第8章05 再会

「近づいてきた、もう少し……わぁ、凄い!」

 アンバーのブリッジでは、マリアが喜びに顔を輝かせて大きな声を出す。

 ネイビーが不思議そうに「どしたの?」と聞くと

「行けば分かるの! 速度を落として!」

「減速しまーす」

「えっと、どうしようかな。もうちょっと行ったら……」

 剣菱が「何が何やらサッパリだ」と呟き苦笑いする。

「よし、この辺りで止まって! もうすぐ来るから!」

 マリアの指示にネイビーが応える。

「はーい。停船します」

 穣が「ん?」と何かに気づいて船窓前方を指差し「うっすら何か見える。霧が薄くなっ……、て、……ええっ?!」

 思わず前のめりになって目を凝らす。

 剣菱も「ええ?!」と身を乗り出し前方を見る。

 剣菱と穣とネイビーが、同時に叫ぶ。

「飛んでる!」

 穣はバッとブリッジ入り口を見て「透、すげぇよ護が飛んでる!」

 その声に、入り口付近に居たメンバーがドドッとブリッジ内になだれ込み、船窓の先に見える吊り下げ木箱で飛ぶ三人を見て驚きの声を上げる。

「ホントだ飛んでる……」

 呆然とする透。マゼンタも「箱が飛んでる!」と叫び、悠斗も「ど、どうやって……翼!?」と驚く。

 マリアも「凄い、ねぇホントに有翼種だよ、ホントに翼があるよ!」と叫び、ネイビーが「マジ、だったのね……」と呟く。

 剣宮は木箱を指差しつつ「それよりあの箱に入ってる青いの、イェソド鉱石では?」

 マリアは大きく頷いて「そうイェソド鉱石! さすがカルロスさん、そこまで探知したのね……」

「わぁい燃料、持ってきてくれたぁぁ」

 剣宮は万歳をする。穣も手を叩いて喜びつつ

「あの野郎、なんつー登場の仕方を!」


 ターさんはアンバーのブリッジ前方に近づきながら「こんにちはーはじめましてー!」と叫ぶ。

 護も満面の笑顔で「みんなー久しぶりぃー!」とブリッジの皆に手を振る。

 カルロスは仏頂面のまま黙ってアンバーを見ている。


 穣はブリッジの窓に近寄り、両手で上を指し示すジェスチャーをする。

「上、上だ護!」

 剣菱の「出迎えだ、皆!」という号令で穣も「甲板行くぞ皆!」とブリッジの入り口へ。

 剣宮は「イェソド鉱石が来るから俺は行けねぇ……」とションボリ。

 マリアは「船長、私も!」

「行きなさぁーい!」

 皆、ブリッジから通路に駆け出しつつマゼンタが叫ぶ。

「よっしゃーカッコいいヒーローを出迎えるかぁ!」

 オーキッドも「ヒーロー来たぁぁ!」

 悠斗は「カッコ良すぎだろー、もぉぉう!」

 皆、嬉し気に通路を走り、甲板への階段を上がる。


「ターさん、船の上へ」

 護の指示に「了解」と答えたターさんは、アンバーの上へ飛びつつ「これが君達の採掘船か。凄いね、思ってたよりずっと大きい」

 その時アンバーの甲板ハッチが開いて穣達が出て来ると、「護!」と手を振る。

「穣さん!」

 ターさんはその近くに木箱を下ろす。護とカルロスも木箱から飛び降り甲板に着地。

 同時に穣が「護ううう!!」と叫びながら護に駆け寄りガッと抱き締める。

 続いて透も駆け寄り、穣ごと護を横から抱き締め「よかった……」と安心したように微笑んで呟く。

 穣は泣きそうな掠れ声で「お前……、もう、二度と会えんと思った……」と呟くと、抱擁を解いてしっかりと護の両肩を掴んで微笑み、喜びを噛み締めるように大きな声で言う。

「生きてて、無事で良かった!」

 護も涙ぐみつつ「ゴメン、心配かけた」と言うと、涙を拭って透と穣を交互に見ながら「皆、元気そうで良かった!」と恥ずかし気に微笑んでから自分の背後に居たターさんの隣に並ぶ。

