第19章 02
暫し後。駿河、出来上がったブレスレットを腕に付けようとして「あ。」
ターさん「どうしたの」
駿河「しまった。オブシディアンと中和石にすればよかった。そしたら中和の効果も」
するとターさんが「アクセ用の中和石は弱いよ。この腕輪は相当強い中和石だからね」と駿河が両手首に着けている腕輪を指差す。
アクセ屋の店員も「うん。この中和石は凄い。なかなか市場に出回らないレベルの石だ。ウチで扱ってるアクセ用のとは比較にならないよ。」
駿河「そうか。飾り物に効果を期待しちゃダメか」と言い、作ったオブシディアンのブレスレットを手首の中和石の隣につけて「なかなかいいな」
ターさん「いいね!」
そこへ護が来ると「出来たの?いいねぇ。」
駿河「色んなオブシディアンがあってさ。なんかメンバーの個性色々って感じ」
護「おお…。」
ターさん「護君、なに選んだの」
護、ビーズの瓶を受付のテーブルに置いて「アンバーのブレスレット作って剣菱船長にプレゼントする事にした」
駿河「おお」
護「あと俺のイヤリングもアンバーにした。着けないけど!」
駿河「着けて採掘すりゃいいのに」
護「なんでですか」
駿河「穣さんのハチマキみたいなもんで、トレードマークになる」
護「あれは気合入れでしょう。イヤリングで気合入らないし。…これお願いします」と店の人に渡す。
店の人、笑いながら「はい。」
ターさん、透とマリアを見て「なんか悩んでるね」と言うと「俺ちょっとカルさんの方に行くよ。どんな事になってるのか見たい」
駿河「あ、じゃあ俺も行く。」
護「いってらっしゃい」
ターさんと駿河は店を出て通りを歩き始める。
ターさん「…二人だけだから、俺が貴方を抱えて飛んでもいいんだけど」
駿河「え」と言い「…護さん達を抱えて飛ぶ事って、あります?」
ターさん「よくあるよ。」
駿河「じゃあ、お願いします。」
ターさん「ほい」と言うと駿河を背後から抱いて飛び上がる。
駿河「おおお!す、すごい」
駿河を抱えたターさんは、飲食店街の上を飛びつつ「カルさん達はどこかな。もうお昼だからこの辺りの店で食事だと思うんだけど。」と言い「多分、この店じゃないかな」と、とある店の前に降りる。
駿河「あ、ありがとう。」
ターさん「ここサラダ食べ放題だから昼は混むんだよー」と言いつつ店のドアを開けると案の定、混んでいる。
駿河「ホントだ」
店員がターさんの所へ来て「今、満席なので」と言いかけた所で
ターさん「あ、知り合いを探してるので、中を見てもいいですか」
店員「どうぞ」
ターさんと駿河は店の中に入ると奥の方にカルロス達を発見。
駿河「いた」2人はカルロス達のテーブルへ行く。
ターさん「見つけたぞ。やはりここだったか!」
カルロス「ウム。食べ盛りが居る時はここだ」
剣菱、駿河に「他の連中は?」
駿河「皆それぞれ好きなとこに行きました。こっちはどんな感じです?」
剣菱「こっちは食べてばっかりだ。」
大和「アイス食べた」
上総「妖精クッキー食べた」
マゼンタ「パン屋でドーナツ食べた」
オリオン「俺は妖精饅頭を食べた」
カルロス「そしてここではサラダを食べまくるらしい」
オーキッド「うん!」
悠斗「なんかもう有翼種とかイェソドとか関係ねぇな」
剣菱「うむ」と頷く
ターさん「この後どうするの」
カルロス「そこの十字路曲がって、護たちが行った方の通りへ行く。あっちにケーキセットのある石茶屋があるだろ。そこへ行く。」
ターさん「今度はケーキ?」
オーキッド「だって食べたいもん」
マゼンタ「うん。ケーキで締める」
