第19章02 それぞれの買い物

 再び商店街。

 本屋の入り口の前に、昴、夏樹、良太、総司、リキテクスの五人が立っている。

「ここだここだ。よし、入ろう」

 昴はガラス張りの入り口ドアを引いて開けて店内へ入り、他の四人も後に続く。

 中に入ると二階までが吹き抜けになっていて、一階から二階部分が見えるようになっている。入り口脇の壁には二階の奥にカフェがあるという案内とメニュー表が書かれたタペストリーがあり、店内には僅かにコーヒーの香りが漂っている。

 普段は通販や電子書籍ばかりで滅多に本屋に行かない五人は物珍し気に店内を見回し、夏樹が「本屋来たの久々だな、なんかテンション上がるね」と言いつつ上を見て「うわ天井高い……というか、二階ヤバイんでは?」と目を丸くする。

 総司も上を見て「凄いな、普通は二階部分に柵とかあるのに、何にも無い……」と驚く。

「でも皆、飛べるからいいのか……」

 店内の有翼種達は一階と二階を飛んで行き来している。リキテクスが苦笑して

「飛べない人は落ちたら危ないから浮き石が要るね、屋内なのに!」

 ふと昴が「アレ?」と気づいて店内を見回しつつ

「……俺達、どうやって二階へ行けば……」

 その言葉にハッとする四人。皆、店内をキョロキョロ見回す。

「あっ」

 良太が入り口脇の壁のカフェ案内のタペストリーを指差す。そこには『奥の階段の隣です』という文字が。

 ふぅ、と安堵の溜息をつく五人。昴が言う。

「良かった階段があった。助かった」

 総司は「んでも……」と言って店の中にある太い石の柱を見る。柱そのものも本棚になっているが、所々に付いている足場らしきもの以外には梯子も何も無い。

「この柱の本棚の、天井近くの本、俺達はどうやって見れば……」

 リキテクスが柱を指差して「柱に足場が……いや、あれ足場じゃなくて本を置くとこか」

「うん、そんな気がする」

「……店員に言ったら梯子を貸してくれるとか……」

 総司は笑って「いや梯子があってもかなりの高さが」

「えぇいもう店員さんに頼むしかないな、流石は飛べる人々の本屋だ!」

 二人が話している間に周囲の本棚を見ていた良太が「お!」と何かを発見し、斜め前の本棚に近付いて、雑誌を手に取る。

「これ船の雑誌だ。カタログっぽい」

「なんですと」

 リキテクスが食い付いて「おー」と良太が持つ雑誌を見る。総司も来て「中、どんな?」

 良太はパラパラとページをめくって「おっ、これエンジンの記事だな。面白そう」と手を止めると記事を食い入るように見る。

 昴は「それより鉱石図鑑どこだー」と良太達から離れる。あちこち見ながら店の奥に進むと、後から来た夏樹が「あ、あそこじゃないか」と角の本棚を指差す。昴はそこへ駆け寄り「あったあった……けど……」

 本棚いっぱいにズラリと並ぶ鉱石の本。

 夏樹が「こっ、こんなにあるのか!」と衝撃を受けて呆れる。

 昴は「イェソド侮れない。どれ買えばいいのー」と悩んで「時短! 店員さんにオススメ聞く一択! ……って店員さんどこだ」と店内をキョロキョロ見回して「探知の人が欲しいー!」



 調理師のジュリアとアキは、大きめの食料品店の中に居る。

 店に入ってすぐの入り口近くの棚には、種類ごとに分けられた根菜類が綺麗に積まれていて、その横の壁際には様々な果物や葉物野菜の冷蔵棚が並ぶ。店内には買い物バッグを持った女性客が数人。午前中なのでまだ客は少なく、ジュリアとアキは気兼ねなく店内を見る事が出来る。

