第10章 02

その頃、アンバーの食堂では。

管理がマリアを急かして「まだか…?早く探知してくれ、周防先生を。」

マリア「まだ…ちょっと…。」

管理「余計な探知は勝手にする癖に、肝心な時には探知が遅い!」

マリア (どうしよう…護さん達の位置を言った方がいいのか、それとも彼らが逃げ切るまで誤魔化したらいいのか…?)と思いつつ「…カルロスさんが探知妨害していて、なかなか…」


ブリッジでは

剣菱、管理に「…停船して暫く経つけども、一体どうなって」

管理「暫し待て!」

剣菱「とりあえずどういう状況なのか、少し教えてくれませんかね。」

管理「…貴方は黙ってそこに居ればいい。」

剣菱「…。」(人を置物扱いしやがって…。…ん?!…)何かに気づいて、辺りを見る。(…今、何となくカルロスさんに呼ばれたような気がしたが。気のせいか…。)


再びアンバーの食堂

穣・マリア・ネイビー、同時に「!」何かに気づいて、3人で顔を見合わせて

ネイビー「今、何か感じた!」

穣「何だ今の」

マリア「物凄いエネルギー…」と言い「こんなに近いと皆も感じるのね。」

管理「何だ、どうした?」

マリア「SOS波です。…カルロスさんを見つけました。」

管理「!」

穣「SOS…?」

マリア「ブリッジに行かせて下さい!彼は車で逃走中なのでここでは場所を指示出来ません!」

管理「な、なに」

穣「なんてこった。」と言うと「ブリッジに行こう!」と管理を無視して食堂を出ようとする。

戸口に居た2人の管理が慌てて穣の前に立ちはだかるが、バンと何かに弾かれる。

穣「マリアさん行け!」

マリア「はい!」と食堂から走り出る

通路にいた管理がマリアに気づき「待て!」と怒鳴るが

そこへ穣が「邪魔するとバリアラー穣のバリアが炸裂するぜ!!」

管理「…!」

その声は船室にも聞こえる。船室に軟禁されているメンバー達がざわつく。

悠斗「なんだなんだ」

透「穣が騒いでる」

通路では管理がバリアする穣に近づこうと必死「貴様!…こんな所でバリアを」

穣「ええいもうめんどくせぇ!」と言うと大声で「みんな!もう自由になろう!管理を抑えろ!」

それを聞いたメンバー達「おお!」

マゼンタ「お腹すいたぁぁぁーー!」

健「ごーはーんーーー!!!」と叫びつつ、管理を押し退けて船室のドアを開けて通路に出る。

管理「お前らぁぁぁ!」


一方、逃走中のカルロス達は。

カルロス「伝わったようだ。アンバーがこっちに来る。」

護「おお!」

カルロス「どこかでアンバーと合流せんとなー…。あのデカさの船となると合流場所が限られる。んー…どこか広い場所は」と悩む

月宮「近くに大型の駐機場ビルがありますけど。」

カルロス「どこに?」

月宮、カーナビの地図を示しつつ、「ここ。」

護「カルさんがカーナビに負けた…」

カルロス「待て。…そのビルって採掘船も降ろせるのか。」

月宮「はい」

周防、護に「知らないものは探知出来ないんだよ。」

カルロス「街中に採掘船を降ろす事なんてまず無いからな!」

護、月宮に「ところで月宮さんはどうします?」

月宮「一緒に行きますよ。まぁ…君達にカッターで脅された事にでもしますか。」と胸ポケットの事務用カッターを指差す。

カルロス「ちょっとショボイな。まぁ周防を人質に取られて仕方なく来たって感じで。」

月宮「OK」


暫し後、駐機場ビルに入る月宮の車。駐車場に車を止めると一同はエレベーターで屋上へ。

周防、正座すると護に「首絞めて下さい。」

護「はい」と周防の首に付けたベルトを手に持つ

カルロス「マジで絞めてもいいけどな」

護「いけません」と言い「あ、アンバーが来た」と上空を見る。