カルロス「私は石茶、こいつらはケーキ。それで決まった。…あそこの石茶屋は普通の紅茶やハーブティもあるしな…。」と言い「しかし誰か石茶が飲みたいです!という奴が居るかと思ったのに誰もいないという…。」ションボリ
上総「俺は飲みたいです、石茶」
マゼンタ「お茶にはお茶菓子が無いとね!お茶菓子があるなら行く」
カルロス「お前、コーヒーだけとか紅茶だけとか飲むだろが」
そこへオーカーが「サラダのお代わり取って来る」と皿を持って席を立つ
マゼンタ「お茶はお菓子があった方が美味しく飲めるよ」
カルロス「石茶は基本、石茶だけなの」
ターさん、駿河に「ここ満席だから別の店でゴハン食べよう」
駿河「うん」
ターさん「じゃあまたねー」と言うとカルロス達の席から離れる。
駿河とターさんは店の外に出る。
ターさん「どこ行こうかな。何か食べたいものある?」と駿河に聞く。
駿河「何でもいいよ」
ターさん「じゃあとりあえずそこの店入ってみよう」と向かいの店を指差す。
2人が店に入ると、店内は混んでいたが二階のベランダ席に案内される。
2人が席に着くと店員がメニューを置いて去る。
駿河「いい席が空いてたね。」
ターさん「うん。何食べようかなー」といいメニューを見る
駿河もメニューを見て「…ふと思ったんだけど。この魚ってあのイェソド鉱石水の川を泳いでたやつ?」
ターさん「そうだよ。…大丈夫だよ、調理した段階でもうイェソドエネルギーないから」
駿河「じゃあ俺はイェソドのお魚を食べる事にする。」
ターさん「俺は鳥を食べる。」と言い店員のほうへ手を挙げる
店員「お決まりですか」
駿河「焼き魚のランチセットお願いします。」
ターさん「俺は鳥のから揚げのランチセット」
店員「魚と鳥のランチセットですねー」と言いつつ注文をメモすると厨房の方へ去る。
駿河「なんかイェソドって、断絶してた割には俺達の方とよく似てる。」
ターさん「まぁずーっと昔は一緒に暮らしてたみたいだし。人間と有翼種は」
駿河「そうか。そうだった」と言うと「…有翼種と一緒に食事するの初めてだな」
ターさん「あ、貴方はそうか。」と言い「それにしても…。」と言って「俺さ、前に護君が、黒船は凄い船だっていうから船長はどんな人なのかなと思ってたんだよ。」
駿河「わかった。何でこんな若い奴がと」
ターさん「だってアンバーの剣菱さんがあんな感じだから」
駿河「何でこんな奴が黒船の船長なの?って、よく言われます!」と苦笑い
ターさん「まぁ黒船の船長ってのは納得なんだけど」
駿河「え」と驚いて「どこらへんが…。」
ターさん「ん?…んー…。なんかそう感じる。貴方にピッタリだよね。」
駿河「え…?」
ターさん「って何でそんな顔するの!」
駿河「いや、だって、…正直なところ…、自信が無いまま何とかやってるもんで」
ターさん「いいんじゃない?」
駿河「ええ?」
ターさん「だってその歳で黒船の船長やって自信あったらちょっと変かもだよ。メンバーの殆どは貴方より年上な感じがするし」
駿河「……。」
そこへ店員が料理を運んで来る。「お待たせしました、焼き魚と、鶏のから揚げでーす。」
駿河のは焼き魚と野菜の煮物と炊き込みご飯が乗ったプレートに味噌スープ付き。
ターさんのはから揚げと野菜サラダと炒めたゴハンが乗ったプレートに野菜スープ。
ターさん「よし食べよう!」
駿河、箸で魚の身を切ると「鉱石水の中を泳いでた魚か」と言いパクリと口にほおばり「美味い」
ターさん「魚は絞めた段階でイェソドエネルギー無くなる。果物や野菜はそもそもあまりエネルギーが残らない。だから安心して食べて。」と言うと「…ここ、これでランチ500ケテルって安いな。美味いし」
駿河「…さっきの話だけど…、実は俺が黒船の船長になったのは色々な事情があって」
