第22章 04 最終話

そして…二週間後。

採掘船本部の近くの立体駐機場ビルの一画に停泊している白い船、カルセドニー。

その操縦席では駿河が楽し気に計器のチェックをしている。

船の外ではカルロスが船から少し離れた発着口の近くに立っていて、外を見ている。

そこへ護がやって来る。

護「やっとイェソドに行けるなー!」

カルロス「やっとだな。…この二週間、忙しかったな…。色んな手続きやら準備やらで」

護「早くターさんにこの船を見せたい。あと積み荷のマルクト石も!」

カルロス「…アンバーが採って来たマルクト石だけどな。」

護「しゃーない。俺達、マルクトまで採りに行くヒマ無かったし!」

カルロス「イェソド行ったらまずケセドの街でマルクト石を売って、イェソド鉱石の採掘してジャスパーに戻って、マルクト石の採掘に行ったらまたイェソドへ…」

護「忙しいねぇ!」

カルロス「アッチとコッチを繋ぐ採掘の始まりだ。私は石茶さえあれば頑張れる。」

護「アンタやっぱり石茶屋やろうよ」

カルロス「お前の家が出来たらな」と言い「しかし思えば全てはお前の偶然のドンブラコから始まったんだよな。」

護「そうだねぇ。そしてターさんに出会った。」と言い「あの時、俺もうホントに終わりだと思ったのに。…人生って変わるんだなぁ。」

カルロス「変わるさ。心が自由ならな」

護「お。なんかカッコイイ事言った」

カルロス「だってそうだろ。俺達はずっと、頭も心も縛られていた。…自分が本当に望む事を、していなかった。」

護「まぁねぇ。」と言うと空を見て「お、晴れて来た」

カルロス「いい感じだな!」

そこへ耳にインカムを付けながら駿河が来ると「そろそろ時間ですよ。行きませんか」

カルロス「行くか。…稼がないとな!」

3人は船首近くのドアから船内に入る。狭いブリッジに入ると駿河は中央の操縦席に座り、護とカルロスはその後ろに立つ。

駿河「搭乗口閉鎖よし」と確認してから「じゃあエンジンかけます。」

カルセドニーのイェソドエンジンが光り始める。

駿河、計器を見て「カルさん、エンジン絶好調!」

護&カルロス「え」

護「そっか、カルセドニーだからカルさんか!」

カルロス「紛らわしい!」

そこへピピーと呼び出し音が鳴る。駿河、インカムに「はい、カルセドニーの駿河です。」と言いつつ外部スピーカーのボタンを押す。

するとスピーカーから『どうもアンバー剣菱です!船のカルさんは元気かな!』

駿河「元気ですよ。エンジン絶好調!」

カルロス、ぼそっと「皆でカルさんカルさん言うな」

スピーカー『黒船さんも待ってるし、じゃあ早速イェソドへ行こうか!』

駿河、インカムに「はい!」と返事。

カルロス「…待ってる事も無いのにな。」

護、カルロスの腕をつつきながら「嬉しいねぇ。」

カルロス「…全く。黒船もアンバーも…。ありがたい奴らだ。」

再びピピーと呼び出し音。

スピーカー『オブシディアンの総司です。お久しぶりです駿河船長…じゃなかった、って、あ、船長でいいのか』

駿河、笑いつつインカムに「カルセドニーの駿河です。お久しぶりです総司船長!」

スピーカー『…何だか不思議ですね。俺と貴方が船長って。』

駿河「そうだなぁ。」と言うと「…じゃあ、行こうか。三隻でイェソドへ!」

スピーカー『行きましょう!』

カルロス「とりあえず木箱から船に昇格したから頑張らんとなー!」

護「夢に向かって採掘じゃあー!」


カルセドニーはゆっくり上昇すると駐機場ビルの発着口から外に出て上空へ。暫く飛んでいると、背後からアンバーとオブシディアンがやってきてカルセドニーを挟むように両側に並走して飛ぶ。


『可能性に満ちた広大な世界へ』


三隻の船は紺碧の空の彼方へ飛んでゆく。



『紺碧の採掘師』 2020年6月WEB掲載版 -完-