アンバーが降下してきて採掘口が開き、タラップが降りると管理が出て来る。

護、周防の首にかけたベルトを絞めつつ「来るな!コイツがどうなってもいいのか!」

カルロス「我々を霧島研まで連れて行ってもらおうか。」

すると管理が「わかりました。」

一瞬の間。

護&カルロス「え?」

すると管理の後ろから穣が出て来て「見たかアンバーの底力!ちょいと管理に説教したのさ。はっはっはぁ!」

カルロスたち唖然

穣「…ったくええ加減にしろってんだ全く!」

管理「…。」渋い顔

穣、護たちに「さぁ!いざ行こう霧島研!」

護「さ、さすが。」

カルロス「お、おお。」

穣「とはいえ油断できないんで、護、その名の通り周防先生を護ってくれ。管理に周防先生を取られると困る。」

護「は?」とキョトンとしてから「ああ!」

穣「ところでコイツは…?」と月宮を指差す

カルロス「ああ…管理だが製造師見習いの月宮さんだ。適当に脅して連れて来た。」

穣「なるほ。ところで実は、黒船が霧島研に向かっているらしい。なぁ?」と管理をつつく

管理「…駿河船長を監禁し、採掘監督の独断で霧島研へ」

カルロス「!」

護「船長を監禁…?!」

管理「周防先生を救う為に、霧島研の上層部にお前達の要求を呑むよう訴えに行くと。」

護「へぇー!」と驚き「凄いなカルさん!」

カルロス「ん?う、うん。」と言うと「と、とりあえず、行くぞ護!」

穣、ニヤニヤして「良かったな、カルさん!」

カルロス「カルさんじゃない、カルロスだ!」と穣に言うと、一同はタラップを上がってアンバーの中へ。



暫し後…。

左右を航空管理の船に挟まれつつ黒船はマルクトの霧島研の近辺に近づく。

スピーカーからは『停船しなさい!止まりなさいオブシディアン!』と言う声と警告音が。

『こちらの誘導に従わなければ船長を厳罰に処する事になります!』

駿河「…だそうですが」

ジェッソ、はっはっはと笑いつつ「困ったな。」

上総「これで船長が厳罰ならカルロスさんはどうなるんだよ」

レンブラント「全くだ」

昴「こわいこわい」

総司「さてどこに着陸します?」

ジェッソ「出来ればすぐ建物内に入れるところへ」

上総「正面玄関前にちょっと広場があるから、船は上空待機でメンバーだけそこに降下するってどうかな。」

ジェッソ「いいねぇ!」

総司「じゃあ皆が降りた後、船は管理と鬼ごっこしてます。」

ジェッソ「船の事は頼んだ、よろしく副長!」

上総「俺、船に残った方がいい?」

総司「んー…。皆と一緒に行った方がいいな。建物の中とか探知が要るだろ。」

上総「じゃあ俺も霧島研に行く。」

ジェッソ、駿河に「では、行きましょうか船長!」

駿河「え。俺は監禁されてんじゃないの?」

ジェッソ「人質として連行致します。」

駿河「なるほど。」


黒船は採掘口を開けて霧島研に近づく。大通りを通り抜けるようにして霧島研の前へ

駿河、背後のジェッソに抑えられつつ採掘口から下を見て「うわ!」と驚き「おいおい高度下げ過ぎだろ…」と言い「総司君の操縦の腕は流石だけど航空船舶法違反ギリギリやん!」と叫ぶ

ジェッソ、インカムに「聞こえたかな副長!」

すると船内スピーカーから『聞こえてるよ!』

駿河「無理して器物損壊とかするなよぉぉー!俺の首がブッ飛ぶー」

スピーカー『その時はご一緒に!』

駿河「って」

その時、上総が「そろそろ降ります!」と叫ぶ

ジェッソ「了解!」

上総「3、2、1、GO!」という掛け声と共にジェッソは駿河を抱き抱えて飛び降りる。他のメンバーも続いて飛び降りる。一同が霧島研の正門前に着地すると同時に黒船は上昇し、その場を飛び去る。