ターさん「だろうねぇ。でもいいんじゃない?」
駿河「…何が?」
ターさん「だって…。」と言い「カルさんって、黒船から逃げてイェソドに来たんだよね?それがなぜか今、黒船に戻って凄く楽しそうにしてるから、なんか不思議で。」
駿河「…。」
ターさん「最初に出会った時は本当にボロボロで痛々しかったのに、それが今やあんな感じだし。だからカルさんも変わったけど、貴方も変わったんだろうなぁと。」
駿河「……。」
ターさん「以前何があったか知らないけど、今、皆楽しそうだから、それでいいんじゃないかなぁ。」
駿河「…そうだな。」と言い「うん」と微笑み、魚の身をほおばると「イェソドのお魚、美味い!」
そして午後3時半近く…
パンを食べながら採掘船停泊所への道を歩いているジェッソと穣。
ジェッソは小さな紙袋を、穣は大きめの紙袋を片手に抱えている。
穣、パンを食べつつ「適当に選んだけどこれ美味い。リンゴが入ってた。」
ジェッソもパンを食べながら「私のはブルーベリーだな。モチモチしてて美味い。…て、あれは!空飛んでる」と空を見上げる。
穣「んん?」と穣も空を見て「あらま」
見ればターさんが駿河を背中に背負って飛んでいる。ターさんの背中に駿河が掴まっている感じ。
穣「何かあったんかな。ターさんに送ってもらうなんて」
ジェッソ「あの船長、真面目だから時間厳守で急がせたか…?」
穣「って訳でも無いような。なんか空の上グルグルしてる」
ジェッソ「何をしてるんだ…?」
駿河「気持ちいいー!やっぱ空っていいよな!」
ターさん「風が気持ちいいよね!」
駿河「俺いつもブリッジだから風なんか感じられないよ!いいなぁ有翼種って。」
ターさん笑って「いいだろ」
駿河「そういや俺、昔は休みに小型船レンタルして一人でアチコチ飛んでたなー。いつの間にかやらなくなったけど」
ターさん「空が好きなの?」
駿河「かもなぁ。船の操縦も好きだよ。船長になるとあんまり操縦しないけど…。」と寂しげに言う。
ターさん、そんな駿河に「やりたい事はやろう!」
駿河「まぁ今は船長を頑張るよ。あ、ジェッソさん達がこっちを見てる。」
ターさん「じゃあそろそろ降りよう。」
駿河「そのうちまた飛んで下さい!」
ターさん「いいよ!」
2人は採掘船停泊所の入り口でターさんと駿河を見ていたジェッソと穣の前に着地する。
穣、ターさんと駿河に「一体、何してたん?」
ターさん&駿河「空の散歩」
ターさん、ジェッソが持つ紙袋を指差し「それ妖精クッキーだな。」
駿河「なにそれ」
ジェッソ「こんなのです」と駿河の前に紙袋を差し出す。
駿河、中のクッキーを一つ摘まんで「カワイイクッキーだなぁ」
ジェッソ、穣に「パンもう一個くれ」と言うと、穣の持つ大きめの紙袋から紙に包まれたパンを取り出す
穣「石屋巡りしてたら昼飯食べる時間無くなったので、さっき適当にパン買って来た。」
ターさん「え、じゃあそれ昼飯?」
穣「うん、あとその妖精クッキーな。そっちはどこ行ってきたの」
駿河「最初は皆と色々行ったけど、途中で別れてターさんと昼飯食べてお茶して空の散歩しながら戻った」
そこへ遠方から話し声が近づいて来る。
ターさん「皆、戻って来た」
剣菱とマゼンタ達が戻って来る。
大和「イェソドって凄い楽しい。」
オーキッド「美味しいものいっぱいあるし!」
マゼンタ「船長また遊びに来ましょう!」
剣菱「やれやれ。まるで沢山、子供がいるみたいだ」と笑いつつ(幸せだな…。長い事、管理との狭間で耐えて来た甲斐があった…)
一同は停泊所入り口の穣たちの方へ。
マゼンタ、穣を指差し「あ、パン食ってる!」
穣「あげないぞ!」
ジェッソ「クッキーならちょっとあげよう」
