第7章04
次の日の午前中。
護とカルロスはターさんの吊り下げ木箱に載って空を運ばれている。下を見ると山腹の街が点々と見え、山の上に近づくにつれて航空貨物船や、飛んでいる有翼種の数が多くなる。
やがて、やや大きな街が見えて来る。ターさんはそこに近づきつつ
「あれがコクマの街か。それにしても上の方のエネルギーが凄い……。ここでこんなエネルギーって事は、山頂はどんななんだろ」
カルロスが「全くだな」と呟き「いつか行ってみたいな、源泉」
ターさんも「だねぇ。まぁ源泉は無理でも、少し下にある首都ケテルはいつか行きたい」と言いつつ街に近づいて「ええと……中央広場はどこだ」
「真っ直ぐ」カルロスが前方を指差す。
ターさんから渡された、案内用のB5サイズの地図を見ていた護が感心する。
「流石。よく分かるねぇ」
「人型探知機ですから。なんかこっちを気にしてる人がいるぞ。あっ、来た」
前方から男女二人連れの有翼種が近づいて来る。
女性の有翼種が「おはよう。ターメリックさんですね」と言うと「そんな木箱で来るとは……」と苦笑しながら困ったように言う。
男性の有翼種も笑いを噛み殺しつつ「定期連絡船に言えば乗せてくれたのに」
ターさんが若干赤面しつつ「そういうのあるんですか」と言うと男性有翼種が
「うん。遠距離とか荷物が多い時には皆、船を使うよ」
「……俺は、いつも遠距離を、コレ吊るして飛んでるもんで……」
男性有翼種はアハハと笑い「そうか凄いな鍛えられてるね。流石は採掘師!」と言い「さて、その木箱、どこに置こうかな」
女性有翼種も笑いながら「図書館の裏庭にしましょう。誰も盗まないと思うし!」
一同は、大きな建物の裏庭に着地する。
護は建物を見上げて「随分大きな図書館ですね」
女性有翼種は「イェソドで一番大きな図書館です。コクマは学問の街ですから」と言うと「じゃあ図書館の中を通って表通りへ行きます。あ、その前に身分証明書を。新しいのは受け取りましたね?」
護達は新しい身分証明書を相手に見せ、古い方を渡す。
「役所に行かなくて済んだね、カルさん」
「うん。ところで我々に会いたい方とは?一体どんな用件で」
カルロスが聞くと二人の有翼種は
「それは現地に着いてからお話しします」とニコニコする。
「はぁ」
一同は立派な図書館の中を通って表通りに出る。通りを歩いてすぐに、木の板に石と妖精の絵が描かれた『カナンの店』という石茶カフェの看板が見えて来る。有翼種はその店の前で立ち止まる。
「ここに、人工種に会いたいという方が居るんです」
ドアを開けるとパンが焼ける時のようないい匂いがする。入って左手にはレジと、パンが並ぶ小さな棚と、カウンター。右手の窓際にテーブル席があり、入り口近くの棚と、店の奥の棚には石茶用の道具やカップ、そして小さな袋に小分けにした様々な石茶の石が売り物として並んでいる。
壮年の男の店員が奥から出て来て「いらっしゃい……」と言いかけて一同を見て「おや!」と酷く驚く。
女性有翼種が「おはようございます。噂の2人を連れて来ちゃいました」とニッコリ笑う。
店員は驚いたまま「……まぁ……」と呟き「何てこった。わざわざ、大変だったんじゃ」
「いいんですよ。ちなみに、彼らにはまだ何も教えていません!」
店員は「え」と言い「しかしまぁ……よくいらっしゃって」とカルロスと護を交互に見ると「ともかく中へ。皆、好きな所へ座って」と護達を促す。
するとカルロスが驚きを隠せないといった様子で
「失礼ですが、あの、貴方は……、翼が、無い」
店員はフッと笑って「翼を隠すのが特技なんですよ。ねぇ?」と有翼種達を見る。
クスクスと笑う有翼種二人連れ。
カルロスは「そ、……そう、ですか」と腑に落ちない顔をする。
「さてさて座って下さいな」
店員は窓際の席を勧めるが、男性有翼種が「我々は仕事の時間なので、この辺で失礼します」
「え。そうなの?」
女性有翼種が「はい」と頷くと護達に笑顔で「では皆さん、ごゆっくり!」
店員は有翼種達に「わざわざ本当にありがとう」と礼を言う。
二人の有翼種は「またねー」と手を振ってドアを開け、店から出ていく。
護達はそれを見送り、それから窓際の席に着く。ターさんとカルロスが向き合って奥に座り、護はターさんの隣に座る。