 ジュリアが嬉しそうに言う。

「野菜が沢山! 有翼種って野菜好きなのかしら」

 アキは瓢箪のような野菜を手に取って「え、これもしかしてカボチャ?」と言ってから値札を見て「これ瓢箪カボチャだって。私、初めて見た。知ってる?」とジュリアに聞く。

「あぁ名前は聞いたことあるけど、私も初めて見たわ。どんな味なのかな」

 すると近くに居た買い物客の女性が「それ、甘くて美味しいわよ」と口を挟む。

 ジュリアが「これ、調理の仕方や保存は普通のカボチャと同じですか?」と聞くと、女性は微笑んで「ええ。切ったらワタを取って冷蔵庫がいいわね」

「ありがとう」

 アキは「よしこれ買って行こう。もう少しデカイのを……」と言い、ジュリアも「私も」と言って二人は瓢箪カボチャが積まれた山から丁寧にいくつか取り出して比較し、大きめのを取ると、残りをキチンと山に戻す。

「買い物かご取って来ればよかった」

 二人は入り口に戻って買い物かごを一つ取ると瓢箪カボチャを入れ、再び店内を歩き始める。

 ジュリアが葉物野菜を見ながら言う。

「葉がパリッとして新鮮ねぇ。買いたくなるけど、まだ船にストックがあるのよね……」

 アキも「うん、ウチもストックまだある。何せイェソド行ってどうなるかワカランって事で結構多めに積んじゃったから」

「そうよねぇ」

 ジュリアは頷いて「まさか、お金稼いで買い物できるなんて思いもしなかったし」

「そうそう! それにこんなに新鮮な野菜があるなんて」

 二人は野菜コーナーを過ぎて鮮魚売り場へ。

 アキは冷蔵ケース内の魚を見て「魚はそんなに多くないのね」と言ってから「んん? ……これ初めて見る魚。川魚っぽいけど、どうなんだろ?」とジュリアを見る。

 ジュリアも「そうねぇ……?」と首を傾げて「ただ全体的に、値段がお高めね……」

「まぁここ山だし、流石に海のお魚は無いのかな」

「でも海苔やワカメとか乾燥させた海の幸はあるから、飛んで海にでも行ってるのかしら」

 ふと、アキが「あっ、あれ見て! なんか石が売ってる」と鮮魚売り場の後ろの棚を指差す。

「スーパーで中和石売ってる!」

 棚の下の方に、様々な石が置いてあるコーナーがある。

 ジュリアは「ほんとだ。あら麦飯石もある」と言って卵サイズの丸い石を手に取ると「これ水に入れておくと、水が美味しくなるのよ」

「え、ホント?」

「うん。その水でご飯を炊くと、ふっくら美味しく炊きあがるし」

「それ買って行く!」



 一方、服が見たいと言ったメリッサ、シトロネラ、ネイビー、シナモンの四人は売り場面積の広い大型のファッション店に居た。

 黒船のベテラン二等機関士のシトロネラと、アンバーの22歳の三等機関士シナモンは、ジャケットのエリアで一緒にライトグリーンのジャケットを見ている。シトロネラはジャケットを手に取り体の前に当ててみながら「これ、ちょっと派手になるかなぁ……」

「んー」

 シナモンは少し考えて「派手ではないけど、華やかな感じ。いいと思うけどな」

「派手と華やかって、判断微妙よね」シトロネラはちょっと苦笑して

「うちら、いつも油まみれでエンジン君のお世話してるでしょ、だからたまに女性らしい服、着たくなるのよ」

「わかるぅ! ギャップを楽しみたいっていうか」

「そもそも私はリキと結婚してて……あ、リキってリキテクスね、機関長の。いつも一緒だから職場と家でメリハリ付けないと飽きるっていう」

「う、うん……?」

 微妙な返事をするシナモン。

 シトロネラは「人工種の結婚って大変よ。……って別にヤバい事になってる訳じゃないけど!」と笑い、ジャケットを見ながら「これ値段の割にしっかりしてて、欲しいけど、やめとこ……。華やかではあるけど派手にも見えるし」と言ってそれを元の場所に戻す。

 シナモンが呟く。

「地味にしとかないと、管理さんが……」

「ね」

 やや暗い顔で微笑するシトロネラ。

「特に私、髪の色が緑じゃん? まぁメリッサなんてピンクだけど。人間の中でどうしても目立つのね。ちょっとお洒落な服着るともうアウトよ。昔ホント色々言われて。『もっと人工種らしい服を着なさい』って。自由に着たいと言うと、『制服を自由にさせてやっているじゃないか』とか返される。確かに制服だけは多少自由にカスタマイズできるけど、そもそもあれって人工種としての、制服よね。だって同じ職でも人間と人工種で制服違うんだもん。あれさー、もし人間と人工種、同じ制服にしてって言ったら絶対ダメって言われる」