大和「あ、妖精クッキーだ!」
剣菱「こいつら、もう散々食ったので何もあげないで下さい」
穣「何を食べて来たの」
オーキッド「色々!」
マゼンタ「アイスとかケーキとかドーナツとか」
駿河、剣菱に「カルロスさんは?」
剣菱「上総君と一緒に二件目の石茶屋に行った。」と言い、穣とジェッソに「石屋はどうだった?」
穣「凄い色々勉強になった」
ジェッソ「視野が広がりました」と言い、駿河に「船長。そのうち我々の方の石屋に石の売り込みをしましょう!」
駿河「え」
ジェッソ「採掘船本部はイェソド鉱石以外は眼中に無いので。仕事の幅…つまり扱う石の種類の幅を広げる為にはまず石屋を味方につけないと。」
駿河「いいけど俺、石のことはよくワカラン…。」
穣「大丈夫!それ採掘監督がやりますから」
ジェッソ「石の事は採掘監督の仕事、船の事は船長の仕事」
駿河「そういやカルナギさんって船長だけど採掘監督でもあるような」
剣菱「カルナギさんは兼任してる。船によるらしい」
ジェッソ「ともかく船長は管理との折衝をしてくれればOKです。」
駿河「それが一番メンドイ」
剣菱「わかる。」
そこへ「ただいまー!」と声がする。声の方向を見ると護が走って来る。その背後にマリアと透
ターさんたち「おかえりー」
護、穣を見て「パン食ってるし」
穣「俺らの昼飯じゃい。石屋巡りで食うヒマ無かったの!」
護、剣菱に「船長!プレゼントがあります。俺と透とマリアさんで選んで作りました。」と言うとマリアがキレイな布地の小さな巾着袋を両手にのせて「はい!」と剣菱に差し出す。
剣菱「え?」と驚いて「プレゼント?…何買って来たんだ」と言い巾着を手に取り、開けて中を見ると「おお」と言い中からキレイな黄色とオレンジのブレスレットを取り出す。
剣菱「…アンバーやん。」
透「はい。アンバーのブレスレットです。」
マリア「駿河船長がオブシディアンのブレスレット作ってたから」と言った所で
剣菱「え」と驚いて駿河を見ると「アンタ、アクセ屋に行ったんか」
駿河「…作りたいものがあったので。」と言い、ちょっと袖を上げてオブシディアンのブレスレットを見せると、照れつつ「これ。」
剣菱「ほぉ!」
ジェッソ「おお…。」
マリア「剣菱船長にもアンバー着けて欲しいなって」
剣菱「うんうん。着けるよ。」と言い早速手首に着けると「ありがとう!」
穣「マリアさんはどんなブレス作ったの」
マリア、腕に着けたブレスレットを見せて「これ!カーネリアンとシトリンとケテル石。イエローケテルのイヤリングも作っちゃった」
穣「おー!」と言い「護は?」
護「俺は」と言いかけたところで
透「アンバーのイヤリング作った」
護「着けないぞ!」
透「着ければいいのに。俺みたいにさ」と言い耳のイヤリングを見せてから「俺のブレスレットこれ」といい腕のブレスを見せるが
穣「聞いてねーよ」
透「えー。」
護「よしこのイヤリング穣さんにプレゼントする」とアンバーのイヤリングを取り出す
穣「はぅ?!」
護「アンバーの採掘監督の証だ!」
穣「い、いらねーよ、ハチマキとイヤリングってヘンだろ!何なら船長に」
剣菱「なんですと」と言い「そしたら黒船の船長もオブシディアンのイヤリング着けるんだな!」
駿河「え」
穣「そっか俺がイヤリング着ければジェッソも!」
ジェッソ「なんですと」と言い「さて皆さんそろそろ船の中に入りませんか!」
剣菱「そうだそうだ」
穣「行くべ!」
ジェッソ、船の方へ歩きつつ「その前に穣、パンくれ」
穣「あれ。お前何個食った?」
ジェッソ「忘れた」
穣「俺3つしか食ってねーぞ。8個買ったんだから、最後のは俺のだ!」
ジェッソ「くぅ。」
0コメント