「じゃあまず、皆さんのお名前を聞かせて下さいな」
「MF SU MA1023周防カルロスです」
「ALF IZ ALAd454十六夜護です」
「ターメリック・エン・セバスです」
店員は一同を見回しニッコリ微笑むと
「それでは今から、一番美味しい石茶を淹れてあげるから、ちょっと待っててくれ」
ターさんが思わず「えっ、あの、いいんですか?」と戸惑い顔で聞く。
「うん」
店員はカウンターの内側へ。少しして、店の奥から壮年の有翼種の女性が焼きたてスコーンを乗せたトレーを持って出て来ると、カウンター脇のパンが置いてある棚にトレーを置き、ふと護達の方を見て「あら?」と少し驚く。
男の店員は、女性に「この子達、人工種の子だよ!さっきレシュさん達がわざわざ連れてきてくれたんだ」
女性は驚いて「あらまぁ!よくイェソドへ……」と言うと「スコーン食べる?焼きたての」
護が「はい!」と元気に返事して慌てて「あっ、お代はちゃんと払いますから」
「いいよ今日はサービスだ」男の店員が言うと、女性も
「そうよ。ちょっと待ってね」とカウンター内の食器棚から小皿を三枚出してスコーンを二つずつ盛り付け、棚の下の冷蔵庫からクリームを出してスコーンの脇に盛ると、トレーに乗せて護達のテーブルに持ってきて置きながら「私はセフィリア。宜しく」と言いターさんに「貴方は彼らのお友達?」
「はい」
護がターさんを指差して「俺達を助けてくれたのが彼なんです。今、二人で彼の家にお世話になってます」と言うと早速スコーンを摘まんでパクリと一口。幸せそうな顔をする。
「お家はどこなの?」
そこへ男の店員がやってきて、三人それぞれの前に石茶が入ったマグカップを置く。カルロスは早速それを手に取り、石茶を口に含んで味わい始める。
ターさんが「イェソドの『壁』の外です」と答えると、男の店員とセフィリアが「え?」と同時に驚く。
「『壁』の外って……」怪訝そうに聞き返すセフィリア。
「珍しいでしょう。そんなの俺だけですから」
ふと、男の店員が何かに気づいて
「ん?そういえば……以前、ニュースで『壁』の外に家を建てた人がいると」と首を傾げる。
「それ俺です」
「君なのか!」
カルロスが「ターさん意外と有名人だな」と呟く。
護が「彼が『壁』の外に暮らしてたお蔭で、俺達、助けてもらえました」と言うと、男の店員は「そうか、なるほどそうだよねぇ……」と頷く。
そこへマグカップを手にカルロスが真剣な顔で店員に
「ところでこの石茶、凄く美味しいです!」
「だろ!君なら分かると思った」
護はカルロスを指差すと「この人、最近すっかり石茶にハマってしまって」
ターさんもマグカップを手に取り石茶を飲む。
「あ、これ本当に美味しい。こんな美味しい石茶、初めて飲んだ」
それを聞いて、護も石茶を少し飲む。それからちょっと言い難そうに
「う、うん。お茶としては美味しいけど、でも俺、スコーンの方が美味い」
すると店員とセフィリアが笑う。
セフィリアは「ありがとう」と微笑み、店員は「いいんだ、石茶の感じ方は人による」
「感じ方?」と護が聞くと
「エネルギーを感じるのが石茶の醍醐味だからね!」
そう言って店員はカルロスの隣の椅子に腰掛け、セフィリアはカウンターの中に戻る。
「いやぁしかし、本当によくここへ来たねぇ」
三人を見ながらしみじみと言う店員に、護は
「俺はたまたま事故で川に流されて来たんですけど、この人は自力で歩いてきましたからね……」とカルロスを指差す。店員は首を傾げて
「……二人共、川に流されたって聞いたけど?」
カルロスが「いえ」と否定し「私は自分からここに来ました。人間に管理されるのが嫌になったもんで」
途端に店員がアッハッハッと笑う。
「そうかそうか!しかし大変だったろう……。よく辿り着いたなぁ」とカルロスを見つめて「自分で探知して、ここへねぇ……」
「……なぜ私が探知人工種だとわかるんです?」
「ん?まぁ勘かな」
カルロスは店員を真っ直ぐ見て
「私には、わかるんです。教えて頂けませんか、貴方の人工種ナンバーを」
ターさんと護が驚く。
店員はニコニコしながら「いやぁバレちゃったかー」と言うと、「私はATL KA B01神谷可南と申します。カナンと呼んでくれ」