 シナモンは、うんうん、と大きく頷く。

 ハァと苛立ちの混じった溜息をついたシトロネラは「ちょっとそっちのスカート見たい」と言い、少し先でスカートを見ているネイビーの方へ近付きつつブツブツと呟く。

「イェソドで何が楽かって、有翼種の髪の色が人工種同様に色々って事よ。髪の色で目立たないのホント良い!」

 そこへネイビーが洒落たデザインのスカートを手に取って言う。

「やっぱ有翼種って飛ぶから、中までオシャレにすんのね」

「中って?」とシナモンが聞くと、ネイビーは持っていたスカートの裏地を見せる。

「こういうトコよ。下から見てもオシャレっていう」

「そっかー!」

 シトロネラも「丸見えだもんねぇ」と頷く。

 ネイビーは「あたし好きだなーこういうカッコイイ系」と言い

「裏地すごいキレイなんだけど、でも飛ばない人には何の意味も無いっていう」

 するとネイビーから少し離れた所でブラウスを見ていたメリッサが「チラ見させたら?」とニヤリ。

「ちょっと裾をまくってみるとか」

 シトロネラが「それ誤解されそうじゃん!」と突っ込む。メリッサは意味あり気に

「誤解から始まる付き合いってのもあったり? 大体、恋愛なんて誤解オンパレードだし」

 途端にシナモンが「えぇー!」と非難の声。シトロネラがシナモンに言う。

「愛、恋なんて誤解ばっかよ。夢なんか見ちゃダメ」

「そんなぁ」

「シナモンちゃん、まだ恋愛に夢を見るお年頃だから」

 ネイビーは「私もまだ夢見てるわよ。よし私、誤解から始まる付き合い狙おう! これ、おいくら……」とスカートの値段を見て「あ。高かった」とガックリ。

 メリッサが苦笑いして「残念!」



 三等操縦士同士のバイオレットとアメジストの二人は雑貨店のインテリアコーナーで家具を見ている。

 アンバーのバイオレットはALF生まれの23歳、黒船のアメジストはSSF生まれの20歳で、イェソドに来てから知り合った、ほぼ初対面に近い関係で、先程の宝石屋で色々見ながら話をしていて仲良くなった。

 アメジストはオレンジ色の小さな二人掛けソファを見つけると「これ可愛い。こういうソファ欲しいなー」と浅く腰掛けてみる。その対面には小さな木製のテーブルを挟んでベージュのソファが置いてあり、バイオレットもそこに遠慮がちに腰掛けて「なんかさ、座って良いと書いてあっても緊張するよね、売り物に座るの」

「うん、なんか人間は良いけど人工種はダメって言われそうで……」

「そうそう。ここに管理は居ないって分かってても無意識に考えちゃう」

「ねー……。でもこのソファいいなぁ。触り心地いいし」

 座面をちょっと触りながら、アメジストは座ったままソファを見回す。

 バイオレットは目の前のテーブルをちょっと触って

「いいよねー。こんなテーブルでゆっくりお茶したい」

「でも、ウチ狭いし。広いアパート引っ越したいなぁ。今、寮だから」

「あー、あの寮の部屋狭いよねー。私、去年アパートに引っ越したもん」

 アメジストは「いいなぁ」とバイオレットを見る。

「私、今年黒船に入ったばっかだから引っ越しする余裕ないし、引っ越しの手続きって凄い面倒みたいだし」

 バイオレットはここぞとばかりに「そう!」と力強く頷く。

「すっごい面倒だよー! 物件探すところからもうホントに面倒。やっぱさー、希望の物件を断られるとショックなのよね……。結局、許可されたとこに入るしかないっていう。あれ絶対、管理が締めてるんだよ。簡単に引っ越せないように」

