうすんの。砕くの?」

穣「…んまぁ…、イェソド鉱石は観賞用じゃないし…。」

夏樹「砕くなら一本丸ごと採る意味が」

穣「後で砕かれるとしても、採る時は一本丸ごとで採ってみたいってのはアカンの?」

ジェッソ「私はそれでもいいと思うぞ!」

穣「同志よ!」

メリッサ「アタシは嫌!一本採ったらそのままにしたいのー!」

護「難しい問題だ」


その頃、黒船の船首近くでは、上総とマリアが黒石剣を持って雲海切りの練習中。

上総はカルロスの、マリアはドゥリーの黒石剣を持っている。

上総、何回も黒石剣を振って「何も出ないー…。」

カルロス「ちょっと剣が光るようになって来た。進歩だ」

マリアも黒石剣を振って「私もちょっとだけ光るようになってきました!」

ドゥリー「うん。イイ感じ」

カルロス「カッコイイぞ」

マリア「か、カッコイイですか!」

カルロス「うむ」

上総「…俺もカッコよくなりたい」

カルロス「お前は可愛い。」

上総「えっ」と言って、カルロスを見て暫しの沈黙。

上総「もーー変な事ばっか言って!貴方に雲海切りしちゃいますよ!」と切っ先をカルロスに向ける。

カルロス「こら!人に向けちゃイカン」

上総「切ってやるー!」と黒石剣を振り上げる。

カルロス「後継機がバグった!」

上総「アンタがバグったからだー!」


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