「俺、川に流された後、この人に助けてもらったんだ。……有翼種のターメリックさん」

 ターさんは穣と透に挨拶する。

「初めまして。ターメリック・エン・セバスです」

「今、この人の家にお世話になってる。彼が居なかったら俺は死んでたかも」

 穣はターさんの手を取り、固い握手をしながら深々と頭を下げる。

「護を助けてくれて、本当に、本当にありがとうございます。……俺は、十六夜穣と申します」

 ターさんは護を見ると「彼は何番目のお兄さん?」と聞く。

「次男だよ。こっちが末子」

 護に指差された透は「十六夜透と申します。どうぞ宜しく」とお辞儀する。

「ああ、スイーツが好きだっていう。……ようこそ、死然雲海へ」

 穣はハッとして「死然って、……やっぱり、ここが?」と問う。

「はい。ここは死然雲海というエリア」

 そこへ護が「あ、ところで燃料用の鉱石採って来たよ!」と木箱を指差す。

 穣は「うんうん! ありがたい!」と頷き「もしかしてアイツが探知してくれたのかな!」と木箱の横に立つカルロスを指差す。護が頷く。

「そうそう! アイツが探知した!」

「アンタも無事だったかー!」

 穣が言うと、カルロスは仏頂面で「……まぁ護とターさんのお蔭で無事だった」と呟く。

「そっか、じゃあ早速、中へ! ……あ、ちなみにこの木箱、船の中に入れていいの?」

 護が「うん、いいよ」と頷き「ただし、イェソド鉱石だけ別のコンテナに移して欲しい。鉱石の下に箱があって、そこに弁当とか入ってるんだ」

「オッケー」

 穣は周囲に立つメンバー達を見て「悠斗、健、ちとこれ燃料用コンテナに移す作業、頼むわ」

「了解っす!」

「はい!」

 悠斗と健は返事をして木箱の傍へ行く。その途端、妖精がポンと悠斗の頭に乗る。

「わぁ! こいつあの時の!」

 透が悠斗を指差して驚く。悠斗は頭に何が乗っているのか見えずキョトンとする。

「それは鉱石の妖精だ」

 カルロスの言葉にメンバー達が更に驚く。

「よ、妖精?!」

 マゼンタは「あー、だから石を持ってったのかな」と言い、マリアは「カワイイ……」と微笑む。

 カルロスは続けて「まぁ私と護を助けてくれた奴らだな」

 透はまた驚いて「え、これが?」

 悠斗は「頭の上が見えないー!」と騒ぐ。

 穣が「とりあえず船内に入ろう。そしたら頭の上の奴も見れる」と言い、悠斗と健は木箱を持ち上げてハッチから船内に入れる。続いてターさんと護、カルロス、そしてアンバーのメンバー達が船内に入り、悠斗と健は階段から通路に下りると採掘準備室で鉱石移し替えの作業をする為、中央階段へ木箱を運ぶ。

 穣は護に「お前らはとにかくブリッジへ。船長が待ってる」と言い、護は「うん」と返事して「ターさん、カルさん、こっちだ」と二人を誘って通路を走る。一瞬、驚く穣。

 (……カルさん? って言ったよな、あいつ。しかしカルロス何やら変なモン背負ってるが、何だあれ?)


 ブリッジの入り口には既に剣菱が立って待っていた。その後ろには剣宮。

「護!」

「船長!」

 護に駆け寄った剣菱は、ガシッとその両肩を掴む。

「お前、良く無事で……!」

「大変ご迷惑をお掛けしました!」

 護の肩を少し揺さぶりながら、剣菱は安堵の笑みを浮かべて言う。

「なんだ随分と元気だな、良かった。あれから一体どうなったんだ?」

「彼に助けて頂きまして」

 護は右手でターさんにちょっと手招きし、自分の横に出すと「有翼種のターメリック・エン・セバスさんです」

 剣菱は思わず「おお……」と感嘆の声を漏らしてから「有翼種。本当に飛ぶんだな、いや驚いた!」と言い「私は人間の剣菱夏生と申します。護を助けて頂き、ありがとうございます」と一礼する。