その瞬間、カルロスが驚いた顔になると「B01……」と呟く。
護はビックリ顔で「首輪はどうしたんですか、タグリングは!」と自分のタグリングを指差しながら詰め寄る。
「取れちゃった」
「ええっ?!どうやって?!」
「ある日、ポロッと取れた。まぁ全然メンテしてなかったから壊れたんだろうねぇ」
唖然とする護。
ターさんも驚きながら「な、なぜイェソドへ?」
「たまたま流されて来たのさ。君達と同じ」
そこへカルロスが「あっ、あの!」と言い「実は、私の製造師の名は、ATL SK-KA B02周防和也と」
「えっ!」カナンが目を見開く。
「ご存知ですか?」
カナンは目を見開いてカルロスを見たまま確かめるようにゆっくりと
「……製造師?……SK、KA、B02が、君の?」
「はい」
「……つまりあの子が、製造師になって、君を作ったと……?」
カルロスは戸惑い気味に「あの子……、まぁ、周防和也が、作りました。はい」
カナンは感慨深げに「おぉ」と呟き立ち上がると、カルロスの肩に右手を置く。
「君は、あの子の息子なのか!」
息子、という言葉に若干、反発心を抱きながら、カルロスは「……息子、です」ときまり悪げに答える。
「あの子の息子がここに……」目頭を熱くしたカナンは、やや震える声で「お父さんは、元気?」
反射的に渋い顔になったカルロスは、嫌悪感露わに「お父さんでは……」
カナンはアッハッハと笑い、涙を拭って「そうか人工種は『お父さん』とは言わないか!」
カルロスは渋々と「はぁ。……製造師は元気ですよ。まだ現役ですし」
「おお!」再び目を見開くカナン。
そこでターさんが「あのー、つまりB01とB02で兄弟だから、カナンさんはカルロスさんの叔父さん、という事でしょうか?」
カナンは笑って「うん、そういう事だ」と大きく頷く。
護は不思議そうに「……人工種の、叔父さん。いまいちピンと来ない。だって俺の製造師、人間だから」
その言葉にターさんが「あ、そうか」と納得して「人工種で製造師って周防先生だけだからか」
カルロスは首を傾げて「でも、叔父さんがいるなんて話は今まで全く……」と言い、カナンに「貴方がここに居る事を、周防先生は知っているんですか?」
「……さぁねぇ。私がここに来たのは遥かに昔の話だしねぇ」カナンはそう言ってから「知らないと思うよ」とニッコリする。
護が「向こうに戻りたいと思った事は?」と聞くと、カナンは
「無いねぇ。ここで色んな人に助けてもらったし、妻も居るしな」とカウンターの奥で仕事をしているセフィリアを指差す。
「え、奥さんだったの?!」思わず叫ぶ護。
セフィリアは「そうよ?」とニコニコ。
「何だと思ってたんだ」とカナンに言われて護は非常に焦りまくりながら
「いやその単なる店員さんかなって、だって有翼種と人工種が結婚なんて!」
「子供は出来なかったが、代わりに養子を育てた」
ターさんと護が目を丸くして「へぇぇー……!」と感嘆の声を上げる。
「好きな石茶で店も持てたし。ここでは全ては自分次第さ」
「凄い……」ターさんが呟く。護はカルロスに
「頑張ろうカルさん!アンタも石茶を極めれば店が持てる!」
「え。いや、そこまでは」
カナンは三人を見て
「君達は今、イェソドで何をしてるの?」
カルロスが答える。
「採掘師です。ここに来る前から採掘師でしたので」
「ああそうか。イェソド鉱石を採ってたのか」
「はい」続いて護が「今は死然雲海でターさんとケテル石を採ってます」
カナンは護とカルロスを交互に見つつ
「二人とも飛べないから有翼種と一緒に採掘するのは大変だろう?」
護が「いや、浮き石が使えるので問題ありません!」と張り切って答えるとカルロスが
「ただ移動が問題で。いつも木箱に乗ってターさんに運んでもらうのが」
「木箱!」カナンが驚いて苦笑する。ターさんも苦笑して
「さっきの方に笑われましたよ。木箱で吊り下げられて飛んで来るとは思わなかったって」
カナンが手を叩いて爆笑する。
カルロスが続けて「だからそのうち何とか小型船を買って、自由に移動しつつ採掘しようと計画中です」
笑いながらカナンが頷く。
「うんうん、もうアチコチ探知して好きな所に飛んでくといい!」
ターさんはカルロスを指差すと
「彼の探知は凄いですよ。雲海を越えてイェソドを探知する位ですから」
