第22章 02
一方その頃。SSFの屋上では。
屋上への出入り口のドアが開くと、10歳位の人工種の男の子が3人、外に出て来る。
金髪のカーネル(カーネリアン)と、黒髪のオニキスと、青い髪のラピス。
カーネル、外に出ると「いい天気だー!」
オニキスも空を見上げて「わぁ。青空だぁ」
カーネル、ラピスに「ラピス君!採掘船どこから来るの」
ラピス「採掘船あっち!」と、とある方向を指差す。するとカーネル、その方向に向かって走ると屋上の柵に手をかける。その時、屋上出入り口から月宮が出てきて叫ぶ。
月宮「落ちるなよカーネル!」
カーネル「うん!」
するとラピスが突然「あれ。」と言うと「なんかコッチから小さい船が来る!」とカーネルがいる方向の90度左側を指差す。
月宮「小さい船?」
そこへ屋上の入り口から紫剣と、事務員のカモミールが出て来る。
紫剣、空を見上げて「いい天気だなぁ。」
月宮、紫剣に「なんか、小さい船が来るらしいです。…あ、来た。」
遠方から管理の小型船が近づいて来るのが見える。
カモミール「来客の予定は無いけど…。」
月宮「アポ無しかな。」
カモミール「勝手に屋上に停められても困るんですけど」
紫剣「今からデカイ船が来るしな。」
小型船は屋上の端に着陸すると中から霧島研の管理が3人出て来る。
月宮、訝し気な顔で「…?」
管理「緊急の用件にて突然失礼します。もうすぐお戻りになる周防先生にお伺いしたい事がありまして。」
カモミール「はぁ。」
オニキス、管理に「こ、こんにちはぁ。」
そこへカーネルが「採掘船、見えた!」
ラピス「採掘船だー!」と遠方に見える二隻の船の船影に手を振る。
オニキス「周防先生戻って来た!」
月宮「皆、こっちおいで」とカーネル達に手招きする。
カーネル「うん!」と月宮の方へ駆け寄る。
採掘船二隻はSSFの屋上に近づくが、小型船がいるので黒船だけが着陸し、アンバーはその上に上空待機する。
カーネル達、採掘船を見て「おおきーい!」「でかいでかーい!」
黒船の採掘口が開いて、タラップから周防と駿河を先頭に、カルロス、ジェッソ達が降りて来ると同時に、上空のアンバーの採掘口から穣と護が飛び降りて来る。
カーネル、それを見て「上から落ちて来た!」
オニキス「かぁっこいいー」
その声に、護と穣、カーネル達にニコニコして手を振る。
月宮、カーネル達に「落ちる時は必ず浮き石の確認だぞ」
ラピス「はいっ!」
そこへ管理が周防の所へ駆け寄りつつ「周防先生。貴方を霧島研に連行します!」
すると紫剣が管理の所に駆け寄り「ちょっと!アンタらSSFの業務を妨害するつもりですか。」
管理「なに?」
紫剣「周防先生が居ないとSSFはとても大変なんですよ!やっと戻って来たのに、仕事してもらわないと!」
管理も負けじと「だが周防先生が有翼種に何を吹き込まれ…聞いてきたのか」
周防「紫剣さん、私はイェソドで人工有翼種の資料を沢山貰ってきましたよ。」
紫剣「えっ」
周防「あとカナンの血と有翼種の血も採血してきました。」
紫剣、パンと手を叩いて「流石!」と手でグッジョブサインを出すと同時に
管理が「な、なんですと!それはまず霧島研でチェックしないと」
他の管理も「とにかく貴方を霧島研に連行します!」
紫剣「待った!周防先生は連れて行ってもいいが、その血とか資料は置いて行って下さい!」
周防「何でだ!」
紫剣「だってそれ、霧島研に没収されたら二度と研究出来ないじゃないか。」
周防「私が取って来たモンを何でアンタが研究するんだ。」
紫剣「大丈夫、アンタの没後、遺志は継いであげるから」
周防「まだ死ぬ気はない!」
紫剣「じゃあわかりました。周防先生も資料も没収するなら、私も霧島研に連れて行って下さい!ってか一緒に行きまーす!」
管理「そんな」
他の管理「そんなアホな」
紫剣「ダメだっつーなら私がイェソドまで行って資料取ってきます!」
周防「私と資料とどっちが大事なんだ。」
紫剣「資料!」
すると月宮が管理に「あのー。その二隻がもうイェソドと行き来出来るのに情報隠蔽した所で意味ない気がするんですが。」
紫剣「全くだ」
月宮「周防先生がイェソドからどんな情報を持ち帰って来たか霧島研で把握したいなら、俺が全部報告しますけど。」
紫剣「それが月宮君の管理としての仕事だもんなぁ!」
月宮「ええ。」
管理「…。」
月宮「俺だけじゃ心配なら、霧島研から誰か監査が来ればいいんです。周防先生を連れて行くより霧島研から人が来た方が絶対効率的だと思います。」
紫剣「いやまぁ効率的には周防先生を霧島研に持ってった方が効率はいいわな、月宮君の仕事が無くなるけど。」
月宮「あ、そうか。」
紫剣「よし、皆で霧島研に行って周防先生が持ち帰って来た資料を研究しよう!SSFは月宮君に全部任せた!」
月宮「あの俺まだ製造師見習いなんですけど。」
紫剣、月宮に「できる!」
月宮「って製造師免許ありませんし!」
紫剣「やる!」