 アメジストは溜息をついて「そっかぁ」と言い「でもいつか引っ越したい」

「何ならイェソドに住んじゃえ」

「え」

「今後、イェソドに住めるようになるかもよ?」

「あー……。住めるなら住みたいよねイェソド」そこでアメジストは首を傾げると

「でもそうしたら私、どうやって黒船に乗るんだろ」

 バイオレットはアハハと笑いつつ「……小型船持って黒船まで通うとか!」

「ええー!」

「でも、ほんとにさ。今後イェソドに住むっていう選択肢も出来るかもだよね。だって実際、住んじゃった人居るし。いつかはそうなるかもよ?」

「んー、そうすると職場も考えないとっていう……、でも自分が住みたい所に住めるって、いいよねー……」

 そう言ってアメジストは大きな長い溜息をつく。

 バイオレットは「なんか、ウチの船長とか穣さんとかが人生はワカランって言うんだけど、マジでそうよね」と言い「だってさ、少し前まで有翼種とかイェソドとか全然知らなかったし!」

「うんうん!」

「だから夢は持っとこう! っていう」

 ニッコリ笑うバイオレット。

 アメジストも微笑んで「そうね、そうよね……」と頷く。


 その雑貨屋の家電コーナーでは、剣宮と健が掃除機を見ている。

 健は、お試し用の掃除機の吸い込み口に手を当てて「お。吸引力ある割には静かだなぁ」と言ってからスイッチを切って掃除機を止めると、傍らに置かれたパンフレットを見ながら「音が静かって書いてるけどホントだった」と言い掃除機を元の場所に戻す。

 剣宮は「ゴミはどうやって……」と本体を見て「あ、ここ外すのか」とボタンを押してゴミパックを外す。

「掃除機の仕様ってどこも同じようなモンだな」

「ですねぇ」

 健はふと、手前の棚の上を見て「何だこのエネルギー調整器って」と展示品の細長い棒のようなものを手に取る。

「なんだなんだ」

 剣宮もそれを見て、隣に立て掛けられたパンフレットを手に取り、中を見る。

「……様々な花のエネルギーと合わせたイェソドエネルギーで……、えっ」

 慌てて健に「それスイッチ入れないで!」

「うん」

「ひぃ。なんてこったい。これって直にイェソドエネルギーが出て来るんか。なんか翼を癒す奴みたいだが……」

 焦り顔の剣宮はパンフレットを読みながら「しかし花のエネルギーって何だ? 調整されたエネルギー?」と首を傾げて苦笑いする。

「やっぱイェソドって人間にとってはオッカナイ世界だ……」



 護と透、マリアとターさん、そして駿河は天然石のアクセサリー等が売っている店の入り口に居た。

 護は「ここ、街で一番大きいアクセ屋。アクセだけでなく、こういう天然石のインテリアとかも売ってる」と言い、入り口脇に置かれた大きなフクロウの置物を指差す。

「これ水晶」

 透が「うん、随分デカイ水晶彫りだなぁと思って見てた。可愛いね」と言うと、護は「だろ?」と言ってから「しかしまさか駿河船長が一緒に来るとは思わなかった」と駿河を見る。

「ん? まぁ何となく行きたいと思いました」

「もしかしてアクセ好き?」

 駿河は苦笑しつつ「いやいや」と否定して

「別に好きとかでは……こういう店、初めてですし」

「ほぉ」

 すると透が「逆に、護がアクセ屋ってのも驚きだけどね」と言い、マリアも「宝石屋にも入っちゃうし!」と笑い、そしてターさんも「うん。アレは俺も驚いたよ」と同意。

 護はちょっと意外そうに「え。ターさんも驚いたの?」

「だって一番高い老舗の名店に入って行くしさ!」

「……むぅ」

 ポリポリと頭を掻く護。

 ターさんは「とりあえず中に入ろう。この店、イヤリングとかペンダントも作れるよ、何作る?」と言いつつ店内へ。皆も続いて中に入る。

 マリアが「私、イヤリングとブレスレット作る」と言うと、透が「よし、俺もそうしよう」それを聞いて護は「え。透、イヤリング作るの?」

「うん。護も作ろうよ!」

「い、イヤリングかぁ……」

 護は一番後ろを歩く駿河に「船長はどうします?」と尋ねる。

「ブレスレットだけ作ります」

 マリアが駿河を茶化すように「イヤリングは?」

 駿河は苦笑し手で否定の意を表して「それはちょっと……」

 話をしつつ一同は、棚に天然石ビーズの入った瓶がズラリと並ぶコーナーへ。

 棚の瓶を見て透は嬉しそうに「こんなに沢山種類がある店、初めてだ。凄いな」と言い、マリアも「テンション上がるね! どれにしようかなー」とビーズの入った瓶を眺めて「あ、イェソド鉱石があるー!」