「え。じゃあそのうち雲海でダアトでも見つけちゃうかな?」
カナンの言葉にカルロスとターさんが「ダアト?」と怪訝な顔をする。
「あれ、君、ダアトって知らない?」カナンはターさんを指差す。
「……ダアト……?」ターさんは少し考えて「あー……もしかして、人工有翼種の遺跡ですか」
「うん、それ。今もう探す人、居なくなったろ」
護が「人工有翼種?」と聞くとカナンが
「遥か昔、人間と有翼種を掛け合わせて人工有翼種を作ったの」
「え」驚く護。カルロスも「な、なぜ?」とカナンの方に身を乗り出す。
カナンはフッと笑って「愛の力だよ」と言い
「とある御剣って人間と、どっかの有翼種が自分達の子供を作りたいって情熱燃やして出来上がったのが人工有翼種。しかし!愛の力で出来た人工有翼種を、人間は私利私欲の為に改造し、人間の操り人形にしてしまった!それで有翼種は怒って人間を追っ払って『壁』を作っちまったという」
護は「はぁ」とキョトンとする。
カルロスは「『壁』が出来たのは人工種と人間が源泉を攻めたからでは?」
カナンは笑って「色んな伝説があるんだよ」
ターさんは苦笑して「何にせよ人間って悪役なんだ……」
「まぁねぇ」カナンも苦笑して「とにかく人工有翼種が暮らした街がダアトでね。もしその遺跡を見つけたらイェソド中の大ニュースになるかもしれない」
するとカルロスが護を指差しながら
「……以前、護を探知してた時に、人工建造物が沢山ある場所を探知したけれども、あれは何だったのか……」と思案気な顔をする。それからカナンに「何かそのダアトの特徴というか、決め手になるものは」
「んー?そうだねぇ」カナンも考えて「伝説通りなら、多分、その御剣っていう人が作った人工種の研究所か何かの跡があるんじゃないかなぁ」
「なるほど」
護はニヤニヤしながらカルロスに「人型探知機の血が騒ぐ?」
「んん?まぁ、確認はしてみたい」
「じゃあ明日、行ってみようか」ターさんの提案に「行こう!面白そうだ!」とガッツポーズをする護。
正午近く。
店のドアが開き、護達が外に出て来る。カルロスは石茶石が沢山入った布袋を持っている。
見送りのセフィリアに護が「ランチすごく美味しかったです!」と言いカルロスも「色々とご馳走になりました。ありがとうございます」そしてターさんも「美味しかったです、また来ます!」とお礼を言う。
カナンは「ちょっと行って来る。彼らの木箱が見たい」と自分も外に出る。
セフィリアは三人に「また来てね」と手を振り、護達も「はい!」と返事しながら手を振ってカナンと共に道を歩き始める。
「木箱は図書館の裏庭に置いてあります」ターさんが説明するとカナンは笑って
「そんなとこに置いとくと、誰かに持っていかれるぞ」
「アレを持っていかれても……」
カルロスは布袋を大事に持って歩きつつ、嬉しそうに護に
「こんなに石茶石をもらってしまった」
「よかったなー」
カナンが「石茶で何かワカラン事があったら聞いておくれ」とカルロスに言うと、カルロスは満面の笑みで「はい!」と返事をする。その顔を見て護が苦笑しながらボソッと呟く。
「テンション高いし。この人はやっぱり売れる石より美味い石なんだな……」
そんな話をしながら、一同は図書館の中へ。
「しかし立派な図書館ですね」
カルロスの言葉に、カナンが
「ここのオススメはこんなデッカイ『鉱石大図鑑』だ。見ごたえがある」と腕を広げて大きさを示す。
「おぉ」
護が「それは絶対見たい。俺、鉱石の図鑑とか大好きなので」と言うとターさんも「同じく。いつか見たいな」と頷く。
裏庭に出て木箱の近くに来ると、カナンが「え、もしかして、アレ?」と大きな木の下のベンチの後ろに置かれた木箱を指差す。
ターさんとカルロスが「はい」と言い護が「うん」と頷く。
カナンはアッハッハと笑いながら「いや本当に木箱だね!」
「そうですよ!俺がずっと仕事で使ってる愛用の木箱です!まさかこれで人工種を運ぶとは思わなかった」
ターさんの言葉にカナンは更に腹を抱えて笑う。
護は「カナンさん笑いすぎ!」と言って「だって仕方ないじゃないですか、人工種は飛べないし!」
「うん、そうだな!しかしなかなか良い案だ!」
カルロスと護は木箱の中に入る。ターさんはそれを吊り上げて