 つられてターさんも一礼し「私も人間にお会いしたのは初めてです。人間と人工種が乗る採掘船も初めて見ました。有翼種の採掘船とは全然違う」

「有翼種の採掘船?」

 護が説明する。

「彼も採掘師なんです。俺達は今、向こうで一緒に採掘師をしています」

「ええ?」剣菱は驚いて「お前、採掘が嫌だったんじゃ」

「今は楽しい! 向こうの採掘はこっちと全然違うんです。例えばカルロスさんが持ってる黒石剣とか」

 護が一同の少し後ろに立っているカルロスを指差すと、カルロスはホルダーから黒石剣を抜いて皆に見せる。

 穣が驚いて「その石!」と指差す。

 護は「見覚えあるだろ」と笑い、「これ採掘道具で、イェソド鉱石の変種なんだってさ」

 途端に剣菱と剣宮が慌てて「えっ、イェソド鉱石?!」と身を引く。

 その慌てぶりにターさんも慌てて

「黒石剣は人間が触っても大丈夫ですよ、エネルギーの質が全く違うので」

「よ、よかった」

 胸を撫で下ろして安堵した剣菱は「ちなみにアンタも無事でよかった」とカルロスを見る。

 カルロスは無表情のまま「ところでアンバーはなぜここへ?」

「アンタと護に会いに来た。アンタはどうして黒船から逃げたんだ?」

「……護の所へ行きたかった」

「なぜ?」

 渋い顔で暫し黙ったカルロスは、めんどくさそうに答える。

「んー、まぁ、黒船という狭い世界を飛び出して新しい世界に行きたかった、という所かな」

 穣は「俺達も同じだ」と言うと「護やアンタが行った世界に行ってみたくて飛び出した。可能性を広げたくて」すると護がハッとして「……可能性を広げる!」と呟きカルロスに「なぁカルさん! 船が来たよ船が! これで木箱でターさんに運んでもらわなくても移動が出来る、しかも大量の石を運べる、長距離飛べるから、あらゆる所で石を採って色んな所で売れる!」

 カルロスはちょっと驚いたように「つまりそれは、アンバーと一緒に、という事か?」と尋ねる。

「うん!」

「私はターさんのような個人採掘師として立ちたい。それでアンバーや有翼種の採掘船と契約するというならアリだが」

「なるほ。するとやっぱり小型船が要るねぇ」

「ちょ、ちょい待て」穣が怪訝そうに口を挟んで「あらゆる所で石を採って売るって……?」

 護は穣の方を向いて言う。

「例えばケテル石なんか、ジャスパー側では鉱砂しか採れなくて貴重だけどイェソドだと鉱石柱が生えててメジャーな石材なんだよ! 逆にマルクト石はジャスパー側だとメジャーすぎる石だけどイェソドでは滅多にない貴重な石だし。アッチとコッチを橋渡しするような仕事が出来たらいいなあと」

 アンバーの一同が驚いた目で護を見る。

 穣は顔を綻ばせて「……それだ。護、それだよ! それ、やろう!」と拳を握る。

「でも俺、やっぱりなぁ……」

「何か問題が?」

「実は俺さ、ターさんの家の近くに自分の家を建てたいんだ。だからアンバーと一緒にってのは無理だなぁ」

「……は?」

 穣は驚きで目を最大限に丸くして「お前が、家?」と呟く。

「うん。俺、イェソドで暮らすから。俺の家はアンバーがイェソドに来た時の休憩所にするんだ!」

 ニコニコ笑顔の護。

 (な、な、なんだこの護は……)

 穣のみならず、周囲のアンバーの面々が、唖然として護を見る。

「お、……お前、変わったな……」

「え、穣さんも変わったよ! どうしたのその制服! キチンとして」

「えっ。まぁ、その」

「似合ってる! やっぱりアンバーの採掘監督は穣さんだよね!」

 (な、ん、だ、と……?!)