 駿河が一瞬、エッと驚いた顔をする。

 護は「そうなんだよ」と頷いて「でもちょっとヤバイかも」

「ヤバイかなぁ……。イヤリングとかダメ、かな?」

 マリアはダメ元で伺いを立てるように駿河を見る。駿河は困った顔をして

「もし管理に見つかったら大変な事になるよ。それに、人間的にはちょっと怖い」

「ですよね、やめます」

「うん。ところでこれ、丸い玉を選べばいいの?」

 護が駿河に「はい。ブレスレットにしたい石を選びます。玉以外にも細長いのとか四角いのもあるし」と説明すると、駿河は棚に並んだ瓶に貼られたラベルを見ながら「沢山あるな……。まるで薬屋みたいだ」と言い、「オブシディアンどこかな……」と呟きつつ探し始める。

 ターさんが「どんなオブシディアンがいいの?」と言うと、駿河は「えっ、どんなというと?」と聞き返す。

 護は棚から黒い玉が入った小瓶を取って「例えばこれは見る角度によって金色に輝くオブシディアンで」と駿河に見せつつ棚にある別の小瓶を指差して「こっちは虹色に輝く。赤みがかったものや、斑点があるのもあるし」と説明する。

「へぇ……。オブシディアンの船長してるのに全く知りませんでした……」

 小瓶を見ながら目を丸くして呟く駿河。

「じゃあ、……ええと……」

 ちょっと考えてから、護に聞く。

「普通のオブシディアンというか、一般的な奴はどれ?」

「一般的には真っ黒な奴だけど、オブシディアンだけにするの?」

「そのつもりだったけど、何か混ぜた方がいいの?」

「いや、一種類でもいいけど」

 そこへ透が「ビーズの大きさはどの位にします?」と駿河に尋ねる。

「え。そうか同じ石でも色んな大きさの玉があるのか」

「はい。大きさによって値段違うので注意ですよ」

「なるほど。うーん……。これ、小さい玉だと安いのか」

「うん。モノによっては高いのもありますが」

「じゃあ小さい玉で色んなオブシディアンを混ぜる事にしよう」

「おお。では小玉のオブシディアンの瓶、台の上に出しますね」

 透は棚からビーズの入った瓶を取って「これが普通のオブシディアンで、こっちがレインボーオブシディアン……」更に護もいくつか瓶を取り出して、瓶を置く台の上に並べる。合計8つの瓶が並び、「こんなにあるの?」と驚く駿河。

「なんか白っぽいのもあるし、これでもオブシディアンなのか……」

 護は「まぁオブシディアンって溶岩が固まったモンなので、不純物によって色合いが変わって、それらに色んな名前が付いてるって感じです」と言い、透も「天然のガラスだから割れると鋭利です。取り扱いには気を付けて」と言う。

 駿河は「うん、まぁ元が溶岩の天然ガラスだってのは知ってたけど、色んな種類があるのは知らなかった」と言い、各瓶のビーズを見ながら「んー……これ全部オブシディアンなら、全種類っていう手も」と呟く。

「いいと思いますよ」と透。マリアや護も「うん」と頷く。

「じゃあ決まった。オブシディアン全種盛りにしよう」

「全種盛りって」

 ターさんは笑いつつ、棚の端に置いてある、選んだ瓶を入れる籠を取って8つの瓶をそれに入れると「じゃあこっちへ」と駿河を店の奥へ連れて行く。

 護は小声で透とマリアにコソッと言う。

「あの人、オブシディアンのブレスレット作る為に一緒に来たんだな」

「だねぇ」

 微笑む透。マリアは、ふと思いついて

「あっ、ねぇ剣菱船長に、アンバーのブレスレット作ってあげようか」

 透が「いいね!」と言い、護は「よし、んじゃ玉を選ぼう」と言って棚のビーズの瓶を見回す。