月宮「ってまだワカラン事が沢山あるのに貰ってもー!」と言うと、管理に「俺にSSF任されても業務が滞るだけなので、周防先生を連れて行かないで下さい!」と懇願する。
紫剣「周防先生を連れて行くと、もれなく私も付いていきます!」
月宮、管理に「SSFが大変な事になるので周防先生はここに置いておきましょう!資料の事とかは俺がちゃんと霧島研に全部報告しますから!!」
紫剣「給料分の仕事はしないとな!」
月宮「そもそも周防先生を霧島研に連れて行くと、もれなくこの採掘船二隻まで霧島研に行くと思いますよ!」
紫剣、駿河に「俺を乗っけて行ってくれ!」
管理の男、溜息ついて「…まぁ、そうだな、仕方がない…。」と言うと「周防先生はここに残す事にしよう。その代わり霧島研からSSFに何人か人を入れる。…君に報告を任せるのは不安だからな。」と月宮を指差す。
紫剣「あんまり団体で来られても」
月宮「それは助かります。何せ子育ては大変なもんで」
紫剣「うん、子供達の遊び相手なら何人いてもいいぞ!」
するとカーネルが「月宮さん、大変なの?」
ラピス「カーネルが逃げるからだ!」
オニキス「僕が中庭の木を折っちゃったから?」
月宮「…かくれんぼが大変だ…。探知のラピスがぁ…。」とクッタリする。
カーネル「そうだ!ラピス君いると、かくれんぼにならない!」
ラピス「だって!」
月宮「まぁ探知の練習になるからいいんだけどさ…。」
オニキス「月宮さんが大変」
月宮、管理達を指差しつつカーネルに「この方達も大変なんだって」
するとカーネル、「大変!」と言うと管理に向かって「お疲れ様ですぅっ!」
ラピス「お疲れ様でした!」とお辞儀をする。
オニキス、ラピスを見て「でした?」
管理「……。」辟易したように黙ると、ため息ついて「まぁ、後々霧島研から人を入れるという事で、今は一旦引き揚げる事にします!」と言い管理全員、小型船の方へ。
カーネル「行っちゃった」
するとオニキスが「お、お疲れ様でしたぁ」
カーネル「ばいばーい!」と両手を振る。
ラピス「さようなら!」とお辞儀をする。
周防、その様子を見つつ「うーん流石だ」
駿河「…最強ですね…。」
一同は管理の小型船が飛び立つのを見送る。場所が空いたのでアンバーも屋上に着陸する。
紫剣、周防に「やれやれ。…おかえりなさい周防先生。」
周防「ただいま戻りました。」
カーネル達「おかえりなさーい!」
紫剣「思ったより早く帰ってきましたね。」
周防「うん」と言うと、カーネル達3人を駿河の前に並ばせて、「ウチのチビ達だ。皆、自己紹介を」
カーネル「はーいっ!俺、SSF SI F15紫剣カーネリアン!」
オニキス「お、オニキスです。SIのF16の紫剣オニキス、怪力ですぅ」
ラピス「僕は!探知の!SU F17周防ラピスですっ!」
周防「この三人は今、SSFの中で最もうるさくて。特にコイツが」とカーネルを指差す
カーネル「俺うるさくないもん!」と言うと黒船を指差し「採掘船でっかい!凄いでっかい!かっくいい!」と言うと、駿河に「船長さんですか!」
駿河「うん」
カーネル「ラピス君、オニキス君、ご挨拶だ!」と言うと、三人はキチンと駿河の前で気を付けして
カーネル「俺達いつか採掘船に乗るー!」と叫ぶと「せーの、宜しくお願いします!」とお辞儀。
駿河、笑って「う、うん。」と言うと「じゃあ、待ってるからね。」
カーネル「はぁいっ!」
オニキス「やったぁ」
ラピスはカルロスの前に行くと「あ、あ、あの。僕いつか、カルロスさんみたいな凄い探知になるんです!」
カルロス「お?…おお。なるのか」
ラピス「あ、握手して、くれますか!」
カルロス「…うん」と言いラピスと握手。
ラピス「わぁ。」と嬉しそうに言うとカーネルの所に行き「握手したー!」
カーネル「おし!これでラピス君も一人前だ!」
オニキス「一人前?」と首をかしげる。
周防、駿河達に「な?元気だろ」
駿河、笑いつつ「いいですねぇ…」
周防「…では、そろそろ」と言うと「駿河船長、本当にお世話になりました。そして、皆さんありがとう。」
カルロス「…まぁ、またイェソドに行こう。…行くんだろ」
周防「うん。今度は紫剣さんを連れて行くかも。留守番は月宮君に任せて」
月宮「え」
駿河、一同に「じゃあ皆、船内へ。」
周防、思わず「駿河さん」と言うと「…応援しています。」と言い、カルロスの方を見て「新しい船、頑張って。」
カルロス「うん」
駿河「それでは、失礼します」と一礼して船内へ。護たちもアンバーへ戻る。
タラップが上がり、採掘口を閉じて、二隻は上昇を始める。それを見送るSSFの一同。
月宮「皆、二隻を応援しよう!」
カーネル「応援!頑張れオブシディアンー!」
オニキス「頑張れアンバー!」
ラピス「頑張ってー!」
皆で二隻に手を振る。二隻はSSFから離れ、採掘船本部に向かって飛んでいく。
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