 満面の笑みを浮かべる護に、アンバー一同、驚きが止まらない。

 透が目をパチクリさせつつ信じられないという面持ちで呟く。

「こんな明るい護、初めて見た……」

 穣も思いっきりウンと頷き真剣な眼差しで護に問う。

「お前、ホントに変わったな。向こうで何があったん!?」

「何って」

 カルロスが「ドンブラコしたな」と呟く。

 剣菱は護に近寄り肩を掴むと、懇願するように言う。

「ま、護。お前一体どんな所で暮らしてるんだ、お前が暮らす世界を是非見たい! これから早速そこへ!」

 カルロスが「その前に一つ問題がある」と口を挟む。

「何か」

「黒船が管理を連れてウロウロしてる。私がずっと探知妨害してるがしつこい。このままだと奴らもイェソドに来る」

 ハッと我に返る剣菱やアンバーの一同。護が怒りを露わに叫ぶ。

「それだけは許さない。黒船はともかく、管理は絶対イェソドには入れない!」

「ならば、護。一旦ジャスパーに戻らないか?」

「え?」

 カルロスは真剣な目で護に言う。

「向こうには貯金がある。それで船を買って、そこからスタートした方がいい。今なら向こうに戻れる」

「……でも」

「そもそもお前の願いは死然雲海を跨いでアッチとコッチを繋ぐ採掘だろう? 管理を気にしてたら何も出来ないぞ」

「確かにな……」

「どのみちアンバーは向こうへ戻って管理と対峙する事になる。その覚悟で来た筈。であれば私も行くしかない。自分がやりたい事の為に最善を尽くしてその結果どのようになろうとも、今はイェソドというもう一つの生きる世界があるし」

 一旦言葉を切ったカルロスは、やや悲愴な顔で護を見つめて言う。

「とにかく私は管理に捕まって向こうへ行く。そしていつか必ず船を買ってターさんの所へ戻る」

 護は呆れたようにカルロスを見ながら「ってカッコつけて何言ってんだか全くもう」

「うるさい。お前なんか何の覚悟も無くただドンブラコと川を流れてイェソドに来ただけだろうが」

「しょうがないじゃん!」

「お前は向こうに戻っても大して責められんからいいよなぁ!」

「ていうかアンタよく黒船から逃げたよね! 俺なら絶対出来ないんですけど!」

 ターさんがアハハと笑い、穣は思わず尋ねる。

「あの、こいつらいつも、こんなですか?」

「うん!」

「……はぁ」

 驚きの声を発した穣は「護、マジで変わったな……」

 透もアハハと苦笑して「なんかもう護じゃないみたいだ……」

「うん。随分変わったよ」

 ターさんの言葉に透が「やっぱ、そう思います?」と聞くと

「だって護君と出会った当初は、人工種って、どんだけ過酷な状況で生きてるのかと思いました」

「ですよねぇ……」

 心の底から頷く透。周囲のメンバー達もウンウンと深く頷く。

 穣もボソッと「うん、それが護だった気がする……」

 話の途中から腕組みをして何か思案していた剣菱は、ふと「そうかもう一つの生きる世界。そう、それだ」と呟いて腕組みを解くと「選択の幅が狭い、『これしかない』と思ってしまえば怖くて挑戦できなくなるが、沢山の可能性、沢山の選択肢があるとなれば……」と言ってカルロスを指差す。

「アンタと護は今、それを拓いてくれたんだ! 例え全てを失ったとしてもまた新たな人生を生きられるという事を!」

「全て失った訳じゃ無い! 貯金をこれから取りに戻る!」

 護が続けて「よしわかった俺も一緒に行ってやる。だって家を建てたい」

「その前に船だ! 私とお前で一緒に買うんだ!」

「えー。アンタ黒船勤続13年だから1隻くらい買えるんじゃ」

「ってお前、人の船にタダで乗るつもりだったのかドンブラコめ!」

「わかりましたキッチリ折半しませう!」

 剣菱は二人をなだめる仕草をしながら「……もしもし。あのな、船買うのって大変だぞ。俺の知り合いに中古船の販売屋いるから紹介……ってアンタら操船免許どうすんだ。免許ないと船買えないぞ」