守衛に止められる一同「君達!無断でここに」というのをガン無視して

ジェッソ、駿河の首に腕をかけると「邪魔すると船長の首をへし折りますよ!」

守衛たち「!」

ジェッソ「わたくし、怪力人工種のジェッソと申します。」守衛たちはおずおずと後退する。

ジェッソにこにこしつつ「通して頂けますね。ありがとう皆さん!」と言いつつ正面玄関へと歩く。

玄関からバタバタと数人の管理が出て来て「ま、待て、話し合いをしよう。」

ジェッソ「所長に会わせて頂きたい。」

上総、ジェッソに「所長の名前、なんて言うの」

ジェッソ「…なんだったかな?」と言い近くの管理に「所長のお名前は?」

管理「…四条」

レンブラント「あれ。霧島じゃないんだ」

上総「四条所長…言いにくいな。あ、いた。建物の中にいる。2階の真ん中の部屋にいるね。」

ジェッソ、にこにこしつつ「呼んで来て頂けますか?」

管理「お前達、一体何をしに来たんだ」

ジェッソ「所長と話がしたいんです。」

管理「何の話を」

ジェッソ「所長を呼んで来ないと船長の腕が一本折れますよ」と駿河の右腕を掴む

管理「…。」冷や汗「そんなハッタリを…。人工種が人間を傷つけられる訳が無い。」

ジェッソ「まぁそういう事になってますが。やってみなくちゃワカランという事もあります。」

管理、駿河を見て「…こんな事態を引き起こして…。貴方の管理が甘いからだ!」

駿河「…。」

ジェッソ「とにかく所長を」

管理「船長を解放したら」

ジェッソ「それはできません」と言いため息をついて「なぜそんなに人工種を抑圧しておきたいのか。」と言い「我々が居なければイェソド鉱石が手に入らずあなた方は生活できなくなるというのに」

管理「だが人工種を作ったのは人間だ。ここまで進化させてきたのも」

ジェッソ「その事については感謝しております。」

管理「人間がどれだけの時間と労力を使ってお前達を育てて来たと思ってる。それが、ここに来て反逆だと…?あまりワガママを言うと」

ジェッソ「あまりに縛ると我々も覚悟するしかなくなります。」と言い「…たとえ首輪に絞め殺されても船長の首を折る。」

管理「…。」

暫しの静かな対峙。

ジェッソ「…所長を、ここへ。」

管理「…。」

ジェッソ「でなければ、こちらから行きます。」

そこへ上総が「そろそろ飛んで来るよ、アレが。」

ジェッソ「お」

上総「物凄い速さで飛んできた。」

ジェッソ「もしやスピード違反か。ヤバいな。」という会話の間に後方からエンジン音が聞こえて来る。

少しするとアンバーが霧島研の上空に飛んできて、屋上に近づく。

管理「上から!」

ジェッソ「ふ…。上と下から挟み撃ちだ。」


屋上には管理の船が停めてあるので穣たちは上空のアンバーの採掘口から直接、屋上へと飛び降りる。

穣に続いて黒石剣を持ったカルロスやマゼンタ、健、そして護が周防を抱えて着地。

アンバーの採掘口で皆を見送った悠斗「アンバーの治安は怪力の悠斗にお任せ!皆、頑張ってこーい」


カルロス達は建屋屋上の建物入り口へ向かいつつ

カルロスが「そこに居る奴!怪我したくなければどけ!」と閉まっているドアに向かって怒鳴る

穣も「ドアぶち壊すぞ!」と怒鳴る

カルロス「よし!どいてろ!」と言いつつ黒石剣を抜くとブンと振ってドアをドカンとブチ開ける。

穣、カルロスに続いて階段を降りつつ「アンタ随分ワイルドになったな!」

護「有翼種に鍛えられたからねぇ。」