2024.04.28 13:43第6章02 カルロスの試練 所変わって死然雲海。 有翼種の世界では、死然雲海は『眠っている自然』と言われる。誰が言い出した言葉なのか分からないが、雲海が自然を覆うと何も無い白い世界になってしまうという現象に『生と死』を当て嵌めて『死然』となったらしい。 その死然雲海に覆われた森の上に、大きな島が浮かんでい...
2024.04.28 13:43第6章01 疑問と考察 数日後。 アンバーは緑生い茂る山麓の崖の手前に着陸している。すぐ近くの鉱石採掘場では採掘メンバー達が仕事を中断し、一ヶ所に集まって何やら相談中。 穣が地面に突き刺したスコップに寄り掛かり、意味深な顔で言う。「結局、管理はカルロスの捜索を打ち切っちまったなー。臨時に採掘監督してた...
2024.04.23 16:00第5章04 黒石剣 次の日の朝。 ターさんは護とカルロスと妖精が入った木箱を吊り下げて、晴れた空を飛んでいる。 護はニヤニヤ笑いながら、無精髭とボサボサ頭で眠そうなカルロスに言う。「起きぬけに強制連行されてるし。目、覚めてる?」「んー」カルロスは唸って「気づいたらソファで寝ていて朝だった。いつ寝た...
2024.04.23 15:59第5章03 安らぎの石茶 翌朝。「……カルロスさん。カルロスさん」 誰かにポンポンと肩を叩かれ、ふと目を覚ますと目の前に護が立っている。「ここ掃除するから部屋のベッドで寝てほしいんだけど」「ん」 ふと見れば自分の身体に毛布が2枚掛けてある。「あっ、あれ? あのまま寝てしまったのか」 カルロスは上体を起こ...
2024.04.23 15:59第5章02 ターさんの家 午後4時。 一行は家に到着し、ターさんは木箱を玄関前に下ろす。護は木箱の中で眠ってしまったカルロスを起こして木箱から出すと、自分もカルロスのバッグを持って木箱から出る。「カルロスさん、まずシャワー浴びといで」 ターさんの言葉に護が「お風呂場こっち」と家の中へカルロスを案内しよう...
2024.04.23 15:59第5章01 カルロスと護 探知を続けながら必死に森の中を走るカルロス。 (もうすぐ、もうすぐ……あっ!) 視界の先の、木立の合間にチラチラと煌めく光が見えてくる。「見えた、湖!」 草を掻き分け、走るペースを上げて光と水音のする方向へ。木立を抜けると眼前に大きな湖が広がる。荒い息をしながら「やっとだ……」...
2024.04.22 16:15第4章04 大発見 黒船はアンバーから離れて真っ白な雲の中を飛び始める。 通常、航空管理の管理波があれば、常にレーダーにジャスパー採掘船本部の方角が示されるが、今既にそれは無く、つまり黒船は管理波から外れ、レーダーが感知できるのはアンバーだけになっている。アンバーがレーダーから消えれば、あとは上総...
2024.04.22 16:11第4章03 大捜索 カルロスは必死に森の中の獣道を走る。 相手の探知を妨害しながら相手を探知するのは慣れているが、走り続けながら複数の存在に対してそれを行い、更に自分の進路も探知するというのは前代未聞の荒業で、心の中で愚痴を言う。 (首が、苦しい……。管理波が、更に強烈に……。しかもアンバーの探知...
2024.04.22 16:10第4章02 カルロス逃亡 翌朝。 快晴の澄み渡った空を飛ぶ黒船の採掘準備室では、一同が今日の作業の準備をしている。 船内スピーカーからピピーという音が鳴り『現場到着まであと10分です』という駿河の声。それを聞いたジェッソは道具の入ったコンテナを壁際に置いて、一同に「そろそろ整列するかー」と呼び掛ける。「...
2024.04.22 16:10第4章01 穣の鬱屈、カルロスの嘘「なんか力が出ないなぁ」 疲れた顔の悠斗がスコップ片手にボソリと呟く。 とある崖下の林の中で採掘作業をしているアンバーのメンバー達。すぐ上にはアンバーの船体が上空待機している。 穣もはぁ、と溜息をつきながら崩したイェソド鉱石をスコップですくってコンテナの中に入れる。周りを見ると皆...
2024.04.21 16:01第3章03 新しい世界 数日後の朝。 護はターさんの吊り下げ木箱に乗って快晴の空を飛んでいる。果てしなく続く紺碧の空を見ていると、この空のどこかにアンバーやブルーがいるんだなぁという思いが浮かんでちょっと切ない気持ちになる。 (皆、元気かな。会いたいな。会って、謝りたい。特に、穣さんと透に。以前の俺は...
2024.04.21 16:00第3章02 苦悩の渦 既に日が落ちた夜7時、ジャスパーの採掘船本部。 駐機場に停まっているアンバーの船内食堂に、剣菱と穣がいる。 二人はテーブルを挟んで向き合って座り、ポテトのスナック菓子を摘まみつつ、缶ジュースを飲んでダラダラしている。他には誰も居ない。穣はテーブルに片肘を付き、もう片方の手でジュ...