 カルロスは悔し気に「クッ、やはりそうなのか」

 護も「免許とらなきゃー!」

 透が首を傾げて「でもさ人工種は船長になれないし、船なんか買えるのかな」

 途端に護が「やってみなきゃわっからーん!」と叫び、穣が「うわ、すげぇ。護の言葉とは思えん……」と驚いて護の肩を抱き寄せると「可愛くなったなぁ、お前!」

「はぁ?」

 カルロスは溜息ついて「そろそろ黒船の探知妨害するのがめんどくさくなってきた! どうする護!」

「どうって、貯金取りに戻る?」

 穣は「話しながら、よく妨害できるわな」とカルロスに言ってから剣菱に言う。

「じゃあ船長、Uターンしてジャスパーに戻りますか」

 剣菱は「うん」と頷き、護は「えっ」と驚く。

 穣が言う。

「だってお前ら船を買いに行くんだろ? 自分の船を持つまでアンバーに乗ってろよ」

 剣菱も言う。

「二人で船を持たせろと騒ぐより、皆で騒いだ方がいい。それでダメだったらまた皆で逃亡すりゃいい」

 ターさんが尋ねる。

「俺も一緒に行った方がいいのかな?」

 護は「いや、ターさんはイェソドで待っててほしい。俺、ターさんにはまだ、向こうの世界を見せたくないんだ」と言い、穣は「んー」と悩みながら「でも一緒に行った方がいいんでは? 管理の奴らに有翼種の実在の証明が出来るし」

 すると剣菱が「いや、どうだかな」と言って「いきなり連れて行くと混乱するかもだぞ。実在の証明ならこの二人で十分だと思う」と護を指差して「こんな長期間、行方不明だったのに元気いっぱいな奴らを見たら、有翼種の存在を否定も出来ないだろ」

「確かに」穣は納得して「まぁ管理とのゴタゴタに彼を巻き込むのも申し訳ない」

 ターさんは「分かった」と頷き「じゃあ妖精と一緒にイェソドで待ってる」と微笑む。

 護が「船買ったらすぐ戻るから!」と言うと穣も「ってかウチの船、また来ますんで、その時こそイェソドへ」

「ほい。それじゃ木箱持って家に戻るね。君達の船、楽しみにしてるよ!」

 それから剣菱に向かって「では船長、失礼します」と一礼する。

 剣菱も「貴方のお蔭で本当に助かりました」と一礼し「またお会いしましょう!」

 護が「んじゃ木箱の所へ行こう。採掘準備室に置いてある」とターさんを案内する。

 一同は通路を歩いて中央階段の方へ。


 採掘準備室の一画に置かれた木箱の所へ行くと、ターさんは中から白石斧を取り出して護に渡し、小箱から弁当の巾着袋を取り出して二人に聞く。

「弁当いる?」

 カルロスが「要る。ハラが減った……」と返事する。

「だよね。じゃあこれ」と言いおにぎりをカルロスと護に渡す。

「水筒はいいよ」と護が言うと、ターさんは巾着袋を木箱の中に入れて言う。

「ほい。じゃあ俺は途中で妖精と一緒に雲海ランチして帰ろうっと」

 そこへ穣が「採掘口開けまーす」と言い、操作盤のレバーを下げる。

 開き始める採掘口を見て「おお! 床が開くんだスゴイ!」と歓声を上げるターさん。

 護は「今度、人工種の採掘をターさんに見せてあげるよ」と言い、ターさんは「楽しみにしてる」と言って妖精が入った木箱を吊り下げて飛び上がり、開いた採掘口の真上に行く。

 カルロスが真剣な顔でターさんに告げる。

「必ず戻って来る。それまで暫しのお別れです」

「うん。待ってる」

 微笑みを返したターさんは「頑張って! じゃあまたねー!」と言い手を振りながら採掘口から降下し、船外に出る。アンバーの一同も手を振って見送る。護が叫ぶ。

「またね、ターさん!」

 穣はターさんが採掘口の周辺から去ったのを確認して言う。

「よっしゃ。じゃあ黒船や管理の皆様に会いに戻るか。採掘口閉じるぞー」

 カルロスが穣に聞く。

「ではそろそろ探知妨害やめてもいいかな」

「続けてもいいよ!」

「流石にちと疲れた。これ食ってもいいか」おにぎりを指差す。

「ん、そうだ! アキさんが、おにぎりとか作っとくって言ってたし、ここで軽く昼食タイムにしよう。皆が食べ終わるまで探知妨害続行よろしう!」

「なんだと……。仕方がない食べながら妨害してやる、とっとと食べろ」

「さっすがあ!」


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