「こんな感じです!」
カナンは大拍手しながら
「ステキだ!流石は採掘師だ!」
護はカナンを指差して「いやカナンさん笑ってるし!」
「いやいやカッコイイよ!元気が有り余っている!」
ターさんは「じゃあカナンさん、また!」と手を振る。
「うん、いつでもおいで!」
「はーいっ!」護の返事に続いてカルロスも「また来ます!」と手を振る。
空へ飛び立つターさん。カナンはそれに向かって両手を振りながら叫ぶ。
「皆、とってもカッコイイー!」
翌日の午後。
ターさんはいつものようにカルロスと護入りの木箱を吊り下げて森の上を飛んでいる。カルロスは真剣に何かを探知しているが、護はその隣で妖精達と戯れている。
周囲が次第に霧掛かってきて、前方が白い雲に覆われ始める。ターさんはそれを見て
「そろそろ死然雲海だ。ダアト見つかるといいね」
「見つけても、かなり遠いので今日は行けないが」
カルロスの返答に「いいよ」と笑って「とにかく探知したいんだろ」
「うむ。ちょっと確認したいんだ。とりあえずこのまま直進」
護がニヤリと笑いつつ「人型ナビ大活躍」と呟く。
カルロスは「うるさい」と一発ピシッと言ってから、探知しつつ難しい顔でうーん、と唸り「しかしホントに遺跡が多いな」
妖精と戯れつつ護が応援する。
「頑張れカルさん。ダアト見つけてニュースになろう」
カルロスは暫し黙って探知を掛けつつ考えて
「あの時感じた人工建造物の場所は……そうだ湖だ!湖を基点として探知をすれば、いい、が……」と悩み「あの湖は、雲海の向こうなんだよな。ターさん一旦止まって」
ターさんが停止すると、カルロスはエネルギー全開の本気モードで探知する。カルロスの身体の周囲が青く光り、護が喜んで「おお!光っとる!」
ターさんも楽し気に「雲海越え探知か!」
「お!湖あった!」突然カルロスが叫ぶ。更に探知を強めつつ「この湖を基点に、んー、僅かに感じる、あの時の感覚!」それから黒石剣を手に取って「恐らくダアトはあっちの方、かもしれない!」と黒石剣で方角を指し示す。
「何て曖昧な」ターさんが言うと、護も
「カルさんには珍しく推測で終わった」
カルロスは「何せ雲海のエネルギーが不安定で」と言い探知エネルギーを下げる。
「そうだねぇ。この先かなり濃くなってるしね」ターさんはそう言うと「また日を改めて来ようか。次回は早朝から」
「そうしよう」
「ほい」
カルロスと護の返答を聞いたターさんは「んじゃ雲海切りの練習しよう、カルさん」と提案する。
「うむ」
カルロスはエイッと黒石剣で前方に雲海切りをする。視界が拓けて眼下に森が現れ、所々にケテル石の柱が生えて、そこだけ木々が少ない場所があるのが見える。
「いい感じに雲海切れた」少し嬉しそうにカルロスが言う。
「うん、いい感じなので採掘の時間だ!」ターさんはケテル石の柱の近くに降下し着地する。
妖精と共に木箱から降りた護は早速近くの小振りなケテル鉱石柱に近づくと、コンコンと叩いてから活かし切りして根元をガンと叩き切り、それを倒して肩に担ぐと周囲を見回す。
「あれ。カルさんどこ行った。カルさーん!」
すると後方から「護!」と呼ぶ声。振り向くと木々の間からカルロスが走り出て来て「美味い石、採ったぞ!」と手に持った淡く透き通った緑色の石を見せて「石茶では爽快石って呼ばれる奴だ。このエネルギー、いい感じだろ?!」
「う、うん」一応頷くと、カルロスは「お前にはワカラン」と木箱の方へ走って行く。
護も柱を担いだまま木箱へ走りつつ
「俺の採ったケテル石も見てくれよ!いい感じだろ?!」
「うんまぁ」
「って!じゃあアンタ探知してくれよ!売れる石!」
カルロスは探知をかけて「アレだ!」と近くのケテル鉱石柱の所へ走って行き「コレ!」と柱を叩く。
「えー。それ違うよこっちだよ」
護はすぐ隣の柱を叩く。
「お前、私の探知が信頼できんってのか!」
「アンタの探知は美味い石じゃん!俺は売れる石が」
「コレ売れるって!ほら見ろ妖精がニコニコしてる!」
「あっほんとだ!」
「ってお前、妖精と私の探知とどっちが大事なんだ!」
二人の会話にターさん